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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第六章〜日本の夜明け〜

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坂本龍馬

 あれからかなたは、新選組の資金援助を得るために協力してくれた坂本龍馬や西村屋と、親交を保つために手紙をやり取りするようになった。特に坂本とは、情報交換を兼ねた文のやり取りが増え、時折、彼独特の考え方を垣間見ることができた。


 怪我も快方に向かいつつあったが、土方が完全に治るまで何もするな、というのですることが無く暇を持て余していたかなたは、部屋の前の廊下からぼんやりと中庭を眺めていた。

 外では、相馬と野村がなにやら言い合いをしながら洗濯物を干している。


「だからこれは副長のふんどしだと言っているだろう!」


「いや!それは局長のだ!」


 正直、どちらでもいいのだが、土方は真面目なので褌なら自分で洗うだろう。それともかなたが女だから、洗わせるのを遠慮していたのだろうか。いずれにせよ、あの二人は見ていて飽きない。

 そんなことを考えていると、事務方の隊士がかなたのもとへやってきた。


「中村さん、手紙です」


「ありがとうございます」


 渡された手紙を見ると、差出人は坂本龍馬だった。今回はどんな内容かと思い、かなたは手紙をあけてみる。




 かなたへ


 どうぜよ、最近の新選組の様子は?

 おまんもまだまだ苦労しよるやろうが、まぁ、なんとか元気にしちゅうことを願うちょるぜよ。


 さて、こっちは相変わらず忙しいがよ。

 商人の連中や薩摩のもんと色々話をしちゅうところや。

 世の中はな、どんどん変わっちょる。

 武士が刀を振るうだけの時代は、もう終わりが近いがじゃないかと思うちゅう。


 戦がなくとも飯が食えて、人が自由に生きられる世の中。それを作るために、わしらは何をすべきか、考えねばならん。

 このまま幕府が続くか、世の中が新しくなるか、それはまだわからん。

 けんど、おまんも感じちゅうやろ?

 この時代が、大きく変わろうとしちゅうことを。

 まぁ、わしはわしで、自分のできることをやるだけぜよ。

 そっちも、無理せんようにな。


 ほいじゃあまた、報告まちゆうき。


 坂本龍馬





 いかにも坂本らしい考え方だ。かなたは笑みをこぼす。そしてふと、最後の文章に目を止めた。




 追伸

 日本の夜明けは近いぜよ。




「........それ、ここで言うの?」


 誰もが知っている名言に唖然とする。実際に本人が使う場面に出会うとは思わなかった。


 何はともあれ、坂本には次の時代が見えているようだ。

 かなたは手紙を握りしめながらその重みを噛み締めるように、前を向く。


「中村さん、これは局長の褌ですよね?!」


「いや、副長のですよね???」


 かなたがしんみりと奮起を誓ったところで、相馬と野村が褌を手に近づいてくる。

 どうやら、この騒がしさはまだまだ楽しめそうだ。

この坂本龍馬の名台詞は「鞍馬天狗」という時代劇ドラマで言われたもので、実際に坂本龍馬が言った訳ではありません。けれど私が思う龍馬はこの言葉を口にしていそうな、日本の未来を想う志士、そんな人物像です。

歴史をよく知らない方でも馴染みのある言葉だと思い、使わせて頂きました。

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