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第二章:転生<リィンカーネーション>

第二章:転生<リィンカーネーション>


 鹿島 黎。僕の名前で、生まれて十五年間、共に歩んできた半身のようなもの。

 身長は平気、顔も平凡、これと言った特技も無ければ、精通した趣味もない。生まれてこの方彼女なんて出来た試しも無いし、告白されたことも無い。

 「普通」が服を着て歩いている。というのが周りからの評価。学習発表会をすれば決まって「村人B」。Aですらない村人B。

 小学六年の学習発表会で何の劇をしたか思い出せないが、村人Bの役を仰せつかりセリフがたった一言「人柱かぁ……」だった。

 中学校に上がってからは、学習発表会は無くなり、村人Bの役を仰せつかる事は無くなったが、とにかく普通なのだ。

 テストは平均点、通知表の中身も平凡的。部活はこれといってやりたい事がなく、帰宅部。クラスで浮いてるわけでもなく、特別好かれているわけでもない。

 席も窓側なんていう勝ち組を引いた事も無ければ、最前列という苦行を強いられる席を引き当てたことも無い。


 普通。


 そんな僕は常日頃「普通じゃない」特別な事に憧れを抱いていた。

 それは小さい頃からの夢。普通じゃない、平凡じゃない、そんな夢。僕の中で唯一無二の「普通」とはかけ離れたもの。


 ――。


 ソレに憧れ、その普通じゃない者に成りたくて。

 でも普通だから、と自分で勝手に決めつけ、成れる筈が無いという答えに行き着いた。


 でも、だからこそ、憧れとして抱き続けた。何れ、平凡で、普通で、特筆すべき事がない僕でも、成れるのではないか、と。


 ――、に。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 僕、という存在をいつ認識できるようになったのか。

 正直言って、あまり覚えていない。いつの間にかソコに居たような気さえする。一番古い記憶と言えば、幼稚園の頃に遊具にイタズラをして、先生に怒られた事だ。

 

 そして一番新しい記憶といえば。


 眼前の涙でクシャクシャの顔の金髪に、青い瞳のイケメンである。年は二十代前半だろうか。

 そのイケメンの両手で抱かれているのが恐らくは「僕」だ。

 

 なんで恐らく、なのかは言うまでも無い。十五歳とは言え、二十歳そこらのお兄さんに抱かれ、簡単に持ち上がるほど子供じゃ――。


 何気なく。自分の身体を確認しようと視界を下に下げると。身体があった。

 一糸纏わぬ姿の、身体があった。っていうか、赤ちゃんだった。へその緒ついてるし。息子も見える。


 オーケー。僕。状況を整理しよう。

 右手。――、うん。動く。

 左手。――、うん。問題ない。

 右足。――、動かしにくいけど問題ない。

 左足。――、問題ない。

 息子。――、ちっさッ!


 眼前。イケメン未だに号泣中。

 

 ――、これはつまり、アレだ。生まれたての赤ちゃんになったくさい。

 うんうん。稀によくあるよ。うん。

 ちょっと、友達を助ける為に車に跳ねられて、目が覚めたら赤ちゃん。

 うん。稀によくあるよ。うん。


「ええええええああああああああああああああッ!?」

「おぉ、聞いたか!ナタリア!俺達の息子の産声だ!元気な男の子だぞ!」


 違げぇよ!そうじゃないよ!


 っていうか、僕は貴方の息子なんですね!いや、なんとなく解ってましたけども!ってことは僕の顔面補正値はそこそこ期待していいんですかね?!


「……、オズ。私にも、顔を見せて……」


 背後から女性の声が聞こえた。

 声色はどこか弱弱しい。ココまで来ると、解ってる。きっとこの声の主は母親で、期待してしまう。ココまでのイケメンが射止めた美女の存在を。

 イケメンが手で僕の身体を回すと、やがて一人の――、


「ヒぐッ?!」

「……ん?なんだ?暴れてたのが急に大人しくなったぞ?」


 ――老婆の前で止まり、老婆の歯抜けスマイルに小さく脈を打っていた僕のハートは確かに一瞬止まりかけた。


「……オズ?どうしたの?」

「ああいや、産婆のミュルカさんにも見てもらってたのさ」


 産婆かよッ!一瞬、引いたよ!自分の父親がドぎつい熟女趣味かと思ったよ!

 

「ハハハ、坊ちゃんはきっと私めを母親だと思ったのでしょう。産後の処置は、終わりましたでな。後は……」


 産婆のミュルカさんが差し出した布に巻かれ、完全に身動きが出来なくなる。

 

「オズ様、ナタリア様。おめでとうございます、はい。私めは外にて待機しておりますれば、何か御用の際はお声をおかけください」

「ありがとうございました、ミュルカさん。お陰さまでナタリアとの子を無事抱くことが出来ました……」

「いいえ、お二人がこの村にしてくれた事を考えれば、この程度苦にもなりえませんよ」


 そういいミュルカさんが一礼してから部屋から出て行く。

 そして僕は身動きが出来ないまま、再びイケメンの手によって宙を移動して、やがて一人の銀髪美女の前に降ろされ、そのまま美女の両手に抱かれる。

 

 絵画の世界から抜け出したかのような、人というよりも、女神に近い。そんな神々しさを感じさえするほどの美女。特徴的な紅い瞳にで見つめられると思わず姿勢を正してしまう。身動きできないけど。

 それにしても、さすがはイケメンである。顔面補正値によってココまでの美女を射止めるとは……。


「可愛い……。髪は私だね。目はぁ……残念。お父さんだね」


 そう言い美女、基い母に片手で抱かれたまま、反対の手でプニプニと頬を押される。

 

「残念ってなにさ。少なくとも俺は、自分の身体がこの子に出てるのが嬉しいよ」


 ベッドに腰掛けたイケメン、基い父に反対側の頬をプニプニと押される。

 

 しばらくそうやって玩具にされているうちに、自然と瞼が重くなり、徐々に意識が遠のいていく。

 完全に意識が闇に呑まれようとした時、無性に不安になり思わず両手が動き、近くにあった物を握り、その場から堕ちない様にと身体を支えるかのようにしっかりと握った。


 頬を突付いていた、両親の人差し指を。

 

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