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#037:転換の、シーグリーン

#037:転換の、シーグリーン


「……!!」

 ヴェロシティは「威嚇形態」……と便宜的に呼ぶが、蜘蛛のように細く「く」の字に曲がった無数の脚のいくつかを孔雀の羽のように広げた体勢のまま、目指す相手、「骨鱗」へと再度挑みかかっていく。


 先ほど「骨鱗」の腹部を貫いたのは、その脚の内の一本。

ヴェロシティの兵装は、これら自在に動き、獲物を突き刺す、薙ぎ払う、絡めとる、等の多様な用途を有する「鋼靭こうじん」と呼ばれている「脚」のみなのだが、近接戦闘では無類の鬼神っぷりを発揮するものの、いざ遠距離の目標へとなると、対する攻撃手段を保有しておらず、苦戦を強いられることが多かった。


「多かった」と言うのは、すなわち、現在では克服しているということである。

 エディロアの発案による、「鋼靭強制射出」……脚部の動力は付け根部分が最も強力に調整されているが、まるで蹴りを放つかのように、振り上げた「脚」をその付け根部分の動力も乗せて最大出力で振り抜き、同時に付け根のジョイントをあるタイミングで外すことによって、「槍」のように高速かつ直線的に「脚」が発射されることを発見した彼女は、そのイレギュラーな「不具合」を逆手に取り、実戦で使用できるまで磨き上げた。


 アクスウェル魂とも呼べる、「あるもの全利用」の精神が色濃く反映された必殺奥義なのであった。

ただし飛ばした脚を回収する術は無いため、「弾数」は有限である。かつ、全ての「脚」を理想的な高出力で飛ばすことは流石のエディロアにもまだ不可能であること、そして本体を支え、そして最低限の稼働速度を維持するには一定以上の脚が不可欠であることから、現時点で射出可能な脚はわずか「4本」でしかない。

相手のふいを突かなければそのモーションの大きさも相まって非常に見切られ易い技でもあり、切り札的な使われ方をすることがほとんどであるのだが、それが今回はうまく嵌まった。

「突進」により距離を詰めようとみせたエディロアの策が功を奏したと言える。

これにより「骨鱗」は相手が「接近して攻撃を仕掛けてくる」と判断した。現に「骨鱗」はヴェロシティの動き・速度は見切っており、ぎりぎりまで引き付けて交わしたが、


 そこに隙が出来た。


 「威嚇」のポーズを取っていたのは、射出する脚以外の脚も動かすことで、その事前モーションをカモフラージュするため。そしてこれらの策は見事結実し、「攻撃する」という気配を消したまま、射出された脚は、「骨鱗」を貫いたのである。


 しかし、


(今のは『奴』の思考の埒外だったからこそ命中させられた……二度目は無い。どうしたもんか)

 エディロアは再び間近に迫る「骨鱗」をコクピットから見下ろしつつ、頭を回転させる。


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