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【ギネ】

オウミとムッタローザが行方不明になっていたのを修正致しましたm(__)m

 死神男爵の領地である砂漠近くの森にギネは三百人の兵と身を隠していた。昨夜の情報だが、ハイドランジアからロサ方面へとノヴァーリスが逃げたと使い鴉が(しら)せてきたのだ。

 ロサに戻ってきたならば、必ずノヴァーリスはジロードゥランを頼る。

 それはギネの直感だった。


「くくっ、傷が(うず)くぜぇ!」


 肩を揺らしてギネは、ジロードゥランに()って切り落とされた筈の右腕を大切そうに抱く。

 それは既に人の物ではなかった。

 鎧と同じような材質で、彼の筋肉よりも二倍は太い鋼の義手が付いていたのだ。

 ガチガチと指を動かせばまるで本物と同じ感覚で動いた。


 ダリアの医療技術は他国よりも発展していた。

 こんな機械の手をすぐに作り上げるんだからな!とギネは鼻を鳴らす。

 その時、すんっとギネの鼻孔を何かが刺激した。


 ――匂う。匂うぜっ!今晩、此処には血の雨が降るだろう……っ!

 嬉しそうに肩を(そび)やかすと、ギネは森の中で大笑いをした。

 周囲の兵が(いさ)めるが、全くもって聞く耳など持っていない。暫くすると、兵達はそんなギネに諦め始めたのだった。








 ――来たか。


 日が沈んだ頃、森の細道を行く一行を見つけてギネは愉しげに目を細める。

 間違いなくノヴァーリスがいた。

 そしてシウンもいる。


 ――あぁ、執事殿。生きててくれて嬉しいぜ。


 他の者など眼中に入らず、ギネは嬉しそうに口角を上げてから、兵たちに指示を出し始めた。

 だが一番後ろに純白の鎧を身に付けた騎士を見つけて、ギネは大きく目を見開く。


 ――あぁ、そうかそうか!てめぇも生きてやがったか!レディ・レーシー!!


 それは喜びに似た怒りのような激情であった。

 沸々とした(たけ)る想いが身体の内側で大きく膨れ上がる。黒い波動の殺意だ。

 あの夜、あの一撃で終わらせるつもりだったのに、殺し損ねた。それはエマという侍女のせいだ。


 ――いや、お陰だな!

