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第3章 保護施設と、国民の義務

翌朝、タケルは柔らかい朝陽で目を覚ました。

奈良県立医科大学附属病院の個室は、広々としたスイートルームのようだった。

天井は淡く光るパネルで、自動で明るさを調整している。

ベッドはキングサイズのもの、家族三人で寝ていた。

タケルはガウンを着たままだったが、寝返りを打ったせいで前が大きくはだけ、胸板と腹筋が丸見えになっていた。

ヤマトはタケルの左腕枕でかわいらしいいびきをかいて寝ている。

ムサシは右腕にしがみつき、タケルの腹筋を小さな手で掴んでいる。

無邪気で密着した寝姿だ。


タケルはそっと二人の頭を撫でた。

「おはよう、ヤマト。ムサシ」

「パパ、おはよう……」とヤマトが目をこすりながら起き上がり甘える。

「パパ!朝だぞ!柔道の朝トレやる!」とムサシは跳ね起き、元気いっぱい。


「おはよう。よく寝れたか?」

タケルは笑って二人を抱き寄せた。


「うん!お姉さんたちが優しかったから、怖くなかったよ」ヤマトが頷く。

「俺、オヤツ貰っちゃった!」とムサシは得意げに自慢した。


ドアがスライドして開き、凛が入ってきた。

今日は白衣の下はオフィスカジュアルなジャケットにパンツスタイル。

それでも引き締まった体型が際立っている。

彼女はタケルのガウンがはだけている姿を見て、視線を一瞬逸らし、すぐに咳払いをした。


「タケルさん、おはようございます。

……ガウンの前がはだけていますよ。

男性の裸体は、この世界では非常にセンシティブなもので……ですが、

今はすぐに直してください」


凛の声は冷静だが、視線がタケルの胸板と腹筋に釘付けになっているのがわかる。

ものすごい熱を感じる。


「悪い……寝相が悪くて」

タケルは慌ててガウンを直した。


その瞬間、廊下から看護師二人が顔を覗かせ、ガウンを直すタケルを見て舌打ちをした。

「ちっ……もう少し見せてくれればよかったのに」

「せっかくの景色が……」


凛が即座に振り返り、

「セクハラ発言です。保護法違反ですよ」

と一喝した。

看護師たちは慌てて頭を下げて去っていった。


「朝から申し訳ありませんが、この世界について説明をさせてください。

お時間をいただけますでしょうか?」

と顔の表情をもとに戻した凛が俺を別室へと促した。


タケルは少し照れながら双子に

「パパ、ちょっと話があるから待っててくれ」と言って、凛について別室へ向かった。

別室は会議室のような部屋で、ホログラムテーブルが中央に置かれている。

凛は椅子を勧め、端末を展開した。


「まず、この世界で男性がしなければならないことをおさらいします。

1.男性保護端末の装着(任意ですが、非常に推奨。18歳未満は強制)

2.定期健康診断と遺伝子検査(年2回)。

3.精子提供の協力(任意ですが、非常に推奨)。

4.女性からの接近を拒否する権利の行使。

5.教育・就労は保護下で行う(男性は家庭優先)。」


タケルはリストを見て、すぐに質問した。

「精子提供……本気でやるのか?」


凛は真剣な顔で頷いた。

「この世界では人口ピラミッドを維持するために男性にご協力をいただいています。

そこまでしないと、子供を作る事の出来ない女性があふれかえるのです。

しかも一般男性の場合、着床率は約25%、男児出生率は約1%と厳しいものです。


しかし、タケルさんの場合は、これが異なる可能性が高いと考えています。

現にタケルさん、あなたの場合は『男の子の双子を持つ父親』です。

これはこの世界では限りなく事例がないことです。

そんな人の遺伝子は是非とも提供いただきたいと思っています。

男性保護局としてはぜひ協力をお願いしたいです」


タケルは少し黙った。

菜摘の顔が浮かぶ。

彼女がいなくなってから、他の女性に触れることすら引け目を感じていた。


でも、この世界では違う。

子供たちを守るため。


「……国民の義務だから、仕方ねぇな」

武尊は小さく息を吐いた。


凛は淡々と説明を続けた。

「提供方法は、男性が提供しやすいようにプライベート空間で実施します。

協力者としてカタログの中からご希望の女性を選択していただきます。

リラックスしたムードの個室で、マッサージを受けていただくことになります。

マッサージは機械でのマッサージも可能です。

男性の安全のためにサポートが1人入ります」


俺は内心で呟いた。

(なんだか抜き風俗店みたいだな……)

