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#052:拘束の、赤銅

#052:拘束の、赤銅


 相変わらず体は動きそうも無い。指一本でさえも……と、ふと車椅子の肘掛に乗せられた自分の手の先を目だけ動かして見てみる。何か目の端に黒い物が留まったからだ。


 黒い手袋かなと思ったら違った。黒い樹脂状のものが、手の甲に張り付くように、そして枝が張り出すように覆っていた。その黒いものは、手首を通って上腕部まで伸びている。着ているガウンの七分くらいの袖に遮られてそこから先は見えないけど、どうやら腕全体が覆われているっぽかった。体が動かせないのは、この拘束具めいたもののせい? 


-あっア~、『装置』が取り付いテますカラ、いまシばらくは、体のどこヲ動かすコとも難しイと思いまスね。でスから、安静に、ご安静ニ。


 声が言う。僕の姿は見えているということだろうか。それより、この喋り方はジカルさんだと思うけど、なぜ直接、僕のところに来ないのだろう。不審と不安に思い、そのことを聞いてみる。一瞬間があった後、


-あっア~、私はジカルと違ウのことヨ。『ホーミィ』言いまス。私も『アソカゥ』の言葉少シ喋れるのデ、あナたの助けヲいたシたい思テます。


 たどたどしく、ところどころ中国の人のようなイントネーションがあるものの、やっぱり日本語だ。でも僕はもう知っている。ここは日本どころか、地球でも無いのだろう。

「アソカゥ」という所がどんなところかは、見聞きした覚えもないし、皆目見当もつかないのだけれど、言語が似通ったのは本当の偶然なのだろうか。


わからない。まだわからないことだらけではあるけど、「言葉が通じる」という一点で、僕はもうだいぶ、ここでの出来事を、あまり慌てたり悲観したりせずに受け止めることが出来ている。


 とは言え、最初にここで目覚めた後に襲われた、あの黒い怪物だったり、ここの街(『自治区』と言ってたっけ)で相対したあの黒いトカゲの化物だったりは、やっぱり驚愕と恐怖の対象ではあるものの。


 そこまで思い返してみて、僕はようやく、自分の記憶が飛ぶまでに何をしていたのかを思い出したのだった。


 エネルギーの塊のようなものを撃ち出す銃。それを握って、肩に押し当てていた感触が甦る。そうだ、トカゲの奴に食らわすため、僕はその銃を撃とうとしたんだった。

「残弾」が無くても自分の「コウリョク」を使えば何とかなる、みたいな事を言われていたんじゃなかったっけ。でも実際やってみたら、全身に悪寒のような、鋭い衝撃が走って、それで意識が途切れたんだった。


-あナタには、『光力』を顕現させる力が、備わってイないのようデす。非常に珍シいケースでスが、そういっタ例が無いわけでハありまセん。なので、落ち込まなイでくだサい。


 いや、落ち込むも何も、僕らの世界ではそれが普通でしたよ?


-訓練で、習得スることも全く不可能でハないのデすから。慌てズ、あなタのペースで、ゆっくりト、馴染んデいきまショう?


 その「ホーミィ」という女性(声の感じでは結構若い?)は優しくそう言ってくれるのだけど、何かその、落伍者みたいな扱いはどうなんでしょ。僕は普通ではないのでしょうか?



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