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#073:想起の、アスター

#073:想起の、アスター



「発想は面白い。だが、実際の『手駒』が足りな過ぎる」


 カァージも、その「義手差し替え」を真剣に運用する気に至っている。その上で、冷静に問題点を挙げていこうとする構えだ。その反論に、アルゼは、え? というような表情を浮かべる。


「でも、『鉄棒』くらいでしたらすぐ調達・加工できると思いますし、予備の『ライフル』もありますよね。あと何を足すかって話ですけど……」


 小首を傾げるアルゼに、カァージは背後にあったホワイトボードを自らの側に引き寄せて、そこに「人型」の腕の部分だろうか? 絵図を書きなぐる。


「『鉄棒』および近接の『ナイフ』とかを使用すると仮定する。想像してみろ、『手首が固定されている状態』で、満足に扱えるか?」


 その言葉に、あっ、と口に揃えた指を当てるアルゼ。


「肩、肘、手首の回転稼働が相まって、これらの武器は力を発揮する。鈍重な奴らには問題はないだろうが、単調かつ、大振りになってしまうような動きでは、少し素早いベザロアディムくらいでも、ましてやあの『骨鱗コツリン』であればなおさら、当てることは困難だろう。いや、逆にその挙動を読まれて反撃を喰らう可能性が高まるとまで考えておくべきだ、つまり、攻めたつもりが攻めを呼び込まんでしまって危険だということ」


 カァージのもっともな意見に、むむむと可愛らしい顔を歪めるアルゼ。


「『ライフル』は体全体で照準を取るから、と思えるかもしれないが、もとより両手で扱うことを前提とされた物だ。『肘先』に取り付けるとなると、銃身かどこかしらを切り詰めないと、長尺過ぎて照準を合わせるどころじゃ無くなると考えられる。先の戦闘でお前が見せた精密射撃は大したものだったが、相当な訓練をあの銃で積んだはずだ。それをまたバランスが変わった『肘先銃』で調整していかなければならない」


 むふー、と紅潮させた顔を強張らせながら、アルゼはその奔放な頭脳を回転させているようだが……


「……即時で使える戦力となるための猶予は何日ですか」


 押し殺した声でそう上官に訊く。その目は揺れ動きながらも何かを見据えているように見えた。大したタマだ、と感心しつつもカァージはそれを表には出さずに告げる。


「無い、と言いたいところだが、二週間与えてやる。だがどうする? 『肘先銃』を突貫で叩き込むにしても、加工の時間も含めるとそんなに日にちは無いぞ?」


「『ライフル』は……『あいつ』には効かない」


 ぽつり、と呟くようにアルゼ。その脳裡には、「骨鱗」の体表で散らされたエネルギー弾の残像が甦っていた。そして弱点と思われたその口中にねじ込んだ銃を、即座にむさぼり食われたことも。


「別角度から考えます。なので、『大型』が出土している地域を教えてくださいっ、そこで出た「武器」を拝借して何とか間に合わせます」


 決意を込めた幼い顔に、カァージは賭けようという気に既になっていた。


「二か月前、三か月前、と立て続けに『大型』が出た地域がある。専門家も各区から集っていると聞いているホットスポットだ。だが少々厄介な連中が跋扈している危険な区域でもある……行くか?」


 聞くまでもないか、と思いつつも、カァージはこのひたむきな少女の決意を直に受け止めたかったがため、敢えてそう尋ねる。


「行きますっ!!」


「……いいだろう、場所は『アソォカゥ』の南西部、『コティロー』という小さな集落のあるところだ。ジカルⅣ士も、連れて来たジンという『少年』をそちら方面に連れていくという事を言っていた。それに同行する形で向かうように」


 カァージの言葉に、思い切りぴんと張った敬礼で応えるアルゼ。


 奇しくも、


 ……アルゼと「少年」がその場所を訪れることによって、世界は変容を見せることになる。しかし、


 それはこの時、誰もが予測はしえない事なのであった。


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