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へっぽこ転生者軍団の逆襲!~バッドエンド確定のクソゲー世界へ転生って誰得ですか!?~  作者: 廃くじら


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蛇龍解放作戦④

★蛇龍解放作戦実況スレ part4


14:名無しの実況者

たった今本部より連絡がありました。

アタラ領内の敵拠点の制圧は概ね完了、作戦は第四段階に移行します。

この後は毒エルフによる尋問完了を待って本隊は術式の解体作業に。

その他の部隊は外部からの横槍を防ぐため国境や要人の監視任務に順次移行しています。


15:名無しの観戦者

ただいま~。

管理人の方、様子見てきたよ~。


16:名無しの観戦者

おかえり~。

ご苦労さんやったな。

そんで、あっちの方はどやった?


17:>>15

何か上級国民が出てきて、敵のドッペルゲンガーと泥仕合繰り広げてた~。


18:名無しの観戦者

ぶはっ!?

なんであの詐欺師が出張ってんの?


19:名無しの観戦者

多分、上級国民のことだから、管理人に恩売るために自分から売り込んだとかじゃね?


20:名無しの観戦者

ふむふむ。つまりしばらく掲示板を利用した詐欺に注意が必要ってこっちゃな。


21:名無しの観戦者

誰も上級国民や管理人の心配してないの草生える。


22:名無しの観戦者

あの詐欺師が勝算無しに戦場に首ツッコむとは考えにくいし。


23:名無しの観戦者

いやでも、そこはもう少し突っ込んで聞くのが、わざわざ様子を見に行ってくれた>>15に対しての礼儀ってやつじゃん?


24:>>15

ホントそれ~(ぷんすか)。


25:名無しの観戦者

スマンスマン。

で、一応聞くけど管理人は無事やったか?

あと泥仕合って何?


26:>>15

管理人は今のとこ無事だけど~、ドッペルゲンガーの手数が多くて足止めされてる状態~。

泥仕合はねぇ……よく分かんない~。

童帝の解説だと、双方が死霊術師系の能力持ちでお互い決め手がない状態らしいけど、見てても聞いててもサッパリ意味わかんないわ~。


27:名無しの観戦者

まあ上級国民のことやから、管理人の前で頑張ってるアピールするためにワザと戦いを長引かせてるとかあるんちゃう?


28:名無しの観戦者

というかあいつ死霊術師だったんだ。

ドッペルゲンガーが死霊術ってのもよく分からんけど、精霊契約で死霊術ってどういう仕組み?


29:名無しの観戦者

あ~、転生者でそっち方面を選ぶ奴が少ないからあんま知られてないけど、死霊術に適性のある精霊って多いみたいよ?

四大だと水、マイナーだと闇とか影とか。


30:名無しの観戦者

死霊術って特別強くも便利でもないし、死体や霊魂集めるのが大変な上に周りの目もあるから、すげー不人気なんだけどね。


31:名無しの観戦者

ふ~ん? まあ、あの詐欺師のことだからストレートな死霊術師ってわけでもないんだろうな。


32:名無しの観戦者

膠着状態ってことだったけど、結局作戦は上手くいきそうなの?


33:>>15

皆ドッペルゲンガーの方は都市内ってこともあってあんまり派手なこともできないし、その内根負けするんじゃないかな~って言ってた。

相手は上級国民だけじゃなくて管理人や戦闘班にも意識を割かなきゃいけないしね~。


34:名無しの観戦者

ふんふん。じゃあホントに氷弓兵どころか(まともな)コテハン持ち抜きで上手くいきそうなんだ。


35:>>15

逆にこっちは何事も無し~?


36:名無しの観戦者

おお。こっちは俺らのほぼ総戦力を投入しとるからな(なお、現在掲示板に張り付いている人間は全て合算しても総戦力の一割に満たないものとする)。


37:名無しの観戦者

いくらチート無しとは言えそこは転生者よ。

一般人やちょっと悪魔の加護を受けた程度の連中じゃ相手にならんわ(なお、童帝たちの訓練を突破した精鋭であることを前提とする)。


38:名無しの観戦者

地元民や地元神族への対応や情報封鎖もぬかりないしね(なお、我々の大半は何が行われているのか雰囲気でしか理解していないものとする)。


39:>>15

うんうん。

──実況者さん、それで間違いない~?


40:名無しの実況者

概ね。蛇龍を除けば目につく敵の制圧は完了しています。

後は毒エルフが術式に関する情報を敵から吐かせるのを待って、教授が蛇龍から生贄を解放する術を見つけるだけですね。

──ただ、そこが本作戦の一番の不安要素でもあります。


41:>>15

あ~、手持ちの札で解呪できるタイプの術式とは限らないもんね~。

教授にかかるプレッシャーエグそ~。


42:名無しの実況者

加えてこの解呪は敵から術式情報を吐かせることを前提としていますが、術式の詳細を理解している者が現場に出てきていない可能性もありますので。


43:>>15

早くしないとその敵が自害しちゃう可能性とかもあるしね~。

だから毒エルフは急ぎつつギリ死ななない程度の塩梅を見極めて尋問してるわけか~。

こっちもキツそ~だね~。


44:名無しの観戦者

ぬ? そう聞くとまだまだこの作戦は予断を許さない状況だったりするのか?


