表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユイの創造日誌 ~賢者の遺した世界で、少女は未来を紡ぐ~  作者: のほほん
第3章: 「継がれる灯火、試される刃」
43/51

第39話 聖獣の違和感、剥がれた仮面

第39話 剥がれた仮面


 十階層の扉の前──

 空間が霧に包まれ、銀の魔力が静かに揺れる。


「……ちょっと、待って」


 そう言って振り返ったのは、ルミだった。


 彼女は獣の姿から擬人化のまま、鋭い金の瞳でルーファスを見つめる。


「ルーファス。少し、話そうか」


 凛とした声が霧を切り裂く。

 ルーファスの耳が、びくりと揺れた。


「な、なんでしょうな……?」


「“第三者”って言ったよね。……でも、今になって思えばおかしいことばかりだった」


 ルミが淡々と語る。


「まず、魔物の配置が微妙に変化してた。単なる群体型なのに、こっちの動きに適応してた。進化も知性もないのに──“学んでた”みたいにね」


「そ、それは……偶然か、特殊個体の可能性も──」


「そして、霧。最初は地面から湧いてた。でも、何度目かには天井から流れてきた。重力の逆転がないと、あんな霧の流れは起きない」


「っ……」


「しかも。霧の流れを変えた座標が、“私たちが通るルートの直上”にだけ出現してた。誰かが、操作してたとしか思えない」


「……」


「でもね、それだけじゃない。極めつけは、“あなたしか通れなかった通路”。」


 ルミが、さらに一歩踏み出す。


「ユイも私も通れなかった。あれ、空間識別式で“通過権限”が指定されてた。つまり──“あなただけ通れるように”作られてたの」


 ルーファスの顔から血の気が引いた。


「で、でも、それは、たまたま……体型の差とか、霊波の違いとか……」


「言い訳が雑すぎる」


 静かに断じたルミの言葉に、ルーファスが小さく震える。


「私は、魔力痕も調べた。氷柱の根元に残ってた魔力──“あなたの波長とほぼ同じ”だった。……幻影の人影、あれも、あなたが出したものでしょ?」


「…………」


「最初は事故だった。それはわかる」


 その言葉に、ルーファスが顔を上げた。


「え……?」


「たぶん──階段を降りた時、転んで天井に魔力がぶつかったんだよね。あれ、空間魔法が暴発して、座標が固定された。結果、同じ階層に戻されるループが生まれた」


「……そ、それは……っ」


「でも。そこからが問題」


 ルミの声が冷え切っていく。


「“やばい”って思って誤魔化した。“第三者の仕業”だって嘘をついた。幻影まで出して、全部の辻褄を合わせて、自分が謎を解いたふりをした」


「……ご、ごめんなさいぃぃ……!」


 ルーファスが地面に崩れ落ち、頭を抱える。


「バレてないと思ったんですぅ……! ユイ様に褒められて、ちょっと調子に乗ってしまって……!」


 ユイが小さく眉を下げ、そっと言った。


「ルーファス……正直に話してくれて、ありがとう。でも、嘘をつくのはよくないよ?」


「うぅ……ユイ様の信頼が……!」


「信頼は、すぐには消えないよ。でも、壊れないわけでもないからね」


 静かな言葉に、ルーファスが泣きそうな顔で頷く。


 ──しかし。


「それで済むと思ってるの?」


 冷たい声が空気を裂く。


 擬人化したルミが、もう一歩踏み出した。


「……幻影。私に最大攻撃を撃たせたよね?」


「え、えっと、それは……未遂というか……」


「私の魔力、吸ったよね?」


「ひ、否定は……できませぬ……」


「じゃあ──“処罰、執行”」


 彼女の掌に、蒼白の魔力が奔流となって集う。


 複数の魔法陣が連鎖し、銀の氷刃が無数に宙を舞い始める。


 ――【氷牙・大輪舞グレイシャル・ワルツ


「ちょ、ちょっとルミ!? 本気モードは危な──」


「止めてた分、ぶつけるから」


「やめてぇぇぇぇぇ!!」


 爆風と氷槍が炸裂する。霧すら凍りつき、天井が一瞬青白く光った。


 ルーファスは氷漬けの像のように、冷たく白く凍りついた。


「うぅぅ……凍る……心まで凍りそうですぅ……」


 ユイは苦笑しながら、近づいてそっと手を当てる。


「……でも、無事でよかった。ほんとに、怒ってるわけじゃないからね」


「ゆ、ユイ様ああ……!」


 ルミは冷静なまま、指先で氷の破片を払う。


「次、また嘘をついたら。今度は、骨の髄まで凍らせるから」


「覚悟いたしましたぁ……!」


---


 霧の中。ようやく十階層の座標が安定し、空間の歪みが収まっていく。


「今度こそ、本当の……最深部、だね」


「ええ。ユイ様の成長の成果を、存分に発揮できる場所ですな」


「ルーファスは休んでなさい。私がついてく」


 頼もしく背中を押すルミに、ユイが小さく笑ってうなずいた。


 扉が、静かに開かれる──

 そして“霧氷の迷宮”最終幕の幕が上がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