第二章 錆びた歯車(1)
『――インヒレントスキル?』
青年の言葉に白髪の少年は首を傾げた。
ファンシーに存在する様々なスキルは、系統別の熟練度を上げることで、横繋がりの派生スキルを習得できる仕組みになっている。
一例をあげるなら、【片手直剣】から【大剣】。【曲剣】から【刀】。【格闘】から【打撃】という具合に、熟練度とスキルの系統により選択可能なスキルが増えていくのだ。また複数のスキル熟練度を満たしていないと出現しないスキルなども数多くある。
その中でも未だに出現条件が明確に判明していないスキルをレアスキルと呼び、身近なところでいうと彼の【直感】スキルがこれに該当する。
これがオープンβからの最古参のプレイヤーである彼が知るスキルのすべてであり、インヒレントスキルなどというスキルの存在は聞いたことがなかった。
『君が知らないも当然かもしれないよ。なにしろインヒレントスキルが発見されたのは、つい最近のことなのだからね』
言って、青年はかけている眼鏡の縁を指で押さえた。それからなにから話すべきかを思案するかのように、中空に視線を彷徨わせながら口を開いた。
『いまさら問うまでもないことではあるが、ファンシーにおける称号システムの仕組みは君も知っているね』
当然だ。青年の問いに彼は無言で頷いた。
ファンシーにある称号システム。
称号は獲得した種類によって様々な恩恵――パラメータの補正、プレイヤーやモンスターに効果を及ぼすなど――を得られる。
習得方法は様々あり、特定のスキル熟練度を一定値まで上げることで得られたり、モンスターを倒すことで習得するモノもある。称号は条件さえ満たせば複数習得可能で、状況に応じて複数個の称号を使い分けるプレイヤーもいる。
多種多様に及ぶ称号だが、その中にはファンシーでたった一人にしか与えられない無二唯一のモノがある。それらの称号を二つ名と呼び、転じてそれは特定のプレイヤーを指し示す呼称にもなる。
二つ名は他の称号よりも断然手に入れるのが難しく、習得難易度が格段に高い。そのためか得られる効果も高く、プレイヤーの誰しもがいつかは自分だけの二つ名を手に入れようと夢見ているのだ。
前述の理由やその希少性から二つ名持ちのプレイヤーは、ファンシーでは誰もが知る有名人である場合が多い。そこに本人の意思は関係ない。本人が望まなかったとしても、希少価値はそれだけ注目を集める。――例えそれが悪しきモノであったとしてもだ。
『だが、二つ名がもたらすモノは恩恵だけとは限らない。ときには保有者に不幸を招くこともある。それは君が誰よりも一番よく知っているではないのかね』
二つ名。それは富や名声を与えるモノばかりではない。中にはプレイヤーに悪意や憎悪を植えつけるモノはある。
――人喰い。それが悪名高きレッドネームプレイヤーである彼に与えられた二つ名だった。
モンスターと同じ赤いマーカーはPKの証。街などの中立地帯以外のフィールドやダンジョンでプレイヤーを殺害した場合、マーカーの色が青から紫に変化する。
通常、紫状態は時間経過もしくは、回数限定の専用クエストを受けることで解除することが可能だが、とある条件化においてのみ例外がある。
それはマーカーが紫から赤に変化した場合だ。
どれがフラグなっているのかは未だに検証中で正確には判明していないが、マーカーが紫の状態でPK行為を重ねると赤に変化する確率が高いらしい。
もっとも、それで確実にレッドネームになるわけではない。おそらく他にもいくつか条件があるのだろうというのが、ファンシーでの一般論だ。
なんにせよレッドネーム化に、不必要な過剰PKが関与しているのは確かである。
現在、レッドネームとなった場合の回復手段は発見されていない。あるのかないのかも判っていない。彼も知らない。
『――マンイータ。君が手にした二つ名は、君になにをもたらしたのかね?』
