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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第一章〜江戸時代にタイムスリップ!?〜
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未来人

「とりあえず、君の話を聞かせてもらおうか」


そう口を開いたのは、新選組局長の一人 近藤勇だ。


「あの、ちゃんとお話を聞いてくださってありがとうございます」


かなたは近藤に頭を下げる。


「とりあえず怪しいのは変わらねえから、縄で縛るぜ」


土方はかなたを縄で、()()()縛りはじめる。


「まあ、女の子なんだからお手柔らかにしてあげてくださいよ、土方さん」


「!?」


相も変わらずニコニコとする沖田の言葉に土方と近藤は目を見開く。


「君、女だったのか...?」


「へ...?そうですけど...」


どうやら、江戸時代では高く結んだポニーテールにズボンは男の格好らしい。それに加え、かなたは中性的な顔立ちをしている。男の格好をしていてたら間違えられても仕方がないのが.....


「どうりで細っこいと思ったぜ...」


土方はかなたを見ながら自分の手をグーパーしている。


「振る舞いが娘さんじゃないですか〜」


そう言いながら沖田はかなたの縄を解く。振る舞いなどは、分かる人には分かるのだろうか。


「して...君はなぜあんな所にいたのかね?」


近藤は、かなたが八木邸の前にいた事を問う。


「えっと...私がいた時代で階段から落ちたと思ったら突然ここに来てしまって...」


「ふむ...」


近藤は顔をしかめるが、かなたにもこればっかりは訳が分からないので、説明はできない。


「忍びだからどうせ屋根に張り付いてて、ドジして落ちてきたんだろ」


「でも土方さん、僕たちがいた場所に屋根なんかありませんでしたよ?しかもその子は突然、僕たちが居た近くの真上から降ってきたじゃないですか」


(沖田さんナイスアシスト!)


かなたは沖田の証言に土方を納得させられるかと思い、ほんの少し期待を抱く。


「屋根から飛んだんだろ」


「そんな跳躍力ありません!」


かなたはこれでもか、と言わんばかりに突っ込む。なんとしてでも、土方は認めたくないらしい。それを見かねた近藤が口を開いた。


「百六十年後の日ノ本(ひのもと)...だったか?そこから来たというのは?」


「そ、それもほんとです!!こんな格好、異国の服でも見たことないでしょう...?それに新選組という名前、今日決まったみたいですが、当てましたし...!」


「屋根裏に張り付いてたから知ってたんだろ」


土方の言葉に、かなたはがっくりと肩を落とす。どうやっても何も信じて貰えない。なにか証拠があればいいのだが....。


(...証拠?)


かなたは自分のズボンのポケットにスマホが入っていることを思い出す。


「あの、未来から来た証拠があります!」


かなたはポケットのスマホを取り出し三人の前に差し出す。


「な、なんだね、この四角い鉄の塊のようなものは?」


近藤は目を丸くする。


「これは、スマートフォンと言って、遠く離れた人とやり取りが出来るものなんです!写真も撮れます!」


「遠く離れた人と...?手紙とは違うのか?」


近藤はスマホを見ながら首を傾げる。


「今はこの時代に"これ"を持ってる人がいないので....やり取りは出来ませんが、私の居た時代だと、遠く離れた人に手紙のようなものを"これ"で出だすと、すぐに返事がくるんです!」


「ほお...?」


()()()()というのはあの(うつ)()の様なものですよね?撮ると魂が抜かれるという噂の....」


沖田は興味津々に目を光らせる。


「そうです!実際に魂が抜かれることはありませんけどね。撮ってみても?」


「是非、お願いします!」


するとかなたは持っていたスマホでパシャリ、と写真を撮った。


「な、なんだ!音がしたぞ!」


初めて土方が動揺する。


「これです!」


かなたはスマホに写った三人の写真を見せる。


「これは...本当に写真か?色がついているように見えるが...」


近藤はまじまじとスマホの画面を見ている。


「凄いですね...。なんだか未来から来た、というのものも信じられますよ!」


「何言ってんだ総司、こんなもん、なんかのからくりだろ」


(うぅ....頑固すぎる......)


仕方がないといえば仕方がない。かなたも現代にいた頃に誰かから、『未来から来た』と言われても信じることはなかっただろう。


「ちなみに...この日ノ本は、この新選組は君たちのいる時代にはどうなっているのかね?」


近藤がわくわくとした表情で聞いてくる。だが、かなたにはこの先の出来事は言いづらい。なんせ新選組はあと5年もすれば、ほぼ全滅する。


「えっと、それは....話してもいいんでしょうか?」


かなたは恐る恐る聞く。


「嘘だから言えねえだけだろ」


「土方さんちょっと黙って!」


土方の嫌味に沖田が制す。


「あの...私の居た時代とこの時代は違いすぎるので、説明が長くなりますし、そもそも、この話をしてしまったら皆さんは、今から進む道を変えたりするんでしょうか?」


「.....!!!」


近藤たちはかなたの言葉にハッとさせられる。


「私は、もちろん皆さんのことは助けたいと思っていますが....未来の話をして皆さんの想う信念を(たが)えたくはありません」


かなたは真っ直ぐとした目で三人を見つめた。

シーン...とその場が静まり返る。


「わかった、君のことは信じよう」


「...え?いいんですか?」


かなたは近藤の予想外の言葉にポカンとする。


「おい、近藤さん!」


「トシ、俺たちの想い考えている子は、悪い子ではないと俺は思うよ」


「....ックソ」


土方は目を伏せ吐き捨てる。


「あ、あの!ありがとうございます!!!でも、土方さんみたいに、すぐには信じられないってのは当たり前だと思います...。なので一つ、私を試してくれませんか?」


「というと?」


沖田がかなたの言葉に聞き返す。


「これから起こる出来事について皆さんをサポート...じゃなくて、手助けします!なので、それが本当に当たっていた....というか功績みたいなのを出せたら信じてほしいです!それまではずっと監視して頂いても構いませんし、功績が認められなければ斬って頂いて構いません」


かなたは再びまっすぐと三人を見つめる。その目に近藤はかなたの信念を感じた。


「トシ、彼女の言うことは理にかなっているとは思うが...」


「はぁ...。わかったよ。けどな、すぐおかしな真似をすれば斬るからな」


土方はかなたに指をさしながら忠告する。


「は、はい...!ありがとうございます....!」


「じゃあこれからよろしくお願いしますね!かなたさん!」


かなたは沖田の一言でようやく自分の命が一時期といえ、助かったことに力が抜けた。


....まあ、ひと息つけたのは、ほんの束の間だったのだけど。

私たちが実際にタイムスリップしたら、やはりスマホを見せる他ないのでしょうか。

一番の証拠ですよね。

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