spring
掲載日:2016/04/07
…――――桜が舞い散る春。
この季節は、いつも胸が踊っていた。
真新しいランドセルを背負う小学生や、
着慣れないスーツ姿の社会人。
新しい生活。
新しい出逢い。
家を出てすぐのところにある桜並木に差し掛かり、ふと足を止める。
(瑛太・・・)
桜吹雪を見上げると…胸が締め付けられる。
『綺麗だよね』
『そうだな』
通学路に使っていたこの道で、毎年繰り返していた会話を思い出してしまうから。
――――春が好きだった。
新しい出逢いに、ワクワクした。
新しい世界に、ワクワクした。
でもそれは…瑛太が隣に居てくれたから。
『…萌恵…』
瑛太の声が聴こえた気がして、セーラー服のスカートを翻し振り返る。
だけど、瑛太の姿は…どこにもなかった。
(居るはず、ないのに…――――)
頭では理解しているはずなのに。
瑛太はもう、居ないって。
なのに振り返ってしまった私は。
心のどこかでは…まだ、信じられないでいるんだ。
――――私だけが高校生になって、この新しい制服に袖を通した。
いつも隣にいてくれた彼は、…もういない。
(会いたいよ…瑛太。)