語るまでもない。嫌悪と憎悪。彼の些細な日常は、人喰いの二つ名と共に一変してしまったのだ。いまや彼の名前はPKの代名詞として、ファンシーに知れ渡ってしまっている。
『すまない。話を戻そう。インヒレントスキルとはなにか、だったね』
俯く白髪の少年になにを想ったのか。青年はそう静かに言うと、頭上を仰ぎ見た。
『インヒレントスキルとは、二つ名に付加された特別なスキルの総称。二つ名限定の専用スキルだと理解してくれればいい』
初耳だった。二つ名専用のスキルなど、いままで聞いたことがない。眉根を寄せる彼に、青年は続けて言った。
『何故いままでインヒレントスキルが発見されなかったのか。それは私にもわからない。プレイヤーのレベルが関係しているのか、はたまたファンシーの攻略が進んだことで新たに開放されたのか――いずれにせよ、いまはどうでもいい瑣末事さ。重要なのは君のその【捕食】スキルが、マンイータに付加されたインヒレントスキルだという事実だ』
それこそが最大の問題なのだ。いつの間にか自分のスキルスロットに強制的にセットされていたスキルに、彼は拳を握り締めると歯を噛んだ。
『インヒレントスキルをスキルスロットから外す方法はないんですか?』
『少なくとも私は知らない』
白髪の少年の希望を穿つ冷淡な言葉。青年の普段は柔和な目元が厳しく歪む。
『通常の称号と違い、自身の意思で変更できない二つ名に付加されている以上、それは不可能なことだ』
自由に付け替えが可能な称号に対し、二つ名は付け替えができない。少年にとって単純にして致命的な事実に、彼は軽い眩暈を覚えた。
レッドネーム――PKとしてのペナルティはいい。PKはプレイヤー・モンスターを問わず、キルされるとミストが3ポイント削られてしまう。それは構わない。最初から覚悟していたことなのだから。
問題なのはPKではなく、マンイータとして特性にある。
『いま一度確認する。【捕食】スキル――それは殺害対象のミストを、残数に関係なく奪いつくし、自分のモノにしてしまう能力。これで間違いないかね?』
はい、と彼は固い口調で肯定した。
【捕食】スキルはミストを喰らう。つまりマンイータに相対したプレイヤーにとって、ミストの残数など無意味だということだ。十だろうと二十だろうと、一度キルされたらそれでおしまい。ミストを根こそぎ喰われてしまうのだから。
彼がその事実に気づいたとき、すべてはすでに手遅れだった。急激に増加した自身のミストの残数。そして彼に殺害された大半のプレイヤーが、再びファンシーの世界にログインすることはなかった。それがなにを意味するのか、あえて語る必要もあるまい。
不愉快極まりない話ではあるが、それが白髪の少年に突きつけられた現実だった。
「――――」
バンダナがその単語を発した瞬間、ヘキサの頭の中は真っ白になった。手足が痺れ、身体の芯が冷えていくのが知覚できた。
フン、とバンダナが鼻を鳴らす。
「ふん。どうしたマンイータ? ぐうの音もでないのか。そうだろう。言い訳もできまい。貴様が犯した罪がどれほど重いか、その身に刻みつけて――」
「黙れよ、お前」
発した声は自分のモノとは思えないほど低くて暗い色を帯びていた。こめかみがズキズキと疼く。さっきから同じ光景が脳裏をぐるぐると巡っている。
緑の景色。瞬く閃光。乱れ散る燐光。泣き叫び許しを請う金髪の少女。そして少女に無慈悲に何度も何度も執拗に凶器を振り下ろす白い――。
「もういい。うんざりだ。茶番はもうたくさんなんだよ」
思い出したくないモノを思い出してしまったからか。いつになく好戦的な自分がいる。頭の隅の冷静な部分が警告を出しているが、自身に歯止めがかからない。
この感覚には記憶がある。これは以前にも体験した――。
思考にノイズが走る。