正直、この世界に来てから一番衝撃を受けたのは、この「遺伝子提供」の仕組みだった。

普通の男性目線から見れば、完全に「抜きサービス」だ。

個室でマッサージを受けながら、協力者の女性と……って。

俺は思わず口に出してしまった。


「俺の好みは、引き締まった体型の女性がタイプだ。

スポーツのユニフォームとか……ママさんバレーとかテニスをやってるご婦人とか、

年齢は俺の年齢的には30歳以上くらいで、実年齢より若く見える人。

そういうのもありなのかな?」

凛は一瞬、固まった。


目がわずかに見開かれ、頰がほんのり赤くなった。

でも、すぐにプロの表情に戻り、冷静に頷いた。

「……もちろん、そういったご希望もあります。

カタログから条件に合う協力者を優先的にご提案します。了解しました」

俺は内心で苦笑した。

でも、この世界ではこれが「普通のサービス」なんだ。

俺が風俗店みたいに思ってしまったのは、元の世界の常識のせいだ。


凛は俺の言葉を、ただの「好み」として受け止めた。

彼女は男性保護局の局員。

俺が求めた場合、拒否できない立場だ。

でも、彼女は彼女なりの利益があって動いている。

任務として割り切っているはずだ。



午後、施設内の専用ルームに移った。

部屋は清潔で、ベッドのような専用椅子とプライバシースクリーンがある。

凛は黒のスポーツブラトップとレギンス、アシスタントの女の子はテニスユニフォームで現れた。

二人とも、引き締まったボディラインが強調されている。

凛は少し照れながら言った。


「スポーツジムに行く予定で持ってきていたものなのですが……。

これでよろしいですか?」

武尊は二人の姿を見て、素直に頷いた。

「最高だ。これなら……やる気が出る」

凛は頰を赤らめながら、丁寧に説明した。

「たいていの男性は、機械で出してもらって終わることが多いのですが……

タケルさんはどういったサポートをご希望ですか?」

武尊は少し迷ったが、凛の目をまっすぐ見て言った。


「手で……頼めるか?」

凛は恥ずかしそうに頷き、ゆっくりと手を伸ばした。

彼女の手が武尊の下腹部に触れる。

彼女のぎこちない手の動きが、慣れていない感があって興奮した


武尊はマッサージを受けながら、凛の太ももに不可抗力で触れてしまった。

だが抵抗する様子はない。

(凛も興奮しているのかな?)


凛は嫌そうな表情をせず、むしろ少し息を弾ませた。

武尊は小さく呟いた。

「こういうのはルール違反なのかな……」

そう言って、凜を抱きしめる。

凛は首を振り、

「タケルさんなら……大丈夫です」


・・・約3時間ほどかけてじっくり楽しんだ。

いや、実に素晴らしい時間だった。

あの後、サポートの人も交えて、たっぷりさせて頂いた。


ちなみに口に出すのはこの世界ではルール違反らしい。

遺伝子を無駄にすることはできないそうだ。


武尊は終わった後、ベッドに横になりながら反省した。

(菜摘……ごめん。

でも、この世界じゃこれが普通なんだよな……)


部屋の外では、看護師たちが小声で囁き合っていた。

「やったんだ」

「やったんだ」

「やったんだ」

「やったんだ……♡」

凛は赤面しながら記録を取っていた。


「本日の採取量……過去最高クラスです。

タケルさん、ありがとうございます」

武尊は照れ笑いした。


「いや……こっちこそ。また頼むな」

凛は小さく頷いた。

「はい……また、よろしくお願いします」

そして、正直に言うと……

すごく楽しかった。


移送は夕方に行われた。

黒塗りの大型バンに乗り、奈良の街を抜けて明日香村へ。

窓はスモークガラスで、外からは見えない。


ヤマトは窓の外の景色を見て

「パパ、明日香村だ!でも……なんか違う?」としきりに首を傾げている。

「新しい家、どんなかな!」とムサシは興奮している。


到着したのは、古民家を改装した立派な施設だった。

瓦屋根、土壁、庭には小さな畑と石灯籠。

周囲は里山で、観光地らしい静けさがある。


でも、敷地の周りにフェンスと監視カメラ。

入り口には保護官の女性が2人立っていた。


凛が鍵を渡した。

「ここが当面の住まいです。古民家を改造した3LDKの1戸建てと、

20畳ほどの柔道道場に隣接する部屋にトレーニング機材を置いています。

タケルさまが希望した、マッサージスペースもご用意しました。

またヤマト君が希望したピアノ室も用意しています。

ご希望でしたらピアノ教師も手配させていただきます」


タケルは家の中を見回した。

畳の部屋、現代的なキッチン、子供部屋は二つ。

すべてが新品で、快適だ。


「ありがとう。……本当に全部、局がやってくれたのか」


凛は頷いた。

「はい。あなた方のような男3人の家族が放置されているなんてことがバレてしまったら、大騒動が発生します。

だからこそ、すぐにこの場所を確保しました。

あなた方が住んでいたと思われる場所の近くに、新しい家を用意した形です」


夕方、家族三人で庭に出た。

ヤマトは庭の草むらで昆虫を探し始め、ムサシは柔道の型を練習する。

タケルは縁側に座って二人を見守った。

里山の風が心地いい。


でも、フェンスの向こうから村の女性たちがちらちらと覗いているのが見えた。

「新しい家族が来たわよ……男3人だって!」

「双子だって……可愛いわね」


古民家型保護施設ができたことによって、明日香村の人達には男性が来たことがバレた。

この世界では男性が1/30いるので、珍しいとはいえ「騒ぎになるほど」ではない。

でも、噂はすぐに広がるだろう。

なにせこの村の人口は少ない。

この比率で言えば男は全員足しても100人いないだろう。

都会に男性が集まる傾向があるらしいから、もっと少ないかもしれない。


タケルは小さく笑った。

「これから、波乱がたくさん出てきそうだな」


ヤマトが虫かごを持って駆け寄ってきた。

「パパ!王様バッタいたよ!」

ムサシが拳を振り上げて「俺も見つけるぞ!」と叫ぶ。


タケルは二人を抱き上げた。

「よし、行こうぜ。新しい家で、新しい毎日を始めよう」


この世界は変だ。

でも、家族は家族だ。

「生きてるだけで丸儲け、だよな。」

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