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#033:変容の、グレージュ

#033:変容の、グレージュ



(なに……なんなの)

 目の前の光景に絶句しつつも、その視線は外せないままでいるエディロア。内側からめくれ上がるような異常な動きを続ける「怪物」の姿は、ついに全身が灰色がかったピンク色の粘膜状の皮膚に覆われていき、嫌悪感をもよおす外見へと変貌していたが、それだけで終わりそうではなかった。


 コォォ、コォォという鳴き声なのか呼吸音なのか判別しがたい音声を発しながら、「怪物」であった物体は、今度は全身をくねらせ続ける。


<……撃ちますかっ!?>

 エディロアのインカムに部下からの困惑気味の通信が入ってくる。粘膜という生物の弱点とも思える部位が露出している状態……エディロア自身も今この瞬間であれば、こちらの攻撃が通るのではないか、とも考えてはいたものの、


「待て。射撃の合図は私が出す」

 そう指示を出すに留めた。正直、判断がつかなかった。攻撃を受けた「怪物」の粘膜から、何かしらの害を為す物質が撒き散らされないか、その危惧はあった。が、この機を逃すことによって、後々取り返しのつかない事態に陥ることもまた脳裏に浮かんではいた。


 結果、静観というらしからぬ選択を取ってしまったエディロアは、歯噛みをしながらも、その怪物の行く末を見極めようと、警戒を保ったまま、蠢く物体を自らの間合いに入れて待つ。


「……」

 粘膜の塊の動きが止まった。地面から屹立する「肉の柱」のような姿へと変貌していたそれは、その表面の水分が一気に抜けたかのように潤いを失くしたと思った瞬間、最上部が内側から徐々に裂け始めて来た。

 バナナの皮を剥くかのように、力無く外側に垂れ下がっていく粘膜だった表皮のようなものは、一瞬ののちに四方へと広がり落ち、内側に「いた」人影のようなシルエットが浮かび上がる。


「……」

 それは、人のような様態をした、しかし人とはかけ離れた外見を持つ、ひとつの生物のようだった。


(あんな個体……見たことない)

 エディロアが顔を顰めて思うように、その「個体」はまったくの未知、であった。遠目には人のようなフォルムをしている。しかしその身体全体は大小さまざまな白い「鱗」のような小片でびっしりと覆われていた。「鱗」はどこか乾燥した骨のような質感であり、そのような「表面」を有する生物を、彼女は知らなかった。顔はのっぺりとした一枚のこれまた「骨」であったものの、その右目にあたる部分だけが四角い穴が開いている。その空隙の中は、先ほどのベザロアディム個体の身体を覆っていたような「黒い煙のような光」に満たされていた。


「ルフト、情報を」

 すかさず本部にその画像を送るものの、


<……待ってください。こいつは……何だ?>

 思わずそう呟いてしまったのだろう、困惑を隠せないルフトの声が虚ろに響いてきただけだった。


「……」

 はっきりまずいと感じ始めたエディロアは、何とかこちらのタイミングで初発を仕掛けられないかという方向へと、自分の思考をシフトさせていく。


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