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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第十章〜龍の背中〜

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駐屯所

今週は短いお話続きます( ›‹ )

 慶応三年七月



「最近は、捕物とりものが多くなってきましたね」


「そうだな。薩長(さっちょう)の勢力も増してきてるし、近々騒動でも起こすかもしれねぇな」


 かなたと原田は並んで町筋を見回りながら歩いていた。彼らの後ろには、十番隊の隊士四名が続く。


 徳川慶喜公が征夷大将軍になってから以降、町の犯罪は目に見えて増えていた。

 捕まるのは尊攘派や勤王派の連中が多いが、その考え方も色々だ。幕府だけを敵視している者もいれば、関係のない町民にまで迷惑をかける者までいて、本当にたちが悪い。


「俺たちは町の人間のために、悪党を捕まえてはいるが...こうも薩長関係の捕物が続くと、新選組が賊軍扱いされかねねぇな」


「そうですよね...」


 戦に巻き込まれないために、幕府の傘下を抜けたというのに、そうなってしまえば本末転倒だ。


(それに備えても、考えなきゃならないな...)


 そう考えていると、原田がかなたの手元の京絵図(地図)に気づき、眉をひそめた。


「で、お前はさっきから何してんだ?」


 というのも、かなたは先程から町並みを見ては絵図に印を付けている。


「これはですね、良さそうな店や土地に印をつけていたんですよ」


「そんなこと見りゃわかる。"何で"印を付けてんのかって聞いてんだよ」


「ああ...」


 かなたは納得したように頷くと、他の隊士に聞こえないように原田の耳に顔を寄せた。


「何かあった時に、屯所から出動するのって遅いかなって思ったんです」


「まあ確かに、駆けつけた時にはもう遅かった、なんてことはよくある話だな」


「はい。それで、駐屯所ちゅうとんしょっていうのを作ろうと思って...」


 その言葉を聞いて、原田は首を傾げる。その反応を予想していたかなたは、ゴホンッと軽く咳払いをした。


「駐屯所っていうのは、簡単に言うと小さな屯所です。各地にそれ作って、そこに隊士を駐在させる...なので、駐屯所ってことです」


 現代で言えば交番のような役割になるだろう。これがあれば騒動にもすぐ対処できるし、土方の抱えている負担も軽くなるはずだ。


「なるほどねぇ。組織図も、かなり変わりそうだな」


「そうですね。それぞれに専属の事務方や監察方、そして代表となる組長も置いて...」


 とまあ、やることは山ほどある。

 変わるとやりにくいことも沢山あるが、隊士の皆にはどうにか乗り越えてもらうしかない。


 かなたは再び町へ視線を向け、携帯用の墨壺に筆先を浸すと、京絵図に新たな丸印を加えた。

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