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#020:熟練の、シュプリーム

#020:熟練の、シュプリーム


 いったん構えを解いて、手元の「銃」を確認する。全長1mちょっとといった感じだろうか。僕が「もといた世界」でも、見慣れたというほどでもないが、まあ見かけたライフルとかの形状と思われる。

 最も異なるところは、これが金属の銃弾を火薬を燃焼させた高温高圧で撃ち出す機構では無い、というところであり、ジカルさん曰く、「オーラ弾」を「オーラ」の撃発衝撃によって撃ち出す、とのことだが、そのほとんどが僕には理解不能であったわけで。


 ともかく、この引き金を引けば、「弾」が出る。ということだけを把握しておけばいいか。弾数は「六発」と聞いた。それから先は自分の「コウリョク」で連続使用出来ルね、とジカルさんから説明を受けたけど、「自分のコウリョク」というものが何物なのかは分からず、場合が場合だけに詳細に聞くことも出来なかった。まあ、なんとかなるよね、と自分にそう思い込まし、僕は再び銃を担ぎ上げる。


「ジンさン、そろそろ目標が見エてくルね。私は、『奴』にすれ違うように抜ケるので、やや後方を狙っテ、撃ってくダさい。弱点の、『うナじ』に照準を絞っテ」

 インカムからはジカルさんの指示が聞こえてくるけど、斜め前方に見えてきた件の「怪物」たちの動きは素早そうだ。そんな曲芸みたいなこと、僕に出来るのだろうか。


 でもやるしかない。僕の力が必要とされているんだ。そんな事、今まで実感したことあったか? 僕自身、半端な学生であるがゆえ、そしてこれといった技能があるわけでもなし、で、おまけに自分から何か成し遂げようとする意欲も無かった、しょうもない人間だったわけで。


 そんな僕が、いま頼られている……ただその事が、無性にうれしい僕がいる。ゆうて状況は、僕の理解の範疇をいまだ楽々と越えているものの、それは、それ! と割り切る潔さが、今の僕には求められているように感じた。


 神経を集中させろ、自分の指先に、そしてその先にある銃口の、そのまた先にある「目標」へ向かって。道が開けた。と同時に、前方にいる黒いもやのような物を身に纏った、体高5mはありそうな「トカゲ」が目に飛び込んでくる。


「……目標……右前方!!」

 その「トカゲ」は、二階建ての石造りの住宅に張り付くようにして、その内部の住民を 値踏みしているかのように小刻みに顔を動かしていた。ガラス製と思われる窓から、中で怯える若い女性をねっとりとした琥珀色の光る目で見据えている。


「行きますっ!!」

 ジカルさんの雄叫びにも似た大声に、僕の緊張は高まる。僕らの乗ったバイクは、軽くスピードを緩めて体勢を整えた一瞬後、「化物」の姿を右に見つつ、その脇を全速力で通過していく。


「……!!」

 すれ違った瞬間、僕はピンク色の派手な「弾丸」を、その「化物」のうなじ当たりを狙って、撃ち込んだ。行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!


「……」

 当たったか? と思う間もなく、その「化物」は急速にその身に纏った「黒い霧」のようなものを四散させると、一瞬、天を仰ぐような動作をした後、どうと前のめりに倒れた。


「……ほンと、初めテ、なんでスか? お見事としカ言いようないデスねー」

 インカム越しに、ジカルさんの高揚したような声が来ている。よしよし、この調子この調子。幸い、というか、すごい偶然だと思うけど、僕がやっていたVRゲーの挙動と、今撃っているこの「銃」の挙動は、もの凄く似ていたわけで。いや、そんなものじゃないか、ほぼほぼ一緒だ。


「……」

 僕はここに来てからはひっきりなしに訪れる、「何で?」の衝動を内に封印させつつ、次の目標へ向かっていく。


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