バンダナがなにかを言っているが理解できない。耳には届いているが、意味のある単語として認識できないのだ。――否。する必要すらない。そんな暇があるのなら一秒でも速く、あの口を塞いだほうがさぞかし有意義だろう。
幸い思考のノイズを消す方法はすでに思いついている。
「ぞろぞろ金魚の糞みたいに引き連れやがって。いい加減しつこいんだよ」
陰鬱を吐息に変え、ヘキサは剣に柄を掴んだ。剣を鞘から引き抜き、半身になって構える。
「いいぜ。こいよ。相手になってやる」
そして二度と顔を見なくてすむように、一人残らず喰いちぎってやる。
「いいだろう。返り討ちにしてくれる!」
いきり立った≪聖堂騎士団≫の剣士たちが一斉に武器を取り出す。複数の殺気が針のように肌に突き刺さる。
やれるか。自問自答する。≪聖堂騎士団≫は二十人はいる。昨日よりもさらに多い。一応学習はしているのか。彼らは陣形を組んで、お互いがお互いをカバーする位置取りをしている。これでは昨日の連中に使った手は通じそうにない。
なにも多勢に無勢は今回がはじめてではない。『あのとき』など今日よりもさらに大勢に襲われたのだ。しかし『あのとき』の奥の手は、いまは手元にない。
「――知ったことか」
勝ち負けなんてどうでもいい。自分の生死もどうでもよかった。こいつらの口を黙らせさえすればそれで満足だった。
「やってしまえ!」
その一言を合図に、彼らは同時に地面を蹴り――、
「待ちなさいッ!」
坑内に反響する怒号に動きを止めた。
いつの間にか赤毛の少女が彼らの前に立ちはだかっていた。腰に片手をあてて、≪聖堂騎士団≫を睨みつける。
「はずみ?」
ふと我に返るヘキサ。胸の黒い感情が一瞬で霧散する。
「黙って聞いてれば好き勝手に言ってくれちゃって。あんたら何様のつもりよ。正義の味方のつもりなの、それ?」
「なにを言う! PKを討伐することのどこが悪い! PKなぞ百害あって一利なし。我々は正義を行うためにここにいるのだ!」
「正義? はっ。どの口がそんな戯言ほざくわけ?」
はんっ、と小ばかにした口調で言う。
細められた瞳には、冷ややかな光が宿っている。
「手下ぞろぞろ引き連れて、あんたらのほうがよっぽど卑怯者じゃない。ひとりじゃ返り討ちにあうから大勢で取り囲もうってわけ? 馬鹿じゃないの。正義を語りたいのなら一対一で正々堂々と勝負しなさい!」
「貴様……!」
バンダナが顔を歪めた。いまにも歯軋りが聞こえてきそうな表情で、喚き散らすように口を開いた。
「PKに肩入れするつもりか!? 我々への冒涜は許さんぞ!」
「ふうん。あんたのギルドじゃ図星指されることを冒涜って言うんだ。ナンバーワンギルドの割には、茶目っ気があるのね。ひとつ勉強になったわ。どうもありがとね」
「き、貴様! 言わせておけば調子に乗りおって……!」
露骨な挑発にバンダナの顔面が冗談みたいに真っ赤になった。怒りの余り、右手に持ったバトルアックスがぶるぶると震えている。
「そこを退け! これ以上邪魔をするのであれば、女といえ容赦はせんぞ!」
「上等。やれるモノならやってみなさい。全員灰にしてあげる」
掲げられた右手に炎が点る。術者の心理状況を映し出すように、炎は真っ赤に燃え盛っている。
「私も手伝うよー」
炎の魔女の横から青髪の少女が顔を覗かせる。両手に握った杖をくるんと回転させる。すると彼女の周りに拳大の水塊がいくつも出現した。水球は緩やかな曲線を描き、水使いの周囲を旋回している。
「手加減はせん! 我を侮辱した罪、その身を持って償うがいい!」
真横に振るわれたバトルアックスが壁に打ちつけられる。硬質な金属音がして、青白い火花が散った。
突撃命令を下す為、そのままバトルアックスを頭上に掲げる。
「ちょ、待ってくださいよガゼルさん」
バンダナの横で待機していた短剣使いが慌てた声を出したのは、その斧がまさに振り下ろされんとした瞬間だった。
「なんだ!」
水を差された形になったバンダナの斧使いは、多分に苛立ちを含んだ声色で横を向いた。
