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#045:無為の、ビオレ

#045:無為の、ビオレ


(『聖剣』……『剣』って言ってるってことはその、剣状のもののことだよね? でもこのジェネシス自体は剣的なフォルムをしてるとはとても言えないし……うーんうーん)


 困惑のあまり、惑乱したことを頭に思い浮かべ、しばし硬直してしまうアルゼだったが、


<集中っ!!>


 短く発せられたカァージの言葉に、はっとなって前方に見える敵に、再び焦点を合わせる。

先ほどこちらに語り掛けてきてからは、眼前の異形はまた静観の構えだ。一体何を狙っているのか、全く読めないその行動に、アルゼもどう動いていいか迷っている。


(……『奴』の隙を突いて、みたいなことを考えていたが、どうにも攻めづらいな。近距離での打撃が最も効果的かと思ったが、あまりダメージは残ってないし、そもそも面と向かったらもう当てることすら困難。却って『ライフル』とかで狙撃した方が良かったか?)


 ジェネシスの背後、充分に距離を取りながらも、その動きを察知できる所まで前進させていた指示車の中のカァージは取っ掛かりとなるべき戦略を探るが、その時だった。


「!?」


 いきなり「骨鱗」がふわりと跳躍したかと思うや、目の前の鋼鉄兵機に向けて一気に距離を詰めてきたのである。一枚の羽毛が微風に舞い上げられるかのような、あまり質量を感じさせないその所作に、一瞬、何が起きたのか理解が遅れてしまうアルゼ。


(くっ、やっぱり! 読めない!)


 慌てて操縦桿を倒し、両手の五指をまるで鍵盤楽器を奏でるが如く、動かす。その複雑極まりない「指令」は直ちに信号に置換され、巨大な機体の右腕を繊細に挙動させていく。食いちぎられてしまった「鉄棒」の残骸を諦めて手放すやいなや、


「らあさぁっ!!」

 またも独特の雄叫びと共に、ジェネシスの右拳が滑らかに握られ、眼前まで浮いてきた「骨鱗」向けて撃ち抜かれる。


 しかし、


「……」


 自らの全長よりも大きな、その鋼鉄の塊の激突を全身に受けたかに思えた瞬間、「骨鱗」の胸部に縦横斜めの亀裂が入り、それが内側から、ばかり、と割れて触手のように張り出していく。


「!!」


 まるで蛸のようなフォルムと軟体さで、鋼鉄兵機の拳に取り付く「骨鱗」。慌てて左手を伸ばし、それを引きはがそうとするアルゼだったが、


「アンテルア、メルベキサム、トヘレイドメロォ……アヴェンクア」


 形態を変貌させた「骨鱗」のどこからかは分からないが、再び古代の言語が発せられると共に、その左手にも、異形の頭部から鞭のようにしなりながら出て来た大型の触手が巻き付き、絡めとってその動きを封じていく。


(た、食べようとしている!?)


 アルゼの感覚は正しく、「骨鱗」が咀嚼のような動きを始めると、その内側に捕らわれてしまったジェネシスの右拳から、金属を折り断つような耳障りな音が断続的に響いて来るのであった。


(く、喰われてたまるかー!!)


 アルゼは必死で「骨鱗」を引っぺがそうとするも、本当の蛸のように吸盤で吸着しているのか、その軟体は伸びるばかりで一向に引き剥がせないままでいる。


 コクピット内で泡食うアルゼの視線のやや下に設えられたディスプレイには、またしても翻訳言語が流れてくるものの、彼女にそれを読んでいる余裕は無い。


 そこには、


<一体化すれば、我らは無敵。いま再びの融合を、アヴェンクア>


 との文字。流れる文字を指示車の中で認めたカァージは、その端正な顔を歪める。


(アルゼごと喰われる前に、脱出を促すべきか? だが、ジェネシスを失っては、『奴』を討つことは叶わん……どうすれば)


 苦し気に逡巡するその間も、絶望的な金属音が鳴り響いていく。


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