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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第五章〜暦の彩り〜

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気付いた想い

 かなたとの降誕祭から数日後、土方は少し苛立っていた。理由はただ一つ。かなたが、自分の贈った組紐と揃いの髪紐を、まだ使っていなかったからだ。土方は、かなたが一人になるのを見計らって声をかける。


「おい、かなた。あの髪紐つけてねぇじゃねえか」


「え!だ、だって付けたらみんなにお揃いだって思われますし.....!」


「いいから付けろよ。なんか言われたらたまたまだって言っときゃいいんだよ」


「えぇ!」


 なぜ土方がそこまで執着するのか、かなたには分からなかった。自分の小姓としての独占欲なのだろうか。


「今、持ってねぇのか?」


「あ、ありますけど.....」


 先日、土方に言われたことを無視できず、いつ付けようかと持っていた髪紐を、かなたは懐から渋々取り出す。土方はそれを手に取った。


「結んでやるから、後ろ向け」


「え、土方さんが結ぶんですか!?」


「ああ」


 そういうと土方はかなたの髪に付いていた紐を解き、丁寧に結いはじめる。指先が髪に触れるたび、背筋が熱を帯びる。最近、本当に自分の体が分からない。胸は高鳴り、息が苦しいのに不思議と安心もする。何かの病気なんだろうか。


 病気といえば、ある男が同じような症状で医者に行った、という話を見たことがある。男の話を聞いた医者はこう言うのだ。「それは恋の病だ」と。


(.....これが、恋)


 自覚した途端、鼓動はますます速まり、頬が熱くなる。息が苦しい。だめだ、何か違うことを考えなければ。


「出来たぞ」


「あっ、ありがとうございます」


 顔が赤いのが自分でも分かる。見られたくなくて、思わずそっぽを向いた。そんな様子に気づいたのか、土方が顔を覗き込む。


「どうした?」


「い、いえ!なんでもないです!そういえば、そろそろ沖田さんにお薬を持っていかないといけないので、行きますね!では!」


 かなたは逃げるように走り去った。廊下の隅で立ち止まり、息を落とす。寒いと思ったら雪が降っている。なのに、体の熱は逃げてくれない。なんだかそれが凄く切なく感じた。





 ーーーー





 数刻前からぽつりぽつりと雪が降り始めていた。沖田は自分の部屋の障子を開け、外に向かって白い息を吐く。


「うぅ....寒い」


 肩を抱きながら、白い粒が降りてくるのを見ていると廊下の奥から、かなたが見えた。


「沖田さん、風邪を引きますからちゃんと部屋に入ってください」


 そう言って足を止めたかなたの手には、薬湯をのせた盆がある。たが、かなたの顔はいつもと違い、少し影を帯びていた。そんな様子に沖田は口を開く。


「あれー、かなたちゃんの髪紐、もしかして土方さんとお揃いですか?」


「っ.....!」


 瞬く間にかなたの頬が真っ赤に染まる。その様子に、沖田は思わずにやりとした。これはもう、"好き"だな。


「か、からかわないで下さい!」


「土方さんと、いい感じなんですか?」


「そ、そんなことはない......です......」


 どんどん顔が曇っていくかなたに、沖田は核心を突く。


「......好き、なんですか?」


「........」


 短い沈黙ののち、かなたは小さく頷いた。


「.....はい」


 めでたいことのはずなのに、今にも泣きそうな顔をしている。沖田は優しく、その頭をぽんぽんと撫でた。


「言わないんですか?土方さんに」


「この想いは.....隠します。土方さんは、新選組と共に生きていますから、こんなこと言えるはずありません」


 早くこの感情を消してしまわなければ、嫌われてしまう。そう思うほど、胸は苦しい。


「かなたさんが言いたくないなら、言わなくてもいいです。けれど、自分の感情を押し殺すのは良くないですよ」


「.....沖田さん」


「土方さんも、かなたさんの落ち込んでいる姿より、笑ってる姿の方が好きだと思います」


 そういうと、沖田はにこりと笑う。その笑顔に、張りつめていた心が少し軽くなった。


「それにね、僕は嬉しいんです。こんなに近くで土方さんを見て、土方さんのことをよく知っている人が、彼のことを慕ってくれているんですから」


「ふふ、沖田さんも土方さんの事が好きなんですね」


「もちろんです!」


 二人が笑い合う中、雪はより一層強くなる。この雪のように土方への想いも、積もり積もっていくのだろう。けれど、この気持ちは胸にそっと閉まっておこう。誰よりも彼の近くで支えながら、遠くから静かに慕い続けよう。

皆様、いつもご覧頂きありがとうございます!やっと第一部が終わりました(一応)。

これからもかなたの改革は終わりませんが、今までとは少し違った改革になると思います!変わってないやんけ、と思われたら申し訳ございません(。-人-。)

引き続き、よろしくお願い致します(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”


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