『ころん通信』
コロンさま主催『アフォの祭典』参加作品です。
最近のネットミームとして、誰が名付けたものか『ころんちゃん』なるものが流行している。
一体どういったものなのかというと──
イラスト画像としては緑色の髪を頭上でお団子ヘアに結わえ、不敵な眼差しと微笑みを浮かべる女性。描かれるのは幼女からBB……老婆までのさまざまな年代の『ころんちゃん』。
このイラストを用いて、たくさんの動画も制作されている。詳細は多少は違えども、内容はほぼ一貫していた。
新月の午前零時。
スマートフォンから検索した『ころん通信』というサイトに困り事を書き込むと、その困り事を速やかに解決してくれるというもの。
実際に試して解決してもらった、などの体験談や感謝の言葉も大手の掲示板にはかなりの数が書き込まれている。ただし、その真偽は定かではない。
「半信半疑でしたが『ころんちゃん』に頼んだらソッコーで解決しました! ありがとうございます!」
「ウソだと思ったけどホントにサイトがあった!」
「もう諦めていたけどみつかった! ころんサンキュー!」
「ピタリと嫌がらせがやんだ! ころんちゃんに頼んでよかった!」などなど。
「そんなのあるわけないじゃん」
そのネット記事を読んでいたホタルは鼻を鳴らした。このホタル、相当に疑り深い性格をしている。
「解決するってだいたいどうやって? そこまでちゃんと書いてよね。じゃなきゃ信じられなーい」
しかし、このホタルは好奇心も強かった。
自分で試してみることにする。
新月の午前零時。
スマートフォンからサイトを検索してみると──
「『ころん通信』本当にあった……!」
「ん~、でも今は特に困っていることってないよね。どうしようかな~? そうだ!」
「えーと……。ホタルはネットで連載している小説がなかなか更新できません。なんとかしてください」
ホタルはネット小説を細々と描いていた。しかし筆が遅く、何ヵ月も更新が止まることもザラだったのだ。
「さあ、これでどうなるかな~?」
時計を見ると、午前12時12分。
「あ! 早く寝なくちゃ! 明日は新しいスニーカーをおろして神社とお寺巡りだもん」
翌日。
ホタルは一日中家にいた。
予定していた神社仏閣巡りには行かなかった。というか行けなかったのだ。
もともとひとりで行くつもりだった。誰にも迷惑はかけてはいないものの、ホタルは新しいスニーカーを前にして首をかしげていた。
「なんじゃこりゃ?」
おろしたてのスニーカーの中には、なみなみと泥水が入っていたのだ。
その日は滞っていたネット小説の連載を久々に更新したホタルであった。
ありがとうございました( *ˊ꒳ˋ* )
【追記】
コロンさまから可愛いイラストをいただきました。
ころんちゃん、優しい♡笑
ありがとうございます.(๓´͈꒳`͈๓).*




