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帰りを待つ側

第四十五話

帰りを待つ側


屋敷の修繕は、

いつの間にか“日課”になっていた。


朝になると、

どこかが壊れ、

どこかが組み上がる。


戦いに出ていく者がいて、

戻ってこない者もいる。


それでも、

拠点は止まらない。


屋敷の中庭で、

僕は設計図を広げていた。


石畳の上に直接、だ。


「……ここ、支柱一本増やした方がいいかな」


独り言のつもりだった。


「せやろ?」


返事が返ってきた。


顔を上げると、

フルル族が一体、しゃがみ込んで覗き込んでいる。


「前のヤツはな」

「もう戦場や」

「今頃、空で騒いどるわ」


何でもない調子で言う。


「その代わりや」


フルル族は立ち上がり、

ぐるっと周囲を見渡す。


「こっちはこっちで――」


大きく息を吸って、


「また面白いこと始めよんでー!!」


叫んだ。


一瞬で、

空気が変わる。


「なになに?」

「今度は何壊すんだ?」

「将の部屋か?」


魔族たちが集まってくる。


騒ぎを聞きつけて、

フェッロ族の男も腕を組んで現れた。


「……また人間の頭脳ショーか」


「ショーちゃうで!」


フルル族が即ツッコむ。


「実演や!」

「賢さの実演!」


「嫌な響きだな」


フェッロ男は鼻で笑った。


「コイツが考えて、俺たちが動く」

「役割分担としては悪くない」


視線が、

自然と僕に集まる。


居心地は、

正直よくない。


でも、

誰も悪意はない。


純粋に、

暇なのだ。


「で?」


フルル族が肩を組んでくる。


「今日は何ができるん?」

「壁? 床? それとも将の趣味部屋?」


「……梁です」


「地味やな!」


笑いが起きる。


それでも、

魔族たちは離れない。


僕が線を引くたび、

誰かが運び、

誰かが組む。


壊れない前提の建築。


人間の知識が、

魔族の力で実現していく。


やがて――

騒ぎが一段落した頃。


少し離れた場所で、

翼将とフェッロ族の女が並んで腰を下ろしていた。


「……あんなに楽しそうな姿見せられたらさ」

「ちょっと妬けるわね」


翼将が間髪入れず。


「でしょ?」

「なんかさ、気づいたら輪の真ん中にいるんだよね」


フェッロ族の女が肩をすくめて笑い。


「本人は必死なのに」

「周りはお祭り気分」


「ずるいわよ、あれ」


翼将は得意げに。


「あたしの家だもん」

「楽しくならない方がおかしいじゃん」


フェッロ族の女は少しだけ視線を逸らして。


「……本当に楽しそうで」

「だから余計に、ね」


「人が集まる場所って、ああなるのよ」


「でしょ?」


翼将は機嫌がいい。


「静かすぎる拠点とか無理」

「退屈で死ぬ」


「死なないでしょ」


「気分が死ぬ!」


フェッロ女はくすっと笑う。


「で?」

「今後の展望は?」


「んー」


翼将は指をくるくる回す。


「人間の領域をさ」

「ちょっとずつ奪って」


「気に入ったもの集めて」


「面白いもの増やして」


「拠点、増やす!」


フェッロ女は深く息を吐いた。


「……相変わらずね」

「計画性ゼロ」


「感性100%!」


翼将は胸を張る。


「それで回ってるのが問題なのよ」


フェッロ女は肩をすくめて、


「でもまあ」

「だからこそ、合う奴らが残るわけね」


その言葉に、

翼将は一瞬だけ黙った。


「……なにそれ」


「褒めてる」


「急にやめて!」


顔を逸らす。


羽が少し、揺れた。


遠くで、

フルル族の笑い声が響く。


屋敷はまだ未完成だ。


でも、

確かにここは――


生きている。

つづく

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