45:名無しの観戦者

何だ、今頃気づいたのか?(なお、自分が気づいていたとは言っていない)


46:名無しの観戦者

>>44 どうだろうね。生贄の救出って意味じゃそうだけど、作戦そのものは概ね完遂したとも言える。そこは考え方次第じゃない?


47:名無しの観戦者

どういう意味?


48:名無しの観戦者

作戦は当初の予定通りに進んでる。

今まさに全力を尽くしてるメンバーを軽視するわけじゃないけど、ここまでやって生贄を救えなかったとしたら、そりゃ最初からどうしようもなかったってことじゃないかな?


49:名無しの観戦者

あ~、言いたいことは分かる。

教授とかはこういう言い方嫌がるだろうけど、教授で駄目だったならそりゃもう諦めるしかないってことね。外科医の「手術は成功したが患者は助からなかった」っていうブラックジョーク的な。


50:名無しの観戦者

>>49 その例えはどうかと思う。

地元政府や神族の取り込みとか、生贄のこと抜きにしても作成の成果はあっただろう?


51:名無しの観戦者

おい。まだあそこで救うために頑張ってる奴らがいるのに、そういうことを言うなよ。


52:名無しの観戦者

ごめんごめん。

でも大事なことだと思うんだよ。


53:名無しの観戦者

最初から無理だったって人の命を諦めることがか?


54:名無しの観戦者

そうだよ。そういうことも考えとかないと、引き際を見誤って二次被害を引き起こすことにも繋がりかねないからね。

現場で動いてる彼らだけじゃなく、見てる俺らもそのことを認識しておかなくちゃいけないと思うんだ。

──できる限りの手は尽くした。それでも救えなかったんだとしたら、それはもう仕方ない、ってね。


55:名無しの観戦者

…………


56:名無しの観戦者

言いたいことは分かる。

仮に現場の連中がその判断を下したとき、ワイらもそれを受け入れてやらなあかんちゅうことやろ。

……言い方とタイミングはどうかと思うけどな。


57:>>15

う~ん……


58:名無しの観戦者

どした? 何か納得いかんことでもあるんか?


59:>>15

いや~、納得いかないっていうか、両方の板を見てふと気づいたことがあってさ~


60:名無しの観戦者

気づいたこと?


61:>>15

今回の一件、計画を持ち込んだのが悪魔崇拝者だとすれば、その裏には当然そいつらが信じる悪魔がいるわけだよね~?


62:名無しの観戦者

うん…………あ。


63:>>15

今この状況って、悪魔が登場して全部台無しにするには格好のシチュエーションだと思わない?


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


悪魔崇拝者たちを唆し、アタラ領でこの騒動を引き起こした悪魔にとって、敵──アークス──の動きは想像を大きく超えるものだった。


何やら噂になっているようだが所詮は人間。突然変異で生まれた異能者が十か二十ほど寄り集まった程度の小集団だろうと勝手に予想し、無意識に見下していた。


だが蓋を開けてみればどうだ?


流石に自分には遠く及ばないものの、下級の悪魔や天使程度であれば互角以上に戦えるだろう異能者が百近く現れ、瞬く間に自分の手駒たちを制圧してしまった。


しかも奴らは大胆にもこの地の政府を鬼神たちごと取り込み、実質的に支配下に置いてしまったではないか。


これは自分たち悪魔が信者たち相手にやっていることと変わらない。


つまり自分は奴らが自分たちと同じステージに上がる切欠をお膳立てしてしまったことになる。


「はは……直接味見なんてはしたないと思ってたけど──ここまでの相手なら僕が出るのに不足はないよね」


悪魔はこれまで、そのプライドの高さから人間に直接手出しすることを避けていた。


だが敵の実力は自分の想像を遥かに上回り、このまま行けば何の山場もなく順当に蛇龍は解体され生贄も救出されてしまう──それは何と詰まらない結末だろう。


かくなる上は悪魔自ら姿を見せ、彼らを骨の髄まで味わってやらねば不作法というものだ。


これは十分な力を示した人間たちへの経緯でありサービスなのだと自分自身に理論武装で言い訳し、悪魔は舌なめずりしながら転移術式を起動させた──



「──見つけたんだ~よぅ」

「────」



転移のために伸ばした魔力の糸を逆探知され、悪魔の脊髄をゾワリとした悪寒が奔る。


咄嗟に転移術式をキャンセルするが既に手遅れだった。


──斬ッ!!!


