第13章 子宝豊穣祭 ~男の子奉納パレードと未亡人バレ~
朝の陽射しが障子を柔らかく透かしていた。
俺は和室の畳に座って、俺は双子たちの姿を眺めていた。
ヤマトとムサシは早朝から騒がしく、
祭り用のハッピとふんどしを準備して鏡の前でくるくる回っている。
というのも朝早く、セキュ女の恵子さんが家にやってきて、
祭り用のハッピとふんどしを持ってきてくれたのだ。
いつもの優しい笑顔とともに
「タケルさん、おはようございます。
双子くんたちのハッピとふんどし、用意しましたよ。
男の子奉納パレードはハッピ姿で参加するのが伝統ですよ。」
と言って用意してくれたものだ。
ヤマトは淡い青地のハッピ、ムサシは鮮やかな赤地。
ふんどしは白くてシンプルな子どもサイズだが、少し大きめだ。
二人はまだ着替えておらず、
「パパ!ふんどしってどうやって締めるの?」
「山車に乗って太鼓叩くの、楽しみすぎる!」
と興奮を抑えきれない様子だった。
祭りを楽しみにしているヤマトとムサシを見ていると、胸の奥がじんわり温かくなる。
母親のいないこの子たちが、こんなに無邪気に楽しみにしている姿を見ると、
「この世界に来てよかった」と思ってしまう瞬間がある。
この世界の人々は、俺達に優しい。
それはたとえ下心があるとしても、 2人の笑顔を見ていると胸に熱い思いがこみあげてくる。
俺は朝の寝癖がついた髪のまま、
「よしよし、二人ともカッコいい服を用意してもらえたな。
公民館でみんなと一緒に着替えよう」と頭を撫でた。
男衆の着替えは、公民館が割り当てられているらしい。
焦る双子たちに押されるように動き始めた……
その時、遥さんが少し困った顔で話しかけてきた。
「実は……凛さんが今日来れないんです。
県の業務で急遽呼び戻されたそうで……」
俺は一瞬、胸がざわついた。
「そうですか……了解です」
とだけ返した。
割り切りだ。
それが俺たちの関係だ。
でも、凛さんがいない。
初めての多人数の祭りで、
俺一人で双子を守りながら、村の女性たちと向き合うことになる。
少しだけ、不安が胸をかすめた。
「できる限り、私と恵子さんでサポートさせていただきますが、
ご注意いただければと思います。」
神妙な顔でそう言われたが
(まあ、なんとかなるだろう)
と気楽に考えていた。
恵子さんは双子のハッピを持っていく準備を整えながら、
「ヤマトくん、ムサシくん、今日は山車に乗って太鼓叩くんでしょ?
6年生のお姉ちゃんたちに引っ張ってもらえるのよ。楽しみね」と優しく話しかける。
「うん!俺が一番前に立つ!」とムサシは胸を張り、
「みんなと一緒に練習したから、頑張るよ」
とヤマトは少し照れくさそうに答えた。
俺たちは5人で公民館へ向かった。
里山道を歩きながら、村の通りがすでに賑わっているのが見えた。
浴衣姿の女性たちがあちこちで立ち話をしており、
俺たちを見つけると、
「タケルさん!ヤマトくんにムサシくん!」
と少し離れたところから挨拶をしてくる。
俺は軽く会釈を返しながら、
(……みんな浴衣で綺麗だな……)
と内心で思う。
胸元が少し開いた浴衣、
裾が風に揺れる姿、
健康的に日に焼けた肌、
そして整った顔の女性が多い。
この世界の女性たちは、魅力的な女性が多いと感じた。
公民館に着くと、更衣室はすでに賑わっていた。
村の男性たちが数人、ハッピに着替えている。
その中で、ムサシはシュータくんを見つけると、
「シュータくん!」
と駆け寄った。
シュータくんも「ムサシくん!ヤマトくん!」
と笑顔で迎え、
3人の男の子たちがすぐに仲良くなる。
シュータくんを追いかけるように眼鏡をかけた細身の男性が穏やかな笑顔で近づいてきた。
「はじめまして、葛城 隆史です。
シュータの父です。
タケルさんですよね?」そう言って丁寧に挨拶をされた。
隆史さんは学者らしい知的な雰囲気で、
身長は165cmくらいの細身の体型。
ハッピを着てもどこか華奢さが際立っている。
まぁ、こっちの世界では筋肉質な男性より、こういった体系の男性が一般的だ。
俺は少し緊張しながら、
「はじめまして、柴原タケルです。
今日はよろしくお願いします」と頭を下げた。
「夏子から聞いてますよ、祭りを初めてですね
ふんどしは持ってこられましたか。
締め方、教えますから」
と言って隆史さんは俺たちを更衣室の奥に案内してくれた。
隆史さんはヤマトやムサシの面倒もみてくれている。
根っからの世話焼き体質なのかもしれない。
それとも同じと男としての仲間意識なのだろうか。
「みんなで着替えようか。
ふんどしはこうやって締めるんだよ」
と優しく手伝い始めた。
俺も隣で真似しながら締めていく。
布が肌に密着する感触が新鮮で、少し恥ずかしい。
隆史さんは子どもたちに優しく教えながら、
「ふんどしは締め方が大事だぞ。
きつすぎても緩すぎてもダメだからな」
と穏やかにアドバイスしては、適度にサポートしてくれる。
「ありがとう、おじさん!」とムサシが元気に返事をする。
ヤマトは、ふんどしを締めるので必死だ。
普段なら教えてあげるのだが、俺も初めてで苦戦している。
「タケルさんも初めてですか?慣れますよ」
と隆史さんは俺を見て、笑った。
なんとか見れるような形に履くことができて、俺はハッピを手に取った。
フィジークの選手だった頃、コンテストではステージ上で上半身裸が当たり前だった。
観客の何百という視線に晒されても平気だった俺にとって、
ハッピ一枚で胸と腹を晒すくらい、たいしたことじゃない。
着てきた服を脱いで、裸の上にそのまま羽織ろうとした。
すると、隆史さんが慌てて俺の腕を掴んだ。
「タケルさん、ちょっと待って!
