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#096:進軍の、ウルトラマリン


 南方に拡がる台地を抜けて一路、一路砂漠へ。


 だいぶ急すぎる出立ではあったものの、取り敢えずは行け、みたいな上層部の決定の中、動ける人員を全て回したかのような、突貫的な、しかし総出撃みたいな面子を揃えた「先発隊」は細かい作戦も定まらないまま、ひとまずの進軍を続けている。


 かく言う僕も、おそらくは普段は員数外であるわけで、こういう時にしか駆り出されることは無いと思われるものの、何かの雑用は出来るだろうくらいの考えでこの「先発」に同行させられているのだろう。


 巨大な鋼鉄ロボ、「ジェネシス」がうずくまるような姿勢で固定された運搬用のトレーラーの荷台の、「左手」が固定用に掴んだリング状の冶具のさらに前方に仮設的に設置された「シート」に、僕は横座りにて収まっている。風は強く、砂塵も遠慮なく全身に浴びせかけれてくる特等席で、露骨なほどの「員数外」を文字通りの肌で感じながら、僕は真顔でオフロードの絶え間なく来る突き上げを尻で受け止めるしかない。


 砂漠の始まりは意外に唐突で、なだらかな下り斜面を降りきったと思った瞬間、砂の海原、といった感じで視界が開けた。


 確かに砂漠だった。地球上ではあまり訪れる機会は無かったものの、知識としてはもちろんあるし、VRでの体験も何度かある。ただ、今眼前に広がるそれは、うーん、と僕の意識に違和感を投げかけるような、何かを突きつけてきている。


 やはり、色だ。


 延々と砂ばかりが広がる開けた空間。その佇まいはおそらく僕が慣れ親しんだ(とまではいかないけど)、「砂漠」のそれであることは確か。ただその砂の色は、透明感のある青白い色彩を、眩しい陽光を受けて放っているのであった。


 細かなガラス粉を敷き詰めたような……そんな仮想現実の世界の方がお目にかかる率高いんじゃないの的な光景が、確かな質感を持って迫ってきている。


 うん、この惑星は青いな。全体的に「青い」色が覆っている感じだ。僕はここに訪れたと思われた時に感じた木々の葉や草の青さを思い出し、そう小さく声に出してみる。もちろんその音声は吹き付ける風やトレーラーの駆動音にかき消されていくわけだけど。


<こんな所まで来たのって、私は初めて~。ジンが来た『チキュウ』にも、こんな砂だらけの場所ってあるのかナ?>


 と、僕の被ったヘルメット内に引かれたインカムに、心地よく聞こえる少女の声が響いて来る。僕と同い年で、それなのにこんな見上げる大きさの「ロボ」を操縦し、怪獣然とした「マ」のもの達と闘う戦士。


 いざという時の戦闘モードというか、そんな気迫溢れた時とか、「ロボ」についての提案や考慮をしている時の聡明さみたいなのを醸し出してる時とは違って、いつものアルゼな感じがその声から感じ取れる。


 どこにでもいる女の子。


 そんなほんわかした雰囲気を触れ合う人たちには与えてくるけれど、このいたいけな少女の底は見えない。


 無限の可能性を秘めた……みたいな、そんな陳腐な形容がさっくり嵌まってしまうような、奥深さをその小さな体に潜めている。


 と言うか、日本語うまくなったね。ニュアンスとかイントネーションでさえ、もうほぼほぼ違和感感じないよ。どんだけの語学センス。どんだけの集中力・熱意なの。


 僕は口許に巻き付けていた砂除けのマフラーを少しずらし、自分の中の緊張やら高揚感をほぐしてもらおうと、物見遊山的なアルゼとのまったりとした会話に興じることとする。



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