第25話
リョウカが執務室に入ってきた瞬間、
アキトは、違和感を覚えた。
姿勢も、歩調も、変わらない。
だが、報告に入るまでの間が、
わずかに長い。
「……ご報告がございます」
「食料が尽きました」
一瞬、意味が理解できなかった。
「……どういう意味だ」
「飢饉です」
短く、はっきりと。
「昨日は、生産量は増加した。植える心配はないと言っていたよね」
「はい」
「理由は」
「現時点では特定できておりません」
即答ではなかった。
「急に起きる事態じゃない。兆候があったはずだ」
一拍。
「……ありました」
「なぜ、報告がなかった」
問いは、低く抑えられていた。
「報告したとおり、前年同期比では全体の生産量は大幅な増加傾向にありました。ですが、この2ヶ月、生産量が減り始めたのです。収穫の時期による偏りを疑いましたが、ここ数年の統計と比べると減るべき時期はこの2ヶ月ではありません。そのため、配給の偏りと判断しました」
「記録上の不整合も含め、
調査で解消可能な範囲だと考えました」
「ですが、それだけでは説明がつかず、
事態が想定以上に進行していることが判明しました」
そこで、言葉が止まる。
「……判断が遅れました。責任は私にあります。
事態の収拾が済み次第、処分については、どのようにも」
深く、頭を下げる。
沈黙。
アキトは、ゆっくりと息を吐いた。
「……もういい。今後は、途中経過でもいい
何かあれば、すぐに報告してほしい。一人で抱え込まないでほしい」
リョウカは、顔を上げる。
「……承知しました。以後、そのようにいたします」
形式通りの返答。
間合いにまた違和感を感じたが、
アキトは、それ以上踏み込まなかった。
今、問題なのは彼女ではない。
「現地を確認しよう。一刻も早く」
人が死ぬ前に。




