プロローグ
リバーサイド・セブンのことを聞いたことはあるだろうか?
懐かしき英雄たちの話。大崩蝕とか大嵐とか、ドライヴが現れた頃の話だ。
政府公式の声明によると、この組織は既に存在しない。
たった七人から始まった集団だったが、全員がすごい奴だった。
その後人数が増えていって、最終的には百人ほどになったが……とにかく、彼らはまさしく生きる伝説だった。
偵察隊を組んで、ドライヴの領域から生存者を見つけては都市に連れ帰ったり、国内の盗賊や叛乱因子だけでなくドライヴまで狩っていた。
建設中の国境防壁に押し寄せたドライヴに、数え切れないほどの市民と防衛軍がやられてしまった、ナインベース防衛戦。侵攻したドライヴに対する反攻作戦トリトムニアでは、リバーサイドがいなければ、きっと全滅していただろう。
でもそういうのは全部、英雄たちに関する輝かしい記事の見出しに過ぎない。
重要なのは、彼らがその後どうなっていったのか、だと思う。
それがあることを思い出させてくれる。あまりにも当たり前すぎて、時々忘れてまうあのことを……。
今の生活があるのは、過去の激戦があったからだ。
そのことを彼らから学んだ……そう思う。
彼らがかつて生きた時代であり、今でもある話もしておこうか。
聖暦三十年。人類は『大崩蝕』と『大嵐』、二つの厄災を経て生存圏の四分の三を失った。
地上にはトライヴと呼ばれる怪物たちが跋扈し、生き残った人類はそのわずかな生存圏に防壁を立てて怯えながら暮らしている。
ここアーデント王国もその一つであり、昔は真珠海に面した美しい国だった。
今では防壁に囲まれ、慢性的な物資不足に悩まされている。民衆は貧困と恐怖にあえぎ、中央では王侯貴族たちが熾烈な権力争いをしている。
そんな不安定な中にある。
リバーサイド・セブン……(単にリバーサイドとも言うが)は今から十五年も前に活躍した傭兵集団だ。つまり、少し昔の話だよ。
少し前の話だというのに、なぜ誰も知らないのか。そこには理由がある。
だから真実を伝えるには、今の話が必要なんだ。
ここでひとつはっきりさせておきたいんだが、出来る限りありのままを話すつもりだが、少しは省略するかもしれない。
全部を詳細に話していたらノートが埋まってしまうから。
しかしこれだけは約束する、大事な部分は飛ばさない。
さてさて――。
いったい彼らは何を思い、どこへ向かったのか。
誰も知らない真実を語ろう。