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第19話

宮殿の外に出ると、昼間とはまるで違う空気が流れていた。

一日の終わりを告げるように、低くなった太陽が庭園を照らしている。


草木は赤く染まり、石畳に伸びた影は、ゆっくりと形を変えていく。


アキトは、肩の力を抜いて息を吐いた。

「……やっと外に出られたな」


仕事終わり、という言葉がしっくり来る感覚だった。

ミオが先に歩きながら、振り返って口を開く。

「今日の会議、長かったよね。廊下で昼寝しそうになったわ」


「将軍の前だぞ」


「――っ、……なりました」


慌てて語尾だけ直す。

「いや、今さら直しても遅いだろ」


アキトが小さく突っ込むと、ミオは舌を出した。

「知ってるし!条件反射みたいなもんだから!」


サラが読んでいた報告書をパタンと閉じると、横で楽しそうに笑う。

「こんなにのんびりとできるのもほんま久しぶりな感じするわぁ」

アキトは、その言葉に頷いた。


失敗もあった。

判断を誤ったかもしれない場面もある。


それでも、今日を迎えられた。


誰に向けるでもなく、アキトは呟く。

「失敗も、これから先、いくらでもすると思う」


サラがくすっと笑う。


アキトは、ゆっくりと周囲を見渡した。


ミオ。

サラ。

リョウカ。

ミサキ。

そして、レイジ兄さん。


「みんながいれば、なんとかなる気がする」

ミオが即答する。

「なるなる。気がするじゃなくて、なる」

「根拠は?」

「ない!」


サラが笑う。

「一番信用ならないのに、みょうに説得力はあるわぁ」


夕日が、さらに低くなる。

宮殿へ戻る途中、本当に何気なく。

アキトは口を開いた。

「……そういえばさこの前、視察に行った村、村長のキタハラさん元気にしてるかな」


ほんの雑談だった。

ミオ。

「元気じゃね」

とぶっきらぼうに。


リョウカ。

「元気です」

短く、正確に。


サラ。

「元気よ」

軽く、含みを持たせて。


ミサキ。

「……元気かと」

小さく、控えめに。


アキトは、少し安心したように息を吐いた。

会った時はだいぶ疲れている様子だった。

実は心配していたのだ。


それで、話は終わった。

太陽は沈み、庭園には長い影だけが残った。

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