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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第十章〜龍の背中〜

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また一つの訃報

 それから二日後。


 かなたが日々届く物資の計上をしていると、屯所の入口の方から騒がしい声が聞こえてきた。


「? なんだろ……」


 気になって玄関の方へ足を運ぶと、隊士たちがわらわらと群がっているのが見える。

 その人だかりの先には、見覚えのある姿があった。


「斎藤さん!」


「……中村か。久しぶりだな」


 斎藤はそう言うが、彼とはつい最近会ったばかりだ。


 かなたは斎藤のもとへ駆け寄ると、他の隊士たちに聞こえないよう、そっと彼の耳元に顔を寄せた。


「……あの、もしかして……伊東さんの件ですか?」


 伊東の件といえば、史実では伊東が近藤暗殺を企み、それを察知した新選組が先に彼を粛清するはずだった。

 しかし、かなたが歴史を変えたことで、その流れは無くなっていた。


 それでも斎藤が堂々と屯所を訪ねてきたということは、伊東の身に何かあったのだろうか。

 そう思案していると、斎藤は言葉を濁すように目を逸らした。


「……まあ、そうだな。詳しい話は副長の部屋でしよう。お前も来い」


 そう言われ、かなたは斎藤を先に土方の部屋へ向かわせると、茶を用意してから後を追った。





――――





「失礼します」


 襖を開けると、火鉢を前に土方と斎藤は神妙な顔つきで座っていた。

 かなたは部屋へ入り、茶を二人に渡して恐る恐る口を開く。


「あの…それで…」


「ああ…」


 斎藤は茶を口に含むと、少しだけ目を伏せた。


「昨日、決起会を開いた御陵衛士は、その後の帰りに襲撃に合い……全滅した」


「……!」


 驚いて言葉が出ないかなたを前に、土方は腕を組むと深くため息をついた。


「伊東さんは元々、少し前から近藤さんの暗殺を企んでたようだ。だが、俺は斎藤に、暗殺計画をやめて、また一緒にこっちでやらねえかって、説得を頼んでたんだけどよ…」


 そう語る土方の目には、少し悔しさが滲んでいるようにも見える。


「あの…襲撃者は一体?」


 かなたの問いに、斎藤は少し悩むように目を細めた。


「確実とは言えないが、きっと幕府の関係者だと…俺は思っている」


 斎藤はその場に居合わせていなかったのか、憶測でしか語れない様子で、その言葉に土方もかなたも何も言えずにいた。


「仕方がねえ…よな…お前が無事でいてくれただけで、良かったぜ」


「痛み入ります」


 二人のやり取りを見ながら、かなたの脳裏には鈴木の顔が浮かぶ。


(鈴木さんは、知ってるのかな…)


 そんなかなたの心中を察したのか、斎藤がゆっくりとこちらへ顔を向けた。


「実は、ここに来る前に、鈴木にはもう報告したんだ」


「…そ、そうなんですか? あの、鈴木さんは、どんな感じでしたか?」


「結構、すんなり受け入れているような感じだったな。俺も少し驚いたんだが…」


「そうですか…」


 本当に大丈夫だろうか。どんなに仲違いをしても、血を分けた兄弟だ。切ってもきれぬ縁はある。


「行ってこいよ、鈴木の所へ」


「え…」


 そう告げる土方に、かなたは少し戸惑う。

 だが、土方はそんなかなたに困ったように眉を下げ、ふっと微笑んだ。


「気になるんだろ? 俺たちじゃ、あいつを励ますことなんて出来ねぇからな…行ってやってくれ」


「……わかりました」


 土方の気遣いに胸が締めつけられる。鈴木のことを思うと、目の奥がじわりと熱くなった。


 そしてかなたは、部屋を後にする前に、土方へと向き直る。


「あの…土方さん、一つお願いしてもいいですか?」

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