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第一章:黎<レイ>

第一章:黎<レイ>


 雨。

 雨が止めどなく降り注ぎ、髪を、頬を、肩を、全身の濡らしていた。


「ガキ……お前の名は?」


 そんな中、一人の 眼前の赤と黒を基調にしたローブを羽織った男の低い声が届く。


「レイ……。貴方は?」

「今から死ぬ奴に、名を伝えて何の意味がある」


 声色からわかる。顔は見えずとも確実に笑っている。ゆっくりと右手を持ち上げ五指を開き、僕へと向けると、男の怒声が響く。 


「雷光よ!彼の者に降り注ぎ、大いなる災禍とかせ!<ライトニングアソート>!」


 眼前のローブの男が声を荒げ、己の魔法を口にする。

 ライトニングアソート。中級上位に位置する雷属性の破壊魔術。それを使えるという事は、かなり上位の魔術師である事を物語る。

 そしてそのまま勢いよく突き出された手のひらに魔法陣が展開される。

 

 そこまで来てやっと僕の頭の中に一つの文が浮かび辺り、その効果を理解する。

 

【ライトニングアソート:対象の頭上から無数の雷を降らせ対象を攻撃する雷属性の破壊魔術。中級上位魔術。詠唱説:<紫電よ。集いて駆けろ 彼の者を刺し穿て>。】


 ここまでなら良い。だが説明は続き、その内容は「いつも」ため息を禁じ得ない。


【※手のひらから放たれ直進する。自身にも同程度のダメージを与える。】


 ……。

 …………。

 …………………。


 いやいやいやいやいやいやいや。

 諸刃以外の何物でもないですよねッ?!なに同程度のダメージてッ!?それ別に使わなくても、あの人の魔法当たれば「同程度」のダメージは受けるんでしょ!?

 中級っていったらアレですよ?!「ちょっと当たり所悪かったら死んじゃいますねー」ってレベルですからね?!しかもそれの上位ですよ!?


 やだよー。こんなの使いたくないよー……。


 …………………。

 …………。

 ……。


 でも、たぶん。ココでアイツを倒してしまわないと、僕があの魔法を受けて生きていても確実に殺される気がする。

 それに中級魔術を使う魔術師を一発で仕留める程の威力のある魔術を僕は「まだ」覚えていない。

 だったら、どうする?


 確実に死ぬコース、もしくは下手したら死ぬコース。

 僕ならドッチを選ぶのだろうか。

 

 決まってる。一人の命じゃない。守らなくちゃいけない人が居る。だから、決まってる。


「死ねッ!」


 ローブの男の暴言を耳にして、最後の箍が僕の中で外れる。


「紫電よ。集いて駆けろ 彼の者を刺し穿て!<ライトニングアソート>」


 僕がローブの男に差し向けた右の手のひらから、幾重にも重なった紫電か駆け出し衝撃で後ろに吹き飛ぶ。

 結果、相手のライトニングアソートは無事回避でき、僕が立っていた位置に無数の落雷と共に穴を作る。

 そして僕の放った紫電は真っすぐと、ローブの男を捉え続け、やがて当たって爆ぜる。


「イッタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 ↑あ。はい。僕の悲鳴です。ええ。

 なんか僕のライトニングアソートくらったローブの男。小さく息を吐いたと思ったら、その場に倒れただけです。

 ピクリとも動かない所を見ると死んだか、気絶したかのどっちかでしょうけど。


 え、何この差は。なんかコッチの方が被害でかい気がする。


 パチパチと強めの静電気でも帯びているかのような音をたてる右手が焼け焦げたように熱い上に、後ろに吹き飛んだ時後頭部を地面にぶつけてそっちも痛い。

 もう泣きたい……。


 

 ――これが、僕にとって異世界での魔術戦闘。もっとも僕の魔術は劣化模倣<デグイミテーション>だった。


【イグドリア<破壊魔術の項>:紫電の書:一枚】

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