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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第十章〜龍の背中〜

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後悔

今回、2話投稿です!

「はぁっ…はあっ…」


 雨の中、びしょ濡れのまま、かなたと土方は駐屯所の入口で荒い息を整えていた。


 坂本たちと別れてから、途中で一度だけ強い衝撃を感じ、その直後に土方に担がれていた体を降ろされた。おそらく、あれは彼が屋根から飛び降りた衝撃だったのだろう。

 その後は土方に手を引かれ、ただがむしゃらに走り続けたので、帰ってくるまでの記憶は曖昧だった。


「副長に中村さん! 帰られてたんですね! …というより、びしょ濡れじゃないですか! 今、拭くものを持ってきます!」


 そう言い残し、慌ただしく駆け寄ってきてはすぐに去っていったのは、四条周辺を任せていた監察方の隊士だ。

 その気遣いに応える余裕もなく、かなたたちはただ下を向いたまま、雨に濡れた地面を見つめていた。


 しばらくの沈黙の後、かなたは息を整え、意を決して土方に向き直る。


「土方さんは、坂本さんを助けようとは思わなかったんですか…」


 口にした瞬間、その言葉が土方を責めるものだと気づき、胸の奥がチクリと痛む。

 悪いのは土方じゃない。それでも、そう聞かずにはいられなかった自分が、どうしようもなく惨めに思えた。


「…俺だって、助けられるものなら助けたかった」


「じゃあ何で…!」


「あいつが!! …あいつが、覚悟を決めてたからだ。それは俺たちには、どうしようも出来ないくらいの………士の覚悟だったからだ」


 そう言うと、地べたに腰を下ろしていた土方は立ち上がり、かなたを自分の胸へと引き寄せた。


「死ぬのは駄目だ。けど、避けられねぇこともある。ただ坂本は、その避けられねえことへの覚悟を持ってたんだ」


「………うぅ」


 かなたの目から、堪えきれずに涙が溢れ落ちる。

 土方の言う通りだ。坂本の目は、すでに覚悟を決めていた。それは、誰に何を言われても揺るぐことのない、芯の通った目だった。


 それを止められなかった悔しさ。どうすることも出来ない運命を前にした無力感。抗おうとしても届かなかった想いが、かなたの胸の中をぐちゃぐちゃに塗り潰していく。


 かなたはそのどうしようもない感情を、土方の胸に押し付けるようにして、声を上げながら泣き続けることしか出来なかった。

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