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#075:雄流の、コンフラワーブルー

#075:雄流の、コンフラワーブルー



 ジンを乗せたワンボックス様のクルマは、一路、大陸の北東部を目指して快調に飛ばしているかのように見える。


 見渡す限り、砂塵の巻く赤茶色の荒野に延びる、一筋のベージュ色のライン。それは超微粒の砂のようなものを固めて「舗装」された道路なのであり、その大自然の真っただ中を貫く人工物に、この世界の技術力というものの凄まじさを改めて感じてしまうジンであった。


「じ、ジンはソノぉ……好キナ子トカイルノ?」


 最後部のシートの隣から、そんな思春期的な質問を可愛らしい女の子からされているジンは、少々真顔になりながらも悪い気はしていないようで、結構まともに答えたりもしている。


 その前の席にはジカルが、自分の銃の手入れを、揺れる車内で器用に広げて行ってたりしていた。鼻唄混じりながら、的確に迅速に動く手さばきを見て、その隣に座るフォーティアはさすがーみたいな目をして見入っている。


 運転はボランド―が、そのいかつい容姿とは似つかない、繊細な制動で担っている。その横の助手席には、完全に寝入っているミザイヤの姿。


 あまり普段は行動を共にしない六名だが、目的地である地区「アソォカゥ」には、それぞれ訪れる目的が異なる。


 ジンに関しては、自分の「出身地」では? との疑念のある場所に赴き、何らかの情報なり何なりを得て、潔白(?)を証明したいという思惑。それの付き添いとしてジカル。


 アルゼは他ならぬ自分の愛機「ジェネシス」の新たな「武器」となるものの探索である。近年、アソォカゥ南西部コティローから、様々な興味深い「出土品」が次々と発掘されているニュースは、アクスウェルにも当然ながらもたらされており、気になるスポットとして認識もされていた。


 しかし治安の悪さ、他民族に対してあまり友好的ではないという情報から、二の足を踏んでいたのが現状であった。今回のアルゼのたっての希望が、渋る上層部を動かしたといっても過言ではない。もっとも、総司令カヴィラは「人型ロボット」にただならぬ傾愛があるので、二つ返事でGOサインを出したというが。


 フォーティアはゴシッパーとして何か感ずるところがあったのか、それとも日々のデスクワークに嫌気が差していたのか、割と軽い感じで志願をしたのであった。要は暇だったというのが、大方の見方ではある。


 ボランド―、ミザイヤは、護衛兼運転手として駆り出された。ガラの悪い輩の扱いや交渉事に通じているという能力(?)を見込まれての抜擢でもあるらしいが、要は平時は割と暇な二人なのであった。


 ちょっとした小旅行、のような雰囲気を醸しながらも、それぞれの思惑を乗せてクルマは、ほとんどオレンジ色のまま変わらぬ景色の中を走り続ける。


(……ひとつ気になってることがある)


 お茶ツクッテキタから飲ム? とか、アレガ天気イイ時ニダケ見エル「砂塵龍」ヨー、など、ひっきりなしに話しかけてくるアルゼの相手をしながらも、ジンはこの少女も乗る「鋼鉄兵機」と呼ばれる機械の「名前」について、少し思いを馳せていた。


(……『ジェネシス』『ストライド』『ウォーカー』……全部『英語』だよね……『アソォカゥ語』は『日本語』に似た言語だというけれど……じゃあこの英語はどこから来てるんだっていう……それもちょっと謎だ)


 ジンは、鼻先に出された水筒のフタに注がれた真っ青な液体を真顔で見つめながら、これも謎だ……入浴剤じゃないよね? と少し思考を止めてしまう。


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