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#068:装製の、ゼラニウムレッド

#068:装製の、ゼラニウムレッド


 指先から腕を伝って身体の背面まで、張り出すイバラのような、網のようなものを貼り付かせさせられている。「光力維持装置」と呼ばれる代物らしい。


 この「世界」の人たちは自らの持つ「生命力」を、「光力」という物理的な力を伴ったエネルギーの塊のようなものに転換できるそうで、「鋼鉄兵機」と呼ばれる道具が、それをさらに増幅したり、変質させたりすることが出来るそうだ。


 そうだそうだが続くけど、全ては伝聞でしかないわけではなくて、僕も実際、「銃」の形態をした「兵機」をぶっ放した。


 「兵機」には「光力」をある程度ストックすることが可能だそうで、それを使い切っても、自分の「生命力」を「光力」に転換していけば、そのエネルギー的なものが補充されていくのだという。


 ただ僕にはその「転換」する力……「顕現」させる能力が無かったとのことで、それが「生命力」に直にアクセスされて、結果、生命活動を行う上で必要な生命力を「極限まで抜かれる」という非常事態まで陥ったということになったのだという。


 だという、だというが続くけど、実際体感した、あの体中の全神経を一斉に冷たい糸で引っ張られる感じ……あれは今も全身に嫌な余韻を持って残っているわけで、


 そんな中、ただ室内で座っていルのも退屈デしょー、と病室を訪れてくれたジカルさんに誘われて、歩くのもまだままならない僕は、車椅子に乗せられたまま、「アクスウェル地区自警」という、ジカルさんが所属する、地区を護る組織の敷地内をいろいろと案内されていたのであった。


 身体の半面に付けられた「維持装置」のおかげか、だいぶ体は楽になっている。一方で頭……思考の方は、ふわふわと定まらない感じではあるけど。


 「地区自警」の建屋群は、ぐるりを立派な石造りの壁によって囲まれていて、かなりの面積に思える。「東京メガロドーム」3個分くらいな。常にどこかからは金属を打ち付けるような音が響いているけれど、僕は、こんなぼんやりと活気のあるような空気感は好きだ。


 見上げる高さの「ハンガー」には、大型の「兵機」が、修理や整備を慌ただしく受けていて……まるで巨大人型ロボット、いや、そのものとしか言いようは無かったけど、その巨体には、この低重力だからこそ直立して歩けるのかな? と思わせられたり、ここで働く人たちの「宿舎」は何だか、学校の寮みたいな佇まいだったりして、ああー、生活と仕事が密着してるのって憧れるなあ、などと、僕はこの世界に留まることになることを、半ば諦めと、少しの希望を持って、呑み込み始めていたわけであって、


 そんな時だった。


「エレメバ、ソレフ、アソォカゥ?」


 僕の車椅子を押すジカルさんが声を掛けた人影……三人かな、の、うちの一人、


「……ジアドロメ、コンメクス」


 金髪ロングは背中くらいまで真っすぐ伸びていて、目は僕の二回り以上大きくて、そして引き込まれるような淡いブルーの色をしている。小さな鼻と口、そして流線形のような滑らかな体の線をした八頭身以上のすらりとしたボディ。


 僕の拙い審美眼からしても、美しさを強烈に放っているかのような、おそらくは僕と同じくらいの年齢の少女は、抑えてはいるのだろうけど、結構な剣幕で、僕の方を見て何かおっしゃっているわけで。


 不穏な予感……やはり僕は招かれざる者なのでしょうか。


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