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#051:再興の、アイヴィグリーン

#051:再興の、アイヴィグリーン


 ここはどこだろう。


-こんニチは。


「……」


-気分ハいかがデスか。


「……」


 声が聴こえる。白い壁。白い……部屋。窓は右手の方にひとつ。対する左側にはこれまた白い扉がある。軽く左右に目だけを動かして確認する。しんとした、完全な静寂ではないが、静謐な感じがこの八畳くらいの空間には満たされているように感じた。


-思い出セましたか。


 思い出す。何をだろう。降りかかってくるかのような声。おそらくは僕に語りかけてきているだろうその声は、やわらかな女性のものだ。しかしその質問の意図はよくわからない。

 周りには消毒薬だろうか? それ系の薬品っぽい匂いが漂っている。


-あナたは長い間、眠りつづケテいましタ。


 僕の真正面は真っ白な壁だが、上の方に小さな四角い箱状のものが取り付けられている。声はそこからこの部屋に落ちてきているようだ。


 スピーカー……顔の見えない相手の声に戸惑いつつも、僕は出方を伺う。


 少しづつだけど、自分に起きた今までのことが思い出されて来ていた。「長い間、眠り続けていた」と「声」は言うけど、本当に、長く意識を失っていたような気がする。例えるなら四十日くらい。


「あ、あの。ここはどこですか。僕はいったい……」


 僕はこういった状況に置かれたら万人がそう問うであろう、ありきたりな質問をしようとした。この期に及んでも僕はまだ自分が住み慣れた「地球」上のどこかにいるんじゃないか的な、はかない思いにすがり付いている。


-ここはアクスウェル自治区の自警内病棟でス。あナたはここで治療を受けていまシた。


 女性の声の主に思い当たるところがあった。そうだよ、僕は確かにこの人に出会ったんだ。その後で、薄気味悪い化物と戦ってそして……僕はいったい……


-ここに運び込まレた時、アなたの体は、生命力がほとんど全テ、抜かれてイた状態でシた。


 声はいきなり物騒な言葉で切り出す。


「生命力が抜かれていた」。それはつまり死んでいることに他ならないの? 依然、我が身としての実感は薄い。しかし、だんだんと自覚されてきたこの身体のままならなさ。


 そしてようやく気付いたが僕は車椅子に座っていた。いや座らされていた、か。前開きの短い水色の薄いガウンのようなものを身につけている。入院患者が着させられるものだ。


 体は全体がだる重く、車椅子のシートに張り付くように力無く投げ出されているばかりだ。自分の意思通りに動きそうな気配は無い。外傷は無さそう。でも、この体の不自由さはいったい何なんだろう。


-いチばん危惧されタ『光力維持装置』の『取り付け』ハ概ねうまくいっタようデす。こうして目覚メて、話セるなったのでスから。


 声はそう言うが、ちょっと待って欲しい。


 ……『装置』? 『取り付け』? どういうこと?


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