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#082:饒舌の、ファーグリーン


「あなた、ジェネシスの何なの!?」


 そのフォルムを見て、既に警戒を解いてしまっているアルゼが、その「人形」然とした物体にぽかんとした顔のままで声を掛ける。砂塵は少し収まってきたものの、砂ぼこりが身体にまとわりつくように舞っている中、残る一同もそのやり取りを取りあえずは静観する構えであった。


しかしそのフィギュアらしきものは、きょとんとした様子でアルゼの方を見やるばかりで、何も言葉を発さない。


「えっと……日本語……いや、『アソォカゥ語』が通じるみたい、だよ」


 たぶん、とあまり自信の無さそうなジン。正直さっきのはちゃめちゃな言語が母国のそれだったのかは完全には判別できなかったものの、まあ、言ってるニュアンスはつかめたからなあ、と、ジカルに手渡されていた小銃を下ろしつつ思う。


「……アナタハー、ジェネシスノォ、子供ナノー?」


 改めてアルゼが「日本語」で質問をぶつけるものの、いや「子供」ってことは無いでしょ、とジンは少しその奔放な発想に戸惑う。


<あはぁー、何やオジョーちゃン、『ジェネシス』知ってハりますねんのヤ~、話はやっ! みたイな、エヒャー、ごっつテンション上がルわ~>


 ひとり(?)盛り上がり始めたその「フィギュア」を囲むようにして、ミザイヤはじめ他の面々が、どうなってんだみたいな疑問顔を寄越してくる。


「えっと、君が何者か、ってことを皆さん聞きたいみたいなんだけれど……」


 代表してしょうがなくジンが訊くことになる。正直あまり関わり合いたくは無さそうな表情を浮かべつつ……。すると、「フィギュア」はその言葉を聞くや否や、急にかしこまったような身振りをして胸に手を当てた。


<……コレはご紹介遅れまシた。私こソが、そこのお嬢ちゃんガ言わはりましたヨウに、『ジェネシス』の、『ジェネシス』父チャんの実の息子でスー、……なンつッテ!! ソナあんナ無骨な野郎の股カら産まれ出デますカッテよっテ、たヒ~、あら待テよ。股また股、あラん、『息子』て、イヤそっちの意味ちゃイはりマスよっての、ゲっハ~!!>


 紡ぎ出されるハイテンションボイスと、一向に進行を見せない場の空気に、さしものジンも下ろした小銃を再び掲げようとするものの、


<わわわ、冗談でっセ。息子ちゃいマす。あっちきは『オミロパシィタ』いいマンデソ! 言ってみレば、『ジェネ』の奴の同族いウことニなりハリまンにゃ~>


 小さな体をこれでもかとボディランゲージに費やし、やっとまともな事を喋り始めたその「フィギュア」だったが、


(オミロ……パシィタ?)


 ジンは馴染みのなさそうな単語に、あれ「英語」じゃあないんだ、との軽い疑問を感じている。


「『同族』、……『お仲間』ッテことですヨね~? 喋る『鋼鉄兵機』ってイウのは、初めテノコトですね~」


 ジカルは手にしていたごつい拳銃を背中のホルスターに再び突っ込むと、興味深げにその「オミロパシィタ」と名乗った「フィギュア」をふんふんと色々な角度から眺め始める。と、


<ややや! こラまたワイルドな別嬪ハん! ちゃいマすちゃいマす! うっとコら、『機械』ちゃいマすよって、ほんマ最近のコぉらはカナいまへンなぁ……>


 やや抗議めいた声で「フィギュア」はまくし立てると、右手の人差し指をびしりと突きつけるキメポーズのようなものをかまして、以下のようにのたまうのであった。


<我らは『聖剣』……神々の作り出した十二の力ある星……些末なる『マ』を根絶葬るがため、愚かなる人間どもに遣われし、尊き流星……>


 いきなりのいい低音にも、その次元を一個越えてしまったかのような発言内容にも、アルゼ以外は真顔になるほかにリアクションの取りようは最早無いようである。


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