第四章:ウェストポートの決戦 中編
満月の夜まで、あと一日。
明日の夜、魔物の大群が来る。
「緊張してますか?」
エリシアが、聞いた。
「...めちゃくちゃ、してます」
正直に答えた。
「でも、やるしかないですよね」
「はい」
エリシアは、微笑んだ。
「私、楽間さんを信じてます」
「...俺も、エリシアを信じてます」
二人で、町の城壁に登った。
そこから、西の森が見える。
「あそこに...魔物が」
「三百匹...」
想像もつかない数だ。
「楽間さん」
エリシアが、俺の手を握った。
「怖いですか?」
「...怖いです」
「私も、です」
エリシアは、俺を見た。
「でも、楽間さんと一緒なら...大丈夫な気がします」
「俺も、同じです」
俺は、エリシアの手を握り返した。
温かかった。
「明日、頑張りましょう」
「はい」
二人で、月を見上げた。
明日は、満月。
運命の夜。
満月の夜。
ついに、その時が来た。
俺とエリシアは、町の門の前に立っていた。
自警団の五十人も、配置についている。
弓を構える者、槍を持つ者。
みんな、緊張した顔をしていた。
「来るぞ...」
ガルドが、呟いた。
西の森から、地響きがする。
ドドドドド...
「...始まります」
エリシアが、小さく言った。
俺は、ラケットを握った。
手が、震えている。
でも——
「大丈夫」
自分に言い聞かせた。
「俺は、戦える」
森が、揺れた。
そして——
「ギャアアアア!」
「グオオオオ!」
「ブギイイイ!」
魔物の大群が、姿を現した。
ゴブリン、オーク、ウルフ、リザードマン——
あらゆる種類の魔物が、波のように押し寄せてくる。
「うわ...」
自警団の誰かが、呟いた。
「多すぎる...」
確かに、多かった。
三百匹——いや、もっといるかもしれない。
「落ち着け!」
ガルドが、叫んだ。
「作戦通りだ!楽間が防ぐ!俺たちは攻撃する!」
「おう!」
団員たちが、声を上げた。
魔物の群れが、町に向かって突進してくる。
バリケードと罠のおかげで、魔物は門に集中する。
でも、それでも——
数十匹が、一度に門に殺到した。
「来ます!」
俺は、門の前に立った。
「カット!」
最初の魔物の攻撃を、受け流す。
「カット!」
「カット!」
次々と襲ってくる攻撃を、全て受け流す。
腕が、痺れてくる。
でも——
「弓、放て!」
ガルドの号令。
矢が、雨のように降り注ぐ。
門の前の魔物たちに、命中する。
「ギャア!」
「グオオ!」
魔物たちが、次々と倒れる。
「いいぞ!続けろ!」
自警団が、攻撃を続ける。
俺は、ひたすら「カット」で攻撃を受け流し続けた。
「カット!」
「カット!」
「カット!」
腕が限界に近づいている。
でも、止まれない。
「楽間さん!」
エリシアの声。
回復魔法が、体を包む。
疲労が、少し和らいだ。
「ありがとう!」
叫んで、また「カット」を続ける。
時間の感覚が、なくなった。
ただ、ひたすら——
受け流す、受け流す、受け流す。
「第一波、撃退!」
ガルドの声で、我に返った。
見ると、門の前には魔物の死骸が山積みになっていた。
「...何匹、倒しました?」
「五十匹くらいだ!」
ガルドが、答えた。
「すごいぞ、楽間!お前の作戦、成功だ!」
「でも...まだ、二百五十匹います」
エリシアが、冷静に言った。
「そうだな...」
ガルドは、団員たちを見た。
「休憩は短くするぞ!次が来る!」
「おう!」
俺は、ラケットを見た。
まだ、大丈夫だ。
まだ、戦える。
エリシアが、微笑んだ。
「英雄だって」
「英雄なんて...」
「違います」
エリシアは、真剣な顔で言った。
「楽間さんは、英雄です。この町を、一人で守ったんですから」




