出会いと別れ
この章から、かなり大幅な歴史改変となっております。
ここまで読んでくださったのに、大幅改変が苦手な方いたらすみません(;_;)
ご注意くださいませ。
それから間もなくして、伊東甲子太郎率いる十名の隊士が、御陵衛士と名乗り、新選組を離れることになった。
史実では十五名ほどが抜けたが、かなたが新選組の改革を行ったことで、少し減ったようだ。
伊東は鈴木にひと睨み効かせると、清々しいほどの笑顔で屯所を後にした。
そしてその中には、斎藤一の姿もあった。
「...なぁ。なんで斎藤のことは止めなかったんだ?」
土方は、屯所の入口で伊東たちを見送っていた隊士たちの中にいたかなたへ声をかけた。
「平助のことは心配してただろ?」
つまり、かなたが藤堂のことは案じていたのに、斎藤は放っておいたのが不思議だ。と言いたいのだろう。
「それはですね...」
かなたは得意げに笑うと、人差し指を顔の横に添えた。
「土方さんの考えは、私には丸わかりだからです!」
「...そーかよ」
土方は納得がいかないのか、少し唇を尖らせた。
これから、新選組と御陵衛士の関係はどうなっていくのだろうか。歴史が変わってしまった今、かなたにもまだ分からない。
ただ今は、堂々と歩く彼らの背を見送るしかなかった。
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慶応二年十月
朝、かなたが屯所の廊下を雑巾がけしていると、近藤が嬉々とした様子で歩いてきた。
「近藤さん、おはようございます!」
「ああ、中村君。おはよう!」
何やら、とても上機嫌のようだ。
近藤の表情に"聞いてほしそう"な色が浮かんでいたので、かなたは口を開く。
「何かいい事でもあったんですか?」
「よくぞ、聞いてくれた!」
近藤は手に持っていた手紙のようなものを、ぱっとかなたの前に差し出した。
「実は今度、幕臣の警護をしてくれと依頼が来てだな!なんでも、謀反者の捕縛にあたる護衛らしいが...」
その言葉に、かなたの目が輝いた。
「もしかしてその、幕臣の人って...渋沢栄一ですか?!」
思わず、近藤との距離を詰めてしまう。
「あ、あぁ...名前は違ったが、苗字は確か渋沢だったか...」
かなたは腕を組み、真剣な顔で考え込んだ。
渋沢栄一というと、幕末では一橋家の家臣から幕臣へ、明治ではお金のルールたるものを作った人物だ。
今後のことを思えば、少しでも縁を持っておくに越したことはない。
「...中村君?急にどうしたんだ?」
近藤の声も聞こえぬまま、かなたの目はメラメラと燃えていた。




