「エピローグ③」
フテイキコウシンデス。
<エピローグ③>
簡単に言うと私は泥棒だ。「嘘つきは泥棒の始まり」なんて意味のわからない言葉が今の日本にはあるものだが、俺は泥棒をする前から嘘をついたことはない。つまり当てにならないのだ。そして、俺は今泥棒をするためにここに来ている。下田の家だ。これから金目の物だけを奪った後、跡形もなくこの場を去る予定だった。知り合いの家に強盗をするのは少し気が重いが、バレなければその後も友好関係を築いていく──予定だったのだ。
「死んでいる」
下田は浴室で死んでいた。自然と恐怖が増していく。なぜ?なぜ殺されたのだ?誰に?どうやって?頭のどこかに穴が空いて、自然と空気が抜けていく感覚を覚えた。
しばらくして、それはチャンスだと思った。死んでいれば警察は死体に目をやり、奪われた金など見向きもしない。これは天からのプレゼントだ。そう思った。そして浴室を後にしようとした時、後ろから声が聞こえた。聞き覚えのある声だった。下田の声だ。
「斉藤君か。助けに来てくれたのか。ごめんな。こんな状態で」俺は斉藤でもなんでもない。しかも助けに来てすらいない。泥棒をしに来たのだ。まだ名前も覚えていないのか。このクソジジイが!クソ!クソ!
◇
気づけば下田の体から血が流れていた。俺が刺したのだ。何度も何度も。よろしいことに下田は悲鳴も何も挙げなかった。もう声を上げる気力すらなかったのだろう。
気が済むまで体を刺してから、下田の家を去ろうとした。が、その前にとてつもない脱力感に襲われた。スポーツ選手が金メダルを獲得して「やりきった」と脱力する感じでも、リラックスしたわけでもない。死体が気持ち悪かったのだ。赤の他人だったらこんなにも気持ち悪く覚えることはなかったのだろう。
下田は死んだ。死んでいる。俺が殺したのだ。