インナーなしでそのまま羽織るのは……」
彼は眼鏡の奥で目を丸くし、少し焦った声で続けた。
「夏子さんから聞いてはいましたが、女性に対して不用心すぎます!!
男衆がそんな格好で外に出たら女の人に襲われますよ!
女の人にとって男性の『御中』と……つまり腹筋と、
『雄っぱい(おっぱい)』……つまり胸が、……魅力的なところなんですよ。」
と、恥ずかしそうにおなかに手を当てて言った。
俺はハッピを半分羽織ったまま、
「オナカ……?」
と聞き返した。
隆史さんは年下の後輩を諭すような、優しくて丁寧な口調で説明を始めた。
「ええ、『御中』と呼ばれるんです。
体の中心で、大きくなった男性器が指し示す場所……
ゆたかな時代はふくよかなお腹が好まれ、
貧しい時代は引き締まった腹筋が好まれます。
現代では運動不足の男性が多いから、
バキバキに割れた御中が一番魅力的とされています。
タケルさんのように、鍛えた体は特に……」
彼は俺の腹筋をチラッと見て、
少し照れくさそうに目を逸らした。
「2番目に魅力的なのは『雄っぱい』……大胸筋です。
抱きしめられた時に柔らかい方が良いので、
力が入っていない筋肉質な胸や、ふくよかな体型の柔らかい胸が好まれます。
昔の金太郎のぬいぐるみが前掛けを着用しているのは、
おなかと雄っぱいを隠している……という意味で理解されています」
俺は自分の胸板と腹筋を鏡で見て、
ようやく理解した。
(……つまり、この世界ではここが一番エロいってことか……)
この世界の常識を、 1つ知ることができた。
だが俺はインナーを持ってきていなかったので、
ここに来るときに着てきていたタンクトップを着たまま、ハッピを羽織った。
といっても肩と背中が大きく開いていて、
胸板の輪郭と腹筋がくっきり浮き出る。
隆史さんは少し安心した顔で、
「インナーを着てくれてよかったです。
タケルさんの体は……女性たちにとってかなり刺激的ですから……
好きな人にだけは見せるとか、
普段は恥ずかしいから隠すか……
それはタケルさんが決めていいと思います。
お祭り中に見せたい相手がいるなら、その人だけにわざと見せてもいいんですよ」
俺はハッピをもう一度羽織り直しながら、
「なるほど……セクシーって、そういうことなんですね」と呟いた。
フィジークのステージではただの「筋肉」だったものが、
ここでは「女性を喜ばせるための魅力」になる。
少し恥ずかしくもあり、
どこか面白くもあった。
隆史さんは俺の肩を軽く叩いて、
「慣れますよ。
最初はみんな戸惑いますから」と言った。
そして隆史さんがふと真剣な顔になった。
「タケルさん、夏祭りなのに、いつも一緒の女性は不参加?
彼女は夏の方では無いのですか?」と小声で言った。
「凛さんですか?違いますね。
ヤマトとムサシの母は亡くなってまして、私は未亡人ですね」
俺は淡々と答えた。
隆史さんは一瞬、目を丸くした。
「……そうだったのか。
夏の方も秋の方も不在……?
守ってくれる女性がいないなんて、男として可哀想すぎる……
女はなにしてるんだ?
