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#053:苦悩の、ジェイブルー

#053:苦悩の、ジェイブルー


「……ジェネシスの様子はどうなっている」


 魔物たちとの死闘から明け、ここアクスウェル地区自警内には事後処理に大わらわの面々が、忙しく立ち動いている。


 第7ハンガー。人型鋼鉄兵機ジェネシスは、自らを「闇黒アンコク」と名乗った、不明な部分が多々ある生命体との戦いにより、機体を大幅に損傷したまま運び込まれたのである。


 ハンガー内に入ったカァージは、まずその右腕の溶かされたかのような消失具合に、ぐっ、と怒りともとれる呻き声を喉奥で発してしまう。

 自分自身もその「闇黒」……「骨鱗」に右腕をやられ、未だ肩から吊った状態であるものの、それを意に介せず、とりあえずは整備の者のひとりを捕まえて状態を問い質す。


 やはり右腕の損傷はかなり深刻なものであり、肘の少し下辺りから先は、どろどろの断面を残し消失している。骨鱗に、文字通り「食われた」ような感じだ。

せめて切断されただけならば、接ぐ算段も立っただろうに、と、カァージは動く左手で、その朱色の髪を激しく掻き毟る。冷静沈着な彼女にしては、珍しく苛立つ感情をあらわにしていた。それだけ、この機体-ジェネシスに託す思いは大きかったのだろうと思われる。


 スペアのパーツなど無い状況下で、今後は片腕で戦闘を行うしかないわけだが、その場合、戦力としてどれほど削がれることになるだろうか。半分? いや、ジェネシスの強さ・持ち味は、その汎用性にあると見ているカァージには、この損失が8割に相当するものではないかとの見立てをしている。


(……未知なところがある事も懸念材料か。あの時見せた『黄金の光』……結果として窮地を脱したわけだが、その後の反動が酷い。操縦者を極限まで追い込む機体……多かれ少なかれ『鋼鉄兵機』にはそういう側面があるにしろ、それにしろあれは尋常ではなかった)


 ジェネシスに「光力」含む生命力のほとんどを吸い取られたかのようなアルゼは、一夜明けた今も意識は戻っていない。病棟で、「光力」を輸血のように補充する装置につながれたまま、昏睡状態でいる。


 その他の兵機についても、例えばエディロアの愛機、蜘蛛のような姿を持つ「ヴェロシティ」は機体の装甲部を「骨鱗」に皮を剥くように全て食われていて、再建には少なく見積もって二か月かかると報告が上がったばかりであり、オセルの乗る「ステイブル」も無理な操縦が祟ったか、原因不明の不具合によって、動かせるようになるまでには時間がかかると診断されている。


 さらにはミザイヤの「ストライド」も未だ稼働の見込みが立たない今、ここアクスウェルの「兵機」戦力は、後方護衛型の「ウォーカー」が3機と、ほぼほぼ皆無と言ってもよいほどの状態なのであった。


(今またイドが湧いたのなら、終わりだ)


 カァージはけたたましい金属音が鳴り響くハンガー内で、ひとり絶望的な状況に頭を痛める。


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