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#084:端緒の、浅葱

 結局、僕らを威嚇してきた二人……長髪と丸い男(以下、丸男と呼称)は、「オミロパシィタ」と名乗る謎の金属生命体に伸され、逆に連行されるかたちで、目指す目的地、アソォカゥ地区のコティロー(とのこと)に向かわされるのであった……


 僕らはそれに随行する。


「……てんめえ、こんなふざけた真似して、後でどうなるか分かってんだろうなあ」


「おおう~、こいつぁ戦争だ。我らが『最王斎サイオウサイ』様が、黙っちゃ、いねえーからよぉぉぉう」


 口々に悪態をつきながら、二列になって意外と軽い身のこなしで先を行く細いのと丸いの。クルマでは入れない山の中腹あたりにコティローはあるそうで、僕ら一行はワゴン車をふもとに停めてからは、その二人の後をこれまた律儀に二列で着いていっている。


<黙レっちゃば。これ以上、反抗的ナ態度さとらばっと、ぬンしらの首ば締めあゲて、スポン飛ばすちょヨ>


 不気味な金属音声は、長髪と丸男、それぞれの首元から聞こえてきている。金属質の、大型犬が付けられていそうな太い首輪のようなものを二人とも身に着けているけど、それはオミロが「変折ヘンセツ」したものとのことで、へー、「二分割」することも出来るんだー、と僕はその荒唐無稽さにそんな感想を頭に思い浮かべる他は出来ない。


 とにかくどうやらオミロの脅しは、どこの郷の言葉かは判別しがたいものの、その内容は本当っぽく、


<コンな感じデ、ネ?>


 何故か可愛らしくそんな音声が聞こえてくるや、長髪・丸男の顔面が見てわかるほど青白くなっていく。きっと金属の輪が引き締まって首を圧迫しているのだろう。僕はその様子を見るだけで自分も息苦しくなってしまう。


 エヒィィィィ、と恐怖の入り混じった呻き声を上げると、


「ごごご案内いたしますぅ」


「だからゆゆ緩めてくんろぉぉぉぉ」


 やけに姿勢よくなった二人は、手足が左右揃ったぎこちない歩みになりつつも、先導を続けてくれる模様だ。鬱蒼とした木々や草の隙間を縫ってなだらかな斜面になっている山道を歩いていく。しばらく続く単調な歩きの中、僕は色々なことに思いを馳せる。


 やはりというか当然のように、ここの植物の葉も青い。その青さにも濃淡や明暗があって一様では無いものの、その違和感は僕の脳内にいまだに残り続けている。それがひとつの謎。


 あとは言語。アソォカゥの二人が喋くっている言葉は、汚い部類に入るものの、言ってる意味は頭にすんなり入って来る。「日本語」だ。オミロの言葉も、訛りというか何というか個性的ではあるものの、意味は取れる。その謎……この地に赴けば、判明するんじゃないかとの期待は、少しづつ確信へと変わっていっている。あくまで、僕の中で、だけど。


 もうひとつ、「体型」についてだ。長髪も丸男も多少標準から離れているものの、僕の中では想定の範囲内と言えないこともない。ここの住人……手足がやけに長く、小顔の目おっきい体躯に比べると。ということはもしや二人は……?


 考え事をしていたら、急に切り立つようになっていた道を、谷側に踏み外しそうになってしまった。慌てて足元に集中すると、もウージンはあぶナイんだからーと、隣にいたアルゼが腕を絡めて密着してくる。ありがたいんだけど、歩きづらい。でもそんなことは言えない。このコの僕への好意も謎なんですけど。


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