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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第九章〜しなければ迷わぬ恋の道〜

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酸味

 土方は湯呑みに入っているそれを見やる。沖田がかなたと一緒に買ってきてくれた大坂土産の、「れもねいど」という異国の飲み物らしい。

 びいどろ(ガラス)の入れ物から湯呑みに注ぐと、シュワシュワと音が鳴り、中ではパチパチと何かが弾けている。


「土方さん、飲まないんですか?」


 目の前にいる沖田は、いつもより少しだけ疲れたような顔でこちらを見つめていた。


「ああ、頂く」


 湯呑みを傾けた瞬間、土方は目を見開く。


「すっ....!」


 そして舌に来る酸味に、思わず顔をすぼめた。


「あはは。でも、美味しいでしょう?」


「...そうだな。喉に来るこの感覚はなんだ?」


「ああ、それはかなたさんによると、『たんさん』というものらしいです」


 異国には妙なものが多いのだな。

 土方はそう思いながら、少し落ち着かない様子で湯呑みを置き、腕を組んだ。


「まあ、その...二人が無事に帰って来れてよかった」


「ええ、何事もなくて良かったです」


「で、あの件はどうだったんだ?」


 きょとんと首を傾ける沖田に、土方はそっと耳打ちをする。


「その....初恋とかなんとか.....」


「あぁ〜......」


 沖田は納得したかのように相槌を打つと、白々しく目を泳がせた。


「あー、えーと...それはですねぇ....」


「なんだよ。早く言えよ」


 勿体ぶる沖田に、土方は眉をひそめる。


「あー...かなたさんに初恋の人は居ませんでした!」


「...そうなのか?」


「はい!えっとーなんていうか...はい!居ませんでした!」


 沖田は平然と嘘をつく。だが、これも仕方がない。初恋の人は土方でした、と話すとその後が色々とややこしくなる。土方が灰になって消えてしまえば、かなたも悲しむだろう。


「...そうか」


「は、はい...」


 ほっとしたような、どこか残念なような土方の表情に、沖田は少し複雑な気分になる。

 さすがに、嘘をついたままでは後味が悪いので、せめて二人の仲が少しでも進展するよう、ここは助言でもしておこう。


「そういえば、かなたさんが祇園祭に行ってみたいな〜なんてこと言ってしまたよ!」


「祇園祭?」


「はい!また、かなたさんからお話来るかもしれません!では、僕は巡察があるので!」


 失礼しますっ。と沖田は足早にその場から去っていった。


「なんだあいつ...」


 なにか様子がおかしいが、これ以上追求も出来ない。

 土方は湯呑みを傾けると、再び顔をすぼめた。

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