すぐに誰か立候補すべきだろ……」
彼の言葉は本気で心配そうだった。
細身の体で眼鏡をかけ、
学者らしい穏やかな口調なのに、
その心配は男同士の共感として胸に響いた。
「割り切りで生きてますから」と俺は強がって答えたが、
内心では
(夏の方と秋の方がいないというのは、そこまでの事なのか……)
と改めて実感した。
更衣室を出た瞬間、
女性たちの視線が一気に集中するのを感じた。
俺は自分の姿を改めて意識した。
タンクトップ+ハッピの下に褌だけ。
この世界では、かなりセクシーな衣裳のようだ。
「すっごい!雄っぱいがタワンタワンだ!!」
「ハッピの下がタンクトップと言うのがすごい!!」
「裾からヘソがチラチラ見えてる!見せてるの!?」
と、女性たちがこっちを見てコソコソ話している。
彼女たちは隠れて見ているらしいが、丸見えだ。
(……みんな、俺のおなかとむねばっかり見てる……)
違和感が凄いが、この世界の常識を一つ学ぶことができた。
パレードの開始を告げる太鼓の音が響いた。
公民館の前から、3台の小さな山車がゆっくり動き出す。
村の中心通りを抜けて、神社の境内まで進むルートだ。
俺は隆史さんと見学側として、通りの両側に並ぶ人たちと一緒に待機。
隆史さんと2人で並んで立っていると周りの視線がさらに熱くなった。
「タケルさん、タンクトップが小さい……」
「御中がこんなに締まってる……」
「雄っぱいも立派……」
という囁きが聞こえてきて、俺は耳まで赤くなった。
隆史さんが隣で苦笑いしながら、
「タケルさん、女性たちの視線がすごいですね……慣れますよ」と言った。
「そうですね……」と俺は曖昧に返しながら、
内心では
(この世界、男性の体がこんなに注目されるなんて……
恥ずかしいけど……なんか悪い気はしない……)と、思った。
隆史さんが静かに説明してくれた。
「この『子宝豊穣祭』は、男児出生と子孫繁栄を祈る村の伝統行事です。
本来は山車での巡回が中心です。
男の子たちが山車の上に乗って演奏しながら村を回ることで、未来の男性を祝福するんです。
大人たちのメインは境内の子宝祈願の射的・輪投げですが、パレードこそが祭りの本質ですよ」
俺は頷きながら、
「なるほど……子どもたちが中心なんだな」と呟いた。
隆史さんは穏やかに、
「ええ。
子どもたちが山車に乗って演奏するのは、村全体で守護する意味があります。
女性たちはそれを見て、未来の男性に母性を注ぐんです」
パレードが始まった。
山車の上には、
ヤマト、ムサシ、シュータくんたちを含む小学校の8人の男の子たちが乗っている。
みんな浴衣姿で、和太鼓を叩いたり、鼓笛を吹いたりしながら進む。
子どもらしい可愛らしい演奏が、村の通りを響き渡る。
パレードの進みに合わせて、大人達も一緒について歩く。
山車を引くのは、小学校の高学年の女の子たち。
初潮を迎えた子限定で、5・6年生の半分以上が参加している。
彼女たちは浴衣で一生懸命に引っ張り、
胸を張って「一人前に扱われる」誇らしさを見せている。
裾が少し捲れ上がったり胸元が開いたりする姿に、
俺は視線を逸らしつつも、
(……子どもたちが楽しそうでよかった……
でも、女の子たちの浴衣姿も……)
と複雑な気持ちになった。
隆史さんが隣で、
「シュータくん、頑張ってるな……」と呟いた。
俺は頷きながら、
「ヤマトとムサシも、初めての舞台なのに堂々としてます。」と答えた。
ムサシは一番前の山車に乗って、太鼓を力強く叩いている。
ヤマトは少し緊張した顔で笛を吹きながら、時々俺の方を見て手を振ってくる。
俺は手を振り返しながら、胸が熱くなった。
「子供たちを守らなきゃ」
という思いが、さらに強くなった。
女性たちは両側から手を伸ばし、
「可愛い〜♡」
「将来は素敵な男性になるわね!」
と声をかけている。
男の子たちは無邪気に笑顔で応え、
村全体が温かい空気に包まれていた。
俺は隆史さんと並んで見学しながら、
(この祭り……ヤマトとムサシがこんなに喜んでるなら参加してよかった)と思った。
だが、女性たちの視線が俺の御中と雄っぱいに集中しているのを感じて、顔が熱くなった。
(……タンクトップが小さいせいか……みんな、俺の体ばっかり見てる……)
恥ずかしさと興奮が混ざって、俺は少し混乱していた。
隆史さんがおなかを指さして苦笑いしながら、
「タケルさん、女性たちはこれを見て喜ぶんです。
御中と雄っぱいが丸見えだと、特に熟女層は興奮しますからね……」と言った。
俺は「そうですね……」
と曖昧に返しながら、
(もとの世界で、こんな風に女性は思っていたのかな……)
と思った。
パレードは神社の境内に向かって進み、
村全体が熱気に包まれていた。