「────!?」


次の瞬間、悪魔の右腕は何の抵抗もなく肩から斬り落とされていた。

その斬撃には予兆も衝撃も痛みもなく、あったのはただ肩の重みが消えた違和感だけ──悪魔は咄嗟に大きく前に跳び、その最中にようやく自分が斬られたことを理解した。


着地と同時に反転。現れた気配を魔力で威圧しその姿を視界にとらえる──二人組の老人だ。


一人は蛇龍の傍で控えていた刀を持った老人で、もう一人の老婆は気配からしてどこぞの神か悪魔。


恐らく予め悪魔の奇襲を警戒し、老婆が蛇龍の周辺に網を張っていたのだろう。悪魔の転移術式の糸を手繰って、逆にこちらに転移し奇襲を仕掛けてきたのだ。


悪魔が老人二人を牽制しながら状況把握に努めていると、老婆がのんびりとした口調で傍らの老人に話しかけた。


「おやまぁ。あんたが仕留め損なうなんて珍しいねぇ~?」

「…………転移酔いで斬線が定まらなんだ」


しかめっ面で応じる老人に老婆は「それでかい」とケラケラ笑った。


眼前の呑気なやり取りに、悪魔のこめかみに青筋が浮かぶ。だが自分が生きているのはただの幸運によるものであることを理解し、悪魔はギリギリのところで憤怒を抑え込んだ。


──認めよう。コイツ等は僕が想像する以上に周到で危険な敵だ。


恐らく目の前の老人と老婆は敵にとっての最大戦力。それをここまで動かすことなく待機させていたことも恐ろしいが、何より厄介なのは彼らが最初から悪魔じぶんの存在を警戒し備えていたという事実。


魔力量などから視て正面から戦って負けるとは露ほども思わない。だがこれだけ周到な敵だ。罠や隠し玉当然にあると考えるべきだろう。


悪魔は恥辱を押し殺し、余裕のある笑みを取り繕い口を開いた。


「やるじゃないか。その女の助けがあったにせよ、まさか人間相手に手傷を負わせられるとは思いもよらなかったよ」

「…………」


老人は反応することなく、ジッと何かを堪えるようにしかめっ面を浮かべている。


悪魔は構うことなく若干早口で言葉を続けた。


「このまま君たちと遊んであげたいところだけど、僕も無駄に消耗するのは避けたい。君たちはあの蛇龍に食われた生贄を解放したいんだろう? 努力賞だ。ここで引いてくれるなら、その方法を君たちに教えてあげようじゃないか」

「…………」


老人たちは何の反応も示さない。悪魔は一層芝居がかった仕草で続ける。


「疑っているのかい? だが君たちの戦力を見誤っていた以上、もはや僕が本来の目的を果たすことは難しい。このまま蛇龍を放置したところで無為に死体が増えるだけで何のメリットもない」

「…………」

「君たちは僕の手駒から情報を抜き出そうとしてるみたいだけど、彼らは何も知らないよ。一から術式を解析して解呪するのは不可能──それが分かっているからこそ、君たちは人手を使って拠点を一つずつ潰していたんだろう? この申し出を断れば、あの千の生贄は死ぬことになるよ」

「…………」


やはり老人たちは反応を返さなかったが、悪魔は自分の申し出が受け入れられることを疑っていなかった。


何せ彼らはあの生贄を救うために膨大な人手と手間をかけている。生贄を見捨てる判断ができるなら最初からそうしているはずだ。


「…………ふぅ~」


刀を持った老人が大きく息を吐く。悪魔はそれを応諾の意と理解し笑みを浮かべ──


──トスッ


次の瞬間、悪魔の頭部は胴から離れ地面を転がっていた。


「……うむ。ようやく酔いが醒めた」


頭上から聞こえる老人の呟きに、遅れて悪魔は自分が斬られたことを理解する。


ただの身体能力によるものではない。老人の動きはしっかりと見えていた筈なのに、斬られるまで──いや斬られた後でさえ、悪魔は老人が刀を振るったことを認識できなかった。


無駄なく極限まで合理を突き詰めたか弱き人の絶技。


悪魔はその業の凄まじさを理解できぬまま、全く別のことを口にしていた。


「な、ぜ……いけにえを……みすて……?」

「見捨てたわけではない」


視界に写る老人の表情に動揺はない。


「ただ貴様の言葉を聞いたところで、儂らにその真偽を確かめる術はない。使えぬ情報など聞いても仕方があるまいて」

「…………は」


その考えは正しい。


事実悪魔は偽の解呪方法を教えて生贄ごと蛇龍を自爆させることも考えていた。


だがそれでも、可能性があれば迷うのが人間という生き物だ。


千人の同族の命を見捨てることになるかもしれない決断を何の躊躇もなく下す。それはなんて──


「化け、もの……──」

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