「落ち着いてくださいガゼルさん。マズいですって。あれ赤箒と青箒ッスよ。セブンテイルに手を出すのはやばいッスよ」
その一言を合図に、二十人ばかりの集団がざわざわと騒がしくなる。あちらこちらで囁き声がする。
「おい。ヘキサの後ろにいるのって、あのリグレットじゃないか?」
「嘘、マジで? うわ、生で見たのはじめてだぜ」
「話が違うじゃないか。なんでセブンテイルの相手なんかしなくちゃならないんだよっ」
「……俺、パス」
「あ、こら逃げんじゃねーよっ」
「静かにせんか、貴様らッ!」
リーダの一喝で静かになるが、彼らの顔には不満が見て取れる。その不満をさっき短剣使いが代表して口にした。
「悪いことは言いません。今日のトコは引きましょう。ガゼルさんだってセブンテイルに面白半分でちょっかい出した連中が、どうなったか知らないわけじゃないでしょ?」
「むうっ」
「あの黒箒に目でもつけられたら、それこそポイント稼ぎどころじゃなくなりますよっ」
黒箒。その単語を聞いた途端、バンダナの態度が一変した。頭に冷や水をブチ撒かれた心境だった。一瞬にして激情が覚める。
「私のほうからもお願いします」
ふと見ると、リグレットがヘキサの前に歩みでていた。自分のほうを見るバンダナに、彼女は静かに言った。
「ヘキサは彼らをモンスターから助けただけです。PKをしようとしていたわけではありません」
「リグレット。なにを……」
口を開いたヘキサをリグレットが視線で制した。ここは私に任せてください。彼女の目がそう語っている。
「それは私たちが保証します。ですからこの場はどうか引いては頂けないでしょうか?」
「だが……だからと言って、そいつの罪が消えるわけでは――」
「どうしてもと言うなら私は今後、≪聖堂騎士団≫からの依頼は受けません。すべて跳ね除けさしてもらいます」
「な、なんだと……!?」
今度こそバンダナは目を見開いて驚愕した。彼にとってその言葉は、いままでで一番の衝撃をもたらした。
「それは困る。そんなことをされては我の立場がなくなってしまう!」
「でしたら引いてください。この通りです。どうかお願いします」
それがダメ押しだった。
深々と頭を下げる少女の姿に、バンダナは息を呑んだ。いつの間にか自分のほうが悪者になっている。部下たちの目も彼女に同情するモノに変わっていた。
しばしバンダナは渋面で葛藤していたが、ふいに肩の力を抜いた。振りかぶったままだった斧を地面に下ろす。
「……わかった。今回は引く」
「ありがとうございます」
「ただし今回だけだからな! 次に会ったときは容赦せんぞ! 必ず血祭りに上げてやる!」
白髪の少年を指差し捨て台詞を残すと、バンダナは部下たちに合図を送り、通路の向こう側に姿を消した。
その場にはヘキサたちだけが取り残された。辺りが静まり返る。
「災難でしたね」
嫌な沈黙を破ったのはリグレットだった。何事もなかったかのようにそう言うと、ヘキサを見やり苦笑した。
「気にしないほうがいいですよ。所詮、他人の戯言です」
「……なんでだよ」
腹の底から搾り出したような声だった。
「なんであんな連中にリグレットが頭を下げる必要があるんだっ。そんな必要ないだろ!?」
怒りで目の前が真っ赤になる。リグレットにではない。彼女にあんな行動をとらせてしまった自分自身に対してだ。彼女が頭を垂れる理由などない。断じてない。あるわけがない。
リグレットはヘキサどうしてそこまで怒っているのか理解できなかったようだ。困惑した表情で首を傾げる。
「ですが、ああでもしないと事態を収拾できなかったではないですか」
「余計なことするな! 頭を下げてくれなんて俺は頼んじゃ――」
「ヘキサ!」
ハズミの怒鳴り声にふと我に返る。
「俺は……」
いまなんと言った? いつも自分を助けてくれた大切な友人になんと言った?
