駐屯所
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慶応三年七月
「最近は、捕物が多くなってきましたね」
「そうだな。薩長の勢力も増してきてるし、近々騒動でも起こすかもしれねぇな」
かなたと原田は並んで町筋を見回りながら歩いていた。彼らの後ろには、十番隊の隊士四名が続く。
徳川慶喜公が征夷大将軍になってから以降、町の犯罪は目に見えて増えていた。
捕まるのは尊攘派や勤王派の連中が多いが、その考え方も色々だ。幕府だけを敵視している者もいれば、関係のない町民にまで迷惑をかける者までいて、本当にたちが悪い。
「俺たちは町の人間のために、悪党を捕まえてはいるが...こうも薩長関係の捕物が続くと、新選組が賊軍扱いされかねねぇな」
「そうですよね...」
戦に巻き込まれないために、幕府の傘下を抜けたというのに、そうなってしまえば本末転倒だ。
(それに備えても、考えなきゃならないな...)
そう考えていると、原田がかなたの手元の京絵図に気づき、眉をひそめた。
「で、お前はさっきから何してんだ?」
というのも、かなたは先程から町並みを見ては絵図に印を付けている。
「これはですね、良さそうな店や土地に印をつけていたんですよ」
「そんなこと見りゃわかる。"何で"印を付けてんのかって聞いてんだよ」
「ああ...」
かなたは納得したように頷くと、他の隊士に聞こえないように原田の耳に顔を寄せた。
「何かあった時に、屯所から出動するのって遅いかなって思ったんです」
「まあ確かに、駆けつけた時にはもう遅かった、なんてことはよくある話だな」
「はい。それで、駐屯所っていうのを作ろうと思って...」
その言葉を聞いて、原田は首を傾げる。その反応を予想していたかなたは、ゴホンッと軽く咳払いをした。
「駐屯所っていうのは、簡単に言うと小さな屯所です。各地にそれ作って、そこに隊士を駐在させる...なので、駐屯所ってことです」
現代で言えば交番のような役割になるだろう。これがあれば騒動にもすぐ対処できるし、土方の抱えている負担も軽くなるはずだ。
「なるほどねぇ。組織図も、かなり変わりそうだな」
「そうですね。それぞれに専属の事務方や監察方、そして代表となる組長も置いて...」
とまあ、やることは山ほどある。
変わるとやりにくいことも沢山あるが、隊士の皆にはどうにか乗り越えてもらうしかない。
かなたは再び町へ視線を向け、携帯用の墨壺に筆先を浸すと、京絵図に新たな丸印を加えた。




