序章 始まりの終わり
何故だ!
吹き抜けの天蓋から差し込む陽光に照らされる蒼天宮の間にはしかし、次の瞬間、『彼』の絶叫が木霊した。
喉が裂けんばかり叫んでいるのは『彼』だけではなかった。
架空であるはずのこの世界で、ここまで数々の困難な状況を、命がけの戦いを共に乗り越えてきた仲間たち。
仲間たちの表情を彩るのは、恐怖であり、驚愕であり、そして絶望だった。
『彼』の眼前で、一人の少女膝から崩れ落ち、仰向けに倒れた。
美しい少女だ。
黒い長髪に黒い衣装。彼女の黒髪。その前髪の一房だけが、鮮やかな赤色に染め上げられている。
彼女の自慢の黒髪もしかし、末端からじょじょに輪郭を失い、光の粒子になって中空に解けていく。
髪だけではない。身体も同じだ。すでに半分以上が光に変わっている。
その光景をただひとりだけ、ぼんやりとした焦点の定まらない視線で見下ろす人影があった。
少女と同い年くらいの白髪の少年。
倒れている少女の前に立ち、声を荒げるわけでも取り乱す様子もなく、ただ立ち尽くす少年の右手には片手剣が握られている。
澄んだ水晶のような金属で造られた、流麗にして美麗な両刃の片手剣。――彼女を殺害した凶器。
――ッ!!
『彼』は彼女に駆け寄ろうとするがしかし、まるで正面に不可視の壁がそそり立っているかのように、それ以上一歩たりとも前に進む事が出来ない。
消えていく彼女を黙って見る事しかできない自分。やがて少女は完全に光の粒子に変わり、消えた。
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そのとき頭上から声が堕ちてきた。
無機質な声。それでいて、この世のすべてを嘲笑っているかのような声に、『彼』は決意する。
暗転する世界。
そして――