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噂のネットカフェ(文責:俺)

この話はフィクションです。

「秋葉原電気街のどこかで超リアルな仮想世界を体験できる店があるらしい。」


そんな都市伝説がネット上で書かれるようになって、すでに久しい。

だが誰も半信半疑でそんな噂を信じちゃいなかったに違いない。


同じ大学のパソコンサークルの友人である背黒せくろとの会話でその話の続報を聞いたとき、俺は茶化してこういった。


「へー、お前そんな陰謀論みたいな話信じてたんだ。」


なんでも彼の信用できる筋からの情報によれば、その店はネットカフェで、政府直属の軍事関係機関で研究していた天才科学者が、退職後そこで知った機密情報とその才能のすべてを注ぎ込んで極秘に開発した最新の技術がそこでは体験できるらしい。

しかも望み通りにリアルな疑似体験ができるだけでなく、脳内の時間感覚をも麻痺させるので、その疑似世界では、あたかも転生したかのように色々な人生を何度でもやり直して楽しめるとのことだった。


マッド・サイエンティストって奴だ。話としてはそこそこ面白いが、俺はまだ話半分。


「転生って大袈裟じゃね?いくらリアルでもやっぱりゲームはゲームだろ。」


「いいや、それがさ。めっちゃリアルなんだって。そりゃもう、現実よりリアルらしいぜ。それでゲームの中の一ヶ月が、大体現実の一日くらいだって言うんだよ。1年間ネットの中で生活するとするじゃん?そうすればえーっと、30年分好きなことして遊べるというわけよ。」


「でも中毒みたいになって、元に戻って来られなくなるんじゃないか?」


「それがさ、そのネットカフェで何度か遊んだっていう先輩から直接聞いた話なんだよそれ。しかも俺誘われちゃってるの。」


「おい、マジかよ。大丈夫なのかそれ。マッド・サイエンティストの実験台にされたらどうすんだよ?」


俺は興奮して言った。

背黒はたしなめるようにこう答えた。


「ネットカフェと言っても、誰でもそれで遊べる訳じゃない。秘密でやってることだから、信用できるツテを通して紹介がないと絶対に取り合ってもらえないらしい。その先輩の友達っていうのが慶稲大学の優秀な人で、その人の親戚が例の天才科学者らしいんだ。ああ、実験台ね。たしかに俺もその心配がないわけじゃない。でも行ってみて話だけでも聞いてみる価値はあると思う。試しに今週の土曜日一緒に行ってみないか?」


「何でも…体験できるんだよな…?」


たちまち童貞の想像力は飛翔する。

当日までにやってみたいことを考えるだけは考えておかなくては。


納得できなきゃ話だけ聞いて帰るという条件で、俺は背黒に同意した。

彼がその場でメールして、その先輩も秋葉原のその店に来てくれることになった。



約束の土曜日が来た。

しかし先輩はその日姿を見せなかった。

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