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本当は怖いネットカフェ(文責:役座)

この話はフィクションです。

ネットカフェ『ラビリンス』は俺(役座)らの組織の傘下にある。


ネットカフェ難民、社会に居場所をもたない彼らのような存在は俺らの恰好の餌食なんだ。

彼らが忽然として消え去ったとして、それに気が付くものがどれだけいる?悲しむものがいるだろうか?

蒸発後しばらくしてから、せいぜい失踪で片付けられて終わり。

家族は気不味さから自分らに会いたくないと察するか、自殺を怪しみつつも、放置するしかできることはない。


秘密裏に建造された地下室は、そこで寝泊まりするネットカフェ難民を捕らえて監禁するためのものだ。

ターゲットをあぶり出す基準は、目に見える部分では、独身らしい男性であり、深夜利用していること、近いうちに連日の利用実績があること、それから表からじゃ見えない部分では、筒抜けになったネットの閲覧履歴を調べて、職探しとエロで占められてたらゴー・サイン。


スタッフ用の小さな控え室でなく、そこのトイレも、個室も、貴賓室も、施された大規模な仕掛けによってみな例の地下室に通じている。

なんでも、その部屋には特別な処理機能とやらがあるらしい。

臓器をバラして売るのだといわれるが、下っ端の俺には詳しいところは知らされていないし、知る必要もない。

ただときどき与えられる法律スレスレの任務を遂行して、たんまり報酬をもらえば、俺は満足だ。


下っ端の仕事はそんなに多くない。

組織は任務を遂行するのに適材適所の様々な人材を求めているので、下っ端にはそれこそゴミ溜めみたいに、色んな人がいる。

それこそ自分がネットカフェ難民でもおかしくないような奴がネットカフェ難民を捕らえてたりする。

でも普通の会社員や、学生や、老人や、主婦も実は少なくない。

それで適していると判断された仕事を、仲介人を通じて斡旋されるが、俺たちはそれを拒否することもできる。

仕組みとしちゃ人材派遣業と何ら変わりないんだな。


それでもってさらに俺は、俺のフリーターの彼女真実をそこに派遣して働かせている。

フリーターなので学校にも通っていないし、親元からも、地元からも、この俺が切り離してやった。


そんな俺が何をやってるかって言うと、たまの任務を除いた生活としては、きわめてごく平凡な大学生で、おまけにサークルにまで入って学生生活を謳歌してきた。


だが俺と真実が、組織に命じられて追っていた家洲という男のついでに、そのサークルの後輩と、もうひとりそいつの友達を誘って、今回組からの報奨金を欲張ったのは、もうすぐ大学卒業を控えて内定の決まらない俺が、真実との結婚資金を稼ぐためのことだった。


一人暮らしで親元を離れており、彼女もおらず、卒業後職にあぶれるかもしれない二人の大学生は、いまや社会的にネットカフェ難民とそう大きくは変わらない存在であり、まあ一応同じ大学の身内とは言え、最後の仕事として自分にふさわしいと思ったんだ。


そんなこんなで、俺は真実との約束通りの時間に、『ラビリンス』のロビーへ向った。

地下室への監禁を成功させたら、その日は、真実は仕事を抜けられることになっており、その後は二人で休日を楽しむことになっていた。

それまで俺は客として、個室でネトゲをしていた。


俺が、地下室ですべての手筈を整えても良かったのだけど、彼女は、職員である自分の方が手際が良いし、動きやすいから、すべて任せてくれと強く主張した。

万が一のために麻酔銃の撃ち方もマスターして、ウィザード級の腕前にまで達しているらしい。

そうとなると、俺と後輩たちが落ち合ってしまうと、別れる口実が思いつかない。

一度あの地下室へ降りてから、トイレに行くと言って、一人だけ部屋を出るのは怪しい。

後輩たちに、一緒にネカフェで落ち合えない旨を事前に連絡することもできたのだが、ドタキャンを装って、待ち合わせ時刻の一時間前である午前九時にメールを寄越す予定だったところが、そのときおかしなことに、数時間前まで使っていたケータイを紛失してしまっていた。


嫌な予感を感じながらも、俺はロビーで真実と落ち合う約束の10時半までネトゲに励んだのだった。

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