「エピローグ②」
不定期更新ですぅぅぅ。
<エピローグ>
アメリカ大統領だったリンカーンはこういった名言を残している。
「君が転んだことに興味はない。君がどう立ち上がったかには関心がある」
それで言うと私は今盛大に転んだところだ。それも頭まで打って頭蓋骨骨折ぐらいなのだろう。「頭蓋骨骨折」といえば、目の前の死体だ。死んでるのだ。目の前で。私の担当の患者が。
こんなにも簡単に人の死に出会えるとは思っていもいなかった。死体には頭蓋骨を殴られた形跡がある。頭蓋骨だけ腫れていたのだ。一体誰がこんなことを──
◇
「鍵が空いている」
ちょうど十分前の私は定期的な家庭訪問で下田さんの家を訪ねていた。この下田さんは心臓が悪く、定期的に家庭訪問をしなくてはならない。私は訪問看護師なのだ。下田さんの心臓が悪化したのは、ちょうど2週間前。入院も考えたが下田さんは「家にいたい」と言い張るので、こうやって訪問看護をしていたのだ。
その下田さんが鍵を開けている──。いつもきっちり鍵を締めている下田さんが鍵を開けるとは考えにくい。何かあったのか──
そう思うと、もう私は下段の家に入っていた。
「下田さーん。いませんかー」声をかけながら歩き回る。返事はない。もしかしたら出かけたのかも知れない。そう思いたかった。
風呂場が僅かに明るくなっていることに気づいた。ここで、少し気づいてしまったのかもしれない。震える手で風呂場のドアを開けた。
下田さんは死んでいた。
◇
そして今に至る。私は怖くなった。風呂場のドアを開けた事期よりも何倍も何十倍も怖くなった。そして、その場で吐いていた。このゲロは分析されて私のものだと特定されないだろうか。そう思いもしたが、すぐに「そんな場合じゃない」と自分を叱責した。
なぜ怖くなって吐いているのか。なぜか──
簡単だ。下田さんは死だ。死んでいる。私が殺したのだから。




