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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第七章〜伊東派攻略〜

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かなた式

小話ですm(*_ _)m

「おい。俺にもあれ、教えてくれ」


 そう言って、土方は洗濯をしていたかなたの隣にしゃがみこみ、遠くにいる藤堂を指さした。

「あれ」とは、先日かなたが藤堂を町娘たちにモテさせるために、身だしなみを整えた一件だろう。


 まあ未来でも、土方は身だしなみには気を使っていたと逸話を聞いたことがあるので、さほど驚きはない。


「土方さんも、気になる女の子がいるって事ですか?」


 だが、そこだけは気になる。


「あ?違ぇよ。顔洗った時に肌が突っ張ったりすんだろ。それが嫌なんだよ」


 本当だろうか。少し疑いつつも、教えない理由もないので、かなたは手順などを紙に書き出して渡した。





ーーーー





 それから一ヶ月ほど経っただろうか。土方の髪の毛は絹糸のようにさらさらになり、肌はこの時代の男とは思えないほど艶々とし、唇に至っては誰もが思わず口付けしたくなるような、ふっくらとした仕上がりになっていた。


「おい、かなた。お前、責任取った方がいいんじゃねぇの」


「そうですよ。これは、かなり罪ですよ....」


 原田と沖田に呼ばれて屯所の入口に行くと、そこには女たちがわらわらと集まっていた。


「い、いや!私はやり方を教えただけですよ!」


「素直に教えたのが罪だったな」


「で、でも平助くんも同じやり方ですし....!」


「素材が違うと、こんなにも違うんですねぇ」


 その言葉は、藤堂の前では絶対言わないで欲しい。

 土方の姿が見えれば、女たちは黄色い声を上げる。それを見た原田と沖田は揃って口にする。


「いいなぁ〜」


 羨ましいなら自分たちもすればいいのに。新選組の中でも、かなりめんどくさがり屋の二人には「モテたい」より「面倒くさい」が勝ったのだろう。

 そんな中、土方がかなたのもとへやってきた。


「かなた、ここに居たのか。今から会津藩の藩邸に行く。お前も来い」


「あ、はい...!」


 にやにやと笑う原田と沖田を横目に、かなたは土方の後を追い屯所を後にした。





ーーーー





「なんか最近、外が騒がしいな」


 まさか土方は、この事態の原因をわかっていないのだろうか。かなたはじっとりとした目で彼を見上げる。


「土方さんのせいですよ」


「...なにがだよ」


(くっ、眩しい!)


 こちらを向いた土方の背後に、後光が差して見えた。

 イケメンは罪だな。そう思いながら歩いていると、小石に躓いてしまう。


「わっ」


「あぶねっ」


 思わぬ形で土方に肩を抱かれ、周囲から「きゃあ!」という声が上がった。


「土方さん....素敵です!」

「あの隣の子も、よく見たら可愛い顔してるじゃない?」

「やっぱりあの二人って.......」

「新選組にもそういうの、あるのかしら?」


 もしかして、男色なんしょくと勘違いされているのだろうか。新選組は男所帯なので、そう思われても仕方が無いといえば仕方がないが...土方はどう思うだろうか。

 かなたは咄嗟に土方から体を離した。


「す、すみません。ありがとうございます」


「おう。足、挫いてねぇか?」


「は、はい......」


 そんなやり取りにも目を輝かせている女子おなご達に、かなたは少し恥ずかしさを覚える。

 芸能人はいつもこんな感じなのだろうか。だとすると、自分には向いていない。


「そういえば、あの化粧水とかいったか?ヘチマ水のやつなんだが....」


 どうやら、かなたが作ったヘチマ水と米のとぎ汁の化粧水のことを言っているらしい。


「あれがもう無いんだ。また作ってくれねぇか?」


「......わかりました」


 と言っても既製品のヘチマ水に米のとぎ汁を入れるいたって簡単なものなのだが、まあいいだろう。

 そんな話をしているうちに、二人は会津藩の藩邸に到着した。


 かなたは小姓なので中に入ることは出来ない。

 いつものように外で暇をしていると、二人の女がそっと声をかけてきた。


「あ、あの....新選組の中村様でしょうか?」


「...ええ。そうですが、何か?」


 二人はもじもじと視線を合わせ、やがて意を決したように口を開いた。


「さ、先程、土方様との会話が耳に入ってしまったのですが、その....化粧水とは何のことかと思いまして....ヘチマ水という言葉も聞こえたので、もしかして白粉下地おしろいしたじのことかと思いまして...」


「もしかして、土方様はそれを使っておられるのでしょうか?だからあんなにお肌が綺麗で...!」


 なるほど、最近の"麗しい土方"の秘密が知りたいのだ。


「ええ、白粉下地で間違いないです。ただ、売られているヘチマ水に少しだけ米のとぎ汁も入れているんです」


「どうりで!土方様のお肌がすべすべなわけですね!」


 女たちは納得したように何度も頷く。


「とぎ汁の割合はいくらでしょうか?」


 まっすぐ見つめて質問してくる女子の積極的さに、勉強熱心だなと少し感心する。


「乾燥が気になるなら、ヘチマ水は三割、米のとぎ汁は七割くらいでしょうか。顔の油分が気になる方は、どちらも五分五分で良いかと思います」


「なるほど...!中村様はとてもお詳しいのですね!」


「そ、そうですかね?」


 少しやりすぎただろうか。まあ、これだけの知識で未来人と悟られることは無いだろう。


「ありがとうございました!早速試させていただきます!」


 そうして、女たちは礼を言って去っていった。



 それから数日後には京の町ではヘチマ水と米のとぎ汁を用いた、白粉下地が流行るようになった。

 屯所内でも美意識の高い男たちの間で使われるようになり、隊士達の間ではかなたの調合した物にはいつの間にか、「かなた式」と名付けられていた。

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