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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第五章〜暦の彩り〜

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未来の知恵

慶応元年九月


 ある日かなたが広間へ行くと、土方、永倉、原田、斎藤、藤堂が京絵図(地図)を広げてその周りを囲んでいた。


「なにしてるんですか?」


「おう、かなた。丁度いい所に来たな」


 原田が隣を叩いて座れと促してくるので、その横に腰を下ろす。すると、藤堂が顔を上げた。


「今、巡察の経路を見直してたんだよ」


「同じ経路ばかり辿ってると、敵に動きを読まれるからな」


 土方が真剣な顔で京絵図を見つめている隣で、斎藤がかなたに視線を向ける。


「中村、なにかいい案はないか?」


 この人が自分に助言を求めてくるなんて珍しい。よほど煮詰まっているのだろう。


「そうですねえ.....」


 かなたは顎に手を当て、宙を見上げる。未来では敵に追いかけ回されることなど、そうない。


「基本の経路と、不定期の経路を組み合わせてみてはどうでしょう?例えば、ある日は基本経路だけ、次の日は基本経路と不定期経路、その次の日は不定期経路.....とか?」


「なるほど、それなら巡察の動きが読めなくなるな」


 斎藤がすぐに頷く。


「けどよ、それだと隊士が混乱しねえか?」


「そうだな....負担も増えそうだ」


 永倉の疑問に、原田も眉をひそめる。


「そうですね。組ごとに経路を決めたら、それも読まれてしまいますからね....」


 再び宙を見上げて考え込む。すると、土方が口を開いた。


「じゃあ、当番表のようなものを作るしかねぇか」


 当番表か。なるほど、それは中々いい案だ。そう思ったかなたの脳裏に、さらにもう一つの案がひらめく。


「じゃあ、週ごとに当番を変えれる"くるくる当番表"を作りましょう!」


「くるくる当番表?」


 その言葉に一同が首を傾げた。


「はい!ちょっと待っててください!」


 紙と筆、それから釘とハサミが必要だ。かなたは勢いよく立ち上がると、急いでそれらを取りに向かった。


「なにすんだ?」


 戻ると藤堂が目を輝かせて見つめてきた。そんな目で見られると、ちょっとやりにくい。


「まず、紙に丸い円を描いて、それをハサミで切ります。そして円の中に線を引いて、組番号を書いて....もう一枚の紙には、円の中の線に合わせて巡察経路を書きます。経路は、通りの略称にしましょう。そして、この丸い紙の真ん中と経路を書いた紙を重ねて、釘を刺せば........なんと!くるくると日ごとに変えられる当番表ができるのです!」


「おぉ...だから"くるくる当番表"なのか!」


 永倉が納得したように手を叩く。本来は画鋲で留めるのだが、江戸時代には画鋲は存在しないので、仕方なく釘にした。すぐに破けそうなので、今後の仕様を考えなければ。


「日ごとに誰かがこれを一回転させれば、その日、自分の組が、どの経路を巡察すればいいかわかりますよね?しかも、隊士全員が把握できてなくても、組長と副組長がわかっていれば、その日の巡察の初めに隊士に伝えることも出来ます!」


「で、誰がこれを回すんだ?」


 原田は少しバツが悪そうな顔で言う。きっと面倒くさいと思っているのだろう。そんな顔をしなくてもいいのに。


「事務方の人はどうです?」


「そうだな。戦闘要員は面倒がる連中ばっかだから、しっかりしてる事務方のほうがいいだろう」


 かなたの提案に土方が賛同する。


「で、肝心の経路はどうすんだ?」


 永倉の言葉に、皆が気まずそうに目を合わせる。なんだ、まだ経路は決まっていなかったのか。てっきり、もう決定済みだと思っていた。


「じゃあ、ここに居る六人でこれから手分けして経路確保すんぞ」


 土方がそう言うと、かなたは思わずポカンと口を開けた。


「え、私も行くんですか?」


「当たり前だろ!お前は、隠れ参謀なんだから」


 原田が笑いながら背中をバシンと叩いてくる。その力に思わず咳込んでしまう。仮にも男女の力の差があるのだから、もう少し手加減してほしい。


「では、俺と永倉、原田と平助、土方さんと中村、という組み合わせで行きましょう」


「了解」


 斎藤が決めた組み合わせに従い、隊士たちは次々と広間を後にする。皆が去っていく背中を見送ると、土方がかなたの方へ体を向けた。


「じゃあ、俺らも行くか」


「はーい」


 かくして、土方とかなたは巡察経路の確認に向かうことになった。

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