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へっぽこ転生者軍団の逆襲!~バッドエンド確定のクソゲー世界へ転生って誰得ですか!?~  作者: 廃くじら


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32/44

我々はこの日のためにずっと備えて──

神や悪魔、妖や魔獣といった存在は、神代が終わった後も決して滅びたわけではなく、現代にいたるまで人の世の陰に潜みしぶとく生き延びていた。


しかしその本質が精神生命体で主に人の想念を糧とする彼らは、人々からその存在を忘れ去られるにつれて、現世でその力を振るうことが難しくなっていった。現世に干渉することは消耗が激しく、“割に合わなくなった”と言い換えても良い。


例外は一神教の神や天使を始めとした、信者たちから高純度の信仰心を得ることができる者たちだけ。


これは一神教が長い年月をかけて現世に現れる悪魔たちを狩り、自分たちの姿を秘匿し、