後悔してもすでに遅い。時間は巻き戻らない。一度放ってしまった言葉を取り消すなど不可能なのだ。
「リグレット。ごめん。俺……」
「謝らないでください。わかっていますから」
だが、いつも無機質的な彼女の瞳は揺れていた。普通なら見逃してしまうような些細な変化だったが、ヘキサは見逃さなかった。
俯くヘキサ。罪悪感から彼女の顔を見れなかった。消えてしまい衝動に襲われた彼は、指を回してPTウインドを開く。
「……ごめん」
右のコマンド一覧から離脱をセレクト。視界に『PTから離脱しました』とメッセージが流れる。
メッセージを確認するやリグレットたちに背中を向け、その場から脱兎の如く駆け出した。背後から足音がするが、俊敏パラメータで勝るヘキサに追いつける者はいない。聞こえてくる足音が遠ざかっていく。
自分を呼ぶ声がしたが、ヘキサが振り返ることはなかった。
「そこまでする?」
徐々に遠ざかるヘキサの背中。次いで炸裂した白光に、足を止めたハズミが呆然とつぶやいた。彼女の言葉はリグレットとシルクの心境を代弁するモノでもあった。
転移の白結晶が放つ光が消えたとき、そこに白髪の少年の姿はどこにもなかった。今頃、セーブしてある街に転送されているのだろう。
貴重な転移の白結晶を使用してまで逃走を図ったヘキサに、ハズミは開いた口が塞がらない思いだった。薄々感づいてはいたが、どうやらマンイータの悪名と彼の性格とには、酷い隔たりがあるようだ。
「行っちゃたねー」
「どうやらそのようですね」
あくまでおっとりとした口調のシルクとは対照的に、心なしいつもよりも憮然とした表情をするリグレット。彼女は顔にかかった黒髪を片手で払うと周囲を見回した。
「仕方ありません。ヘキサのことは後日考えるとして、ここに留まっている理由もありませんし、出口まで行って今日は解散にしませんか?」
「……そうね。そうしようか」
ハズミは頭を押さえてため息を吐くと、「行きましょう」と二人に声をかけて歩きだした。出口へと戻りながらもヘキサのこともあり、三人の間に会話らしい会話はなかった。
黙々と足を前に出しながらも、ハズミの脳裏を過ぎっていたのは、去り際のヘキサの表情だった。凶悪なPKには似つかわしくない、泣きだす一歩手前のような情けない表情。
何故かその表情に酷い衝撃を受けた自分がいた。ひょっとして自分は、とんでもない勘違いをしていたのではないのだろうか。
白髪の少年との出逢いは唐突に。そのときの出来事が元で、いまのような関係になってしまったワケなのだが――否、言い訳はよそう。自分はムキになっていた。理由はよくわからない。体よくあしらわれたのがカンに障ったのか、あるいは彼の言動がある人物を連想させるからかもしれない。
なんにせよ、必要以上に敵対心を燃やしていたのは事実だ。思えばヘキサのほうから突っかかってきた記憶は一度もない。熱くなりすぎるのは自分の悪い癖である。直そうとは思っているのだが、生来の癖はそうそう直るモノではない。
「ちょっと気をつけなくちゃなぁ」
なにか言ったー? と振り返るシルクに「なんでもない」と答え、赤毛の少女はそう反省したのだった。