#105:障壁の、紺鉄
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ベザロアディム(強化型)の集団を撃破したのちは、極めて穏便な行軍が続いた。
青白い「砂漠」をひたすら南東へ。気温は徐々に高まってきてはいたが、透き通る「砂」は温度を吸着するのだろうか? 地表付近はひんやりとすら感じる空気の流れを下から感じるほどになっていた。ジンなどは、あれ? 自分の知ってる砂漠と違うー、のような感想を抱いているものの、この「惑星」の者たちには至極当然といった感じに見受けられる。
見渡す限り、砂ばかりの平坦な地形を、ひたすら南西へ。
昼を回ってしばし食事と休憩をはさんだ一行だったが、辺りに警戒を促すような物体、あるいはそれ込みの異状という異状は見当たらないまま、日没を迎えることとなった。
「……こうまで無反応だと、ほんとに奴の『巣』があんのか? って気になるな」
愛機「ストライド」を降り、本日のキャンプを張る事になる、相変わらず砂一面の見晴らしの良い場所にどかりと座り込み、誰とはなしにそう呟くミザイヤ。食事の時間を待てないのか、懐から取り出した干し肉のようなものを口に咥えている。
<『イド』の反応はあるものの、それが移動しているかのような? 不可思議な挙動を示しているんですよ……>
そんな現場の何気ない呟きすら拾い、本部のルフトは律儀に無線を通して見解を述べて来る。
「地中を……移動しているってことでしょうか、モグラみたいに」
何とか自分も役に立ちたいと切なる思いを胸に秘めているジンは、自分の考えを率直に口に出すようにしている。そしてそれは当然のようにアルゼによって通訳が為されているが、その内容よりも、澱みない同時通訳の流暢さに周りの面々は驚かされっぱなしの面は確かにあるのだが。
「『モグラ』ってなにー?」
アルゼが大きな目をくるくるさせながらジンに聞く。ああそうか、それはこの星にはいないのか、と思いつつ、ええと、地面の下に住んでいて、大きく発達した爪で土中を掘って進むことが出来る動物だよ、と説明を補足しているジン。
「へえー、おもしろい生き物がいルんだね、ジンの故郷ニはー。私もいつか行ってみタいな……」
ふとした瞬間にブッ込まれるそんな潤んだ熱視線にどぎまぎしつつ、あれ? 何だかまた地響きみたいなのが聞こえるぞ? と若干わざとらしくも、本当に自分の身に感じられてきた震動にしばし言葉を止めるジン。
それは再びの、戦いへの狼煙なのであった。
「!!」
突き上げて来る震動が、ひときわ強く鋭い衝撃に変わった瞬間、黒い影は一行の前に姿を現している。押し上げられてのち、再び滝のように降って来る「青白い砂」が、夕日を反射し幻想的に思えるほど輝いているが、「砂の波」のような膨大なうねりは、不穏感をいやが応にも煽ってくる。
(……壁?)
一息いれようと装具を緩めていたカァージは、そのただならぬ威容を見て、そう評す。
影はまるで、アクスウェル地区を囲む「城壁」を正方形になるくらいのところで切り取ったような形態をしていた