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#102:応変の、ペールブラウン


 空を裂き、宙を直進する、黄色いエネルギーの「弾丸」。硬化した「光力」で構成されたそれは、撃発衝撃とライフリング機構によって、回転を加えられつつ凄まじい速度で撃ち出された。


 アルゼ駆るジェネシスの巨大なライフルから撃ち出されし弾丸は、猟兵たちと相対していた怪物、ベザロアディムの眉間を再び狙って驀進している。先ほどの射撃と寸分たがわぬように見えるが……


 気配を感じ、振り向いた怪物の内の一頭の、ぎょろつく両眼のど真ん中にその「弾丸」は再び吸い込まれていく。しかし、


(……あの黒い『鱗』……やはり『骨鱗』から継承したものと見える。『光力』を、的確な角度で弾きいなすような作りをしているのか)


 カァージの見立て通り、衝撃によりその長い首ごと頭部をのけぞらせたものの、怪物ベザロアディムはすぐさま立ち直ると、射撃の出どころを探ろうとそちらに顔を向ける。その眉間を覆うかのように貼り付いた黒い「鱗」からは、黄色い硝煙のようなものを立ち上らせているものの、本体にダメージは見られない。


(どう出る? ……アルゼ)


 自らの指示よりは本人の意向に徹頭徹尾沿おうとしているカァージは、既に静観の構えに入っているものの、そう問いかけるように思うより速く、


「!!」


 既に発射されていただろう二発目の弾丸が、先ほどの個体の、先ほどと同じ眉間に着弾していた。


 同じような軌道であったが、逆にそれゆえなのか、今度は怪物のリアクションが異なった。表情の無い巨大な目玉の中の瞳孔が、波紋が広がるかのように開いたかと思うや、前かがみに直立していたその身体を前方へと突っ伏していく。巻き起こる青白い砂塵。


<『被帽徹甲二連=倍プッシュ弾』……>


 ライフルを構えたままのジェネシスから、そんな謎の技名のようなものを呟くアルゼの声が漏れ出てくるが、周りの面々はその意味を捉えることも出来ずに、その超絶的技巧に、再び目を奪われることしか出来ていない。戦闘の中、しばしの沈黙・静寂が訪れる。


<……あ、えーとこの技はですね、跳弾を防ぐために弾頭に着けた被帽でですね、その、一撃目で『鱗』の構造を歪め、二撃目でそこを貫くっていう非常に単純と言えば単純なものでして……>


 静寂を疑問と解してしまったアルゼの、常人離れした技巧の自己解説が為されるものの、却ってその空恐ろしさに一同の動きと思考は止まってしまう。


(……何というか、発想力もそうだが、そこからの『実現力』と言うか、それを形にしていく道筋の作り方が既に尋常じゃあないな。末恐ろしい、いや、今でも充分恐ろしいか)


 流石のカァージも真顔に移行しつつも、アルゼのサポートをさせるため、気を取り直して各チームに指令を飛ばし始める。


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