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106/128

#106:歪曲の、インディゴ


(見たことのない形態……何というか、生物然とした気配も乏しい)


 外していた自らの装備を引っ掴むと、カァージは自らの指揮車へと踵を返す。現れた「壁」はそれきり動きを止めているものの、そこにただあるだけで相当なプレッシャーを一行に与えて来ている。加えてその出現理由も謎ということであり、不気味さは敵意を持って向かって来られるよりも増しているのであった。慌てて戦闘準備に取り掛かる面々。


「アルゼ乗り込め!! Ⅱ騎サポートをっ!!」


 手早く指示というか注意喚起のような鋭い声を放つと、自らは「本部」へ連絡を取り、この新手の「マ」の情報を得ようと試みる。


<……該当なし。相手の出方を待つんだ、カァージ>


 しかしインカム越しに返ってきたのはルフトのそんな力無い声。かと言って手をこまねいている状況でも無いと判断したカァージは、ミザイヤの搭乗が完了した鋼鉄兵機「ストライド」に威嚇攻撃をさせることを決める。


<……後ろに回り込むってのも、策としてはありと思うがな>


 ミザイヤの率直な意見に、それです、と短く返すと、カァージは指揮車に乗り込み、「壁のマ」の周囲を回って後ろにつこうとする。しかし、


「……!?」


 砂を蹴散らし、結構なスピードで車を走らせるものの、目の前にせり立つ「壁」は一向にその姿を変えず、「正方形」の面をこちらに向けてくるばかりだった。ならば挟み撃ちだ、と、ミザイヤと二手に分かれ、どちらかが背後を取る、とばかりに連携してみるものの、


<……こちらには『正面』向いてるようにしか見えねえ……いくら角度を変えようとも>


 ミザイヤの告げる声に、対峙する相手の計り知れなさを知らされるばかりであった。思考を巡らすも、杳として糸口も掴めない。


 「全方位が正面」というのであれば、例えば「円柱」のような形状をしているのか? とも思うが、こちらに向いている「面」は常に平面であって、せり出すような曲面を描いているわけではない。黒く、光を反射する「平面」は、こちらの姿を湾曲させずにうっすらと映し出してもいる。


 前後二面、あるいは前後左右四面くらいに「平面」を展開して、それをこちらの動きに合わせて的確に回転させている? とも考えたカァージだったが、流石にそのような動きをされていたら視認できるはずで、さらに視点は四つにはとどまらず、整然と展開してきたアクスウェル/ソディバラの自警部隊の各々の目にも、自分にとって「正方形の平面」が正対しているのであった。


(攻撃を仕掛けてはこないのが幸いと言うか不気味だが……何故こちらの至近にわざわざ現れたのか……? わからん。わからんが……)


 カァージはアルゼへの通信を繋ぐと、短く指示を出す。


「……殲滅しろ」


 曖昧かつ無茶なものであったが、当のアルゼはむふふーと鼻息も荒く、アイアイ、と軽く返事を寄越し、ジェネシスの巨体を立ち上げていくのであった。



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