 もう一度この手で殺せる機会を与えてくれたのだ。

 何度だって殺してやるとギネは血が(たぎ)った。鋭い眼光はギラギラと獲物を狙う。



「さぁ!!ここがてめぇらの墓場だっ!!大人しく全員死ねっ!!」


 森の出口。

 待ち構えていたギネと兵士たちにノヴァーリスたちの顔色が変わった。


「クソッ!!この馬鹿でかい声……っ!ギネかっ!!」

「レオニダス様っ、テラコッタ!ノヴァーリス様をよろしくお願いいたします!!」


 レーシーが苦々しい顔で反応し、飛んできた矢を大剣を振るって何本も落とした。

 シウンは馬に乗っていたレオニダスに声をかけるが、丁度二頭の馬達は額の真ん中に矢を受け目を剥き出しにして倒れる。

 転がるようにして体勢を整えたレオニダスは、その馬の身体に隠れるよう、ノヴァーリスとテラコッタの手を引いた。


「おい、レオニダス!エクレールも頼むっ!」

「前から思ってたけど、ジェイドくん、君、俺のこと呼び捨てだよねっ?!いやエクレールは預かるが、君は――」

「アルベリックから戦場での戦い方を少しは聞いているっ」


 手に何本ものメスを持つと、近付いてきた敵兵や馬たちに飛ばす。そのメスが突き刺さると、その者達は眼球をぐるりと上に回し泡を吹いて崩れ落ちた。


「対未開の地(アガパンサス)の蛮族用に俺が調合した猛毒だ。受ければ即死。だから俺の前にお前ら出てくるなよ!」

「ちょっと乱戦の時にそれ危ないんだけど……くっ」


 ジェイドの台詞を聞いて、鉤爪で何人かの喉を切り裂いたアキトは咳き込み地面に膝をつく。


「アキトさんっ!」


 苦し気に動きを止めたアキトの背後にゆらりと一人の兵が立ち、剣を振り下ろしていた。

 そこへジョエルが突撃する。レーシーに持たされたショートソードは震えていたが、彼女の指南を受けていた銀の刃は、鎧の継ぎ目の隙間に見事入った。肉を突き刺すその感触に、思わずジョエルは気持ち悪くなって真っ青な顔で手を離す。


「馬鹿っ!戦場で人を殺すことに戸惑ってどうする!!」


 レーシーの大剣がアキトとジョエルの周囲の敵を一気に薙ぎ払った。ジョエルも転がった死体からショートソードを抜き取るが、それでも付着した血に眩暈がする。


「あーもう!しつこいっ」

「オウミ様、前に出過ぎですっ!」


 金の刺繍が美しいマントを(ひるがえ)しながら、オウミは正確に敵の喉を突き刺す。

 オウミに放たれた矢を戦斧で真っ二つにすると、ムッタローザはそのまま地面に倒れた敵兵の足首を掴み、そのまま大きく円を描くように振り回して投げた。物凄い勢いのそれは衝撃が激しく、数人が悲鳴をあげ崩れ落ちる。


 シウンはそんな仲間たちを見ながら、この状況に危機感を持った。負傷しているアキトや戦い慣れしていないジョエルにジェイド。そして戦闘向きではないテラコッタとエクレール。

 レオニダスが短銃を使っても、いずれ弾は尽きる。

 シウンとレーシー、オウミやムッタローザの体力にも限界はあった。


「オウミ様、ムッタローザさん、レーシー殿!馬上の兵を狙いましょう!そして馬で一先ず脱出をっ!」


 襲い掛かってきた騎兵を斬り落としながら叫ぶが、馬上の兵だけを落とすには馬に乗っていないシウンたちには不利だ。さらに動きづらいように弓矢が飛んでくるのも厄介だった。


「逃がさねぇ、逃がさねぇよ!!」

「くっ!!」


 突如飛び出してきたギネの斧のような特殊な剣がシウンの頭上を掠める。

 空を仰ぐように()け反って避けたシウンだったが、直ぐ様脚を振り子のようにしてギネの腹に目掛けて剣を振るった。狙うは鎧の繋ぎ目。刃が入るにはそこしかない。


「ぐははっ!!」


 だがギィンっと高音が響き、刀身は真っ二つに割れた。

 ギネの笑い声が地面を揺らすように(とどろ)く。


「普通の腕ならこんなこと、まぁできねぇわなぁ!!だが俺はもう普通じゃねぇんだよ!!」

「ちっ……義手、か」


 舌打ちしたシウンは何時ものように平静な執事の顔ではなかった。

 その表情にギネは満足そうに白い歯を見せる。


「執事殿を調理したら、俺がレディ・レーシーも始末してやる!!てめぇらそれまで他のやつらを殺しとけ。あぁ、ノヴァーリス姫は(なぶ)り殺しても……たとえ犯しまくっても、俺は全然構わねぇぞ」

「……お前、今の発言を後悔することになるぞ」


 低く乱暴な口調とギラリと炎を燃やした瞳にギネは心の底から気分が高揚していた。

 望むところだと、ギネの返答のようにゴロゴロと低く唸った空は目映い光と共に(いかづち)を落とした。

 いつの間にか夜空を覆い隠すほどの厚い雲が埋め尽くしている。

 ポツポツと降り始めた雨は、瞬く間にザーッと音を立てて血で汚れていた地面を洗い流していくのだった。

オウミとムッタローザ行方不明事件修正m(__)m

誰もまだ読んでないよね……と思っていたら既にツイッターで感想くださった方がいて、Σ(゜∀゜)ひゃーってなりました。

本当に申し訳ございませんーっ

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