#103:補填の、ボトルグリーン
「……13体全て沈黙……」
戸惑い混じりの声でそう兵士のひとりが伝える。太陽は既に地平線から上り切り、砂の青白さをより際立たせているように見えた。
その陽光の中、ひと仕事終えた感で佇み、人間のような仕草で腕を組んでいる鋼鉄兵機ジェネシス。一体目を沈めた後は、流れ作業のような手際で、大した時間もかけずにそのパイロット、アルゼは敵の半数以上を屠っていたのであった。
巨大人型兵機を精密に操縦し、動き回る敵の眉間の一点に、連続して弾を撃ち込む。
この難解としか思えないことを、まるでそうすることが当然かのようにやり遂げてしまう少女の機体さばき/銃さばきは、
(……世代交代の波が、ストライドの体高を越えて押し寄せてきていやがる……)
何とか怪物のうちの二頭を泥臭いやり方で仕留めたミザイヤに、彼には珍しく後ろ向きな事を考えさせてしまうほどの影響をもたらすのであった。と、
<ギギギギブアーップっ!! ギブでっせ!! こんナん無理ィィ!!>
そんな何とも言えない静寂感を突き破ったのは、当の「神射撃」の片棒を担いだ金属生命体のオミロである。巨大人型兵器の「右腕」に擬態している彼は、その手に握られたライフルに「直結」することで、銃器自体のキャパを超えた銃弾特性付与(被帽徹甲弾の生成)やら、ありえない速射やらをやってのけたのであった。
しかし彼自身がアピールしてくるように、その反動も大きそうで、ジェネシスの右腕は今や遠目から見てもしわしわに萎れ、ひからびた朽ちかけの木の幹のような外観を呈している。
<……大丈夫。『補給』体制は万全だから>
その叫びを軽くいなすかのように、コクピットからアルゼの声が響いてくる。と同時にうっすらとジェネシスの右腕部が淡いピンクの光に包まれたかと思うや、その萎びた表面が瞬間、パンと元通りの状態へと張り直した。
<……『外付け光力バッテリー』をソディバラからも4つほど供与されてるから、使い捨て感覚でいける。『30発』ほど撃って『4000カ』くらい減少してたから、『1発130カ』くらいで例の『被帽徹甲』が作れるってこと。『バッテリー』の容量は各『5000』ほどだから、まだまだ。まだまだ大丈夫>
アルゼは冷静にそう分析すると、左肩に背負っていた直方体型の「バッテリー」の、付随しているバンド部を左手指を器用に使って外すと、ごとりとキャリアーの上に置き、新たなものを掴み上げてまた人間のような仕草で背負い直す。
<い、イや、その、エネルギー云々ノことよリもデすね、この全身を襲ウ激痛やら、終わった後もしつコく残る疼痛感ガでスね、オミロ的にちょっトありえナいかなァと……>
そんなオミロの抗議もいなす感じで、アルゼはさて次は何が出て来るかな? みたいに呟くと、さっさとキャリアーへと戻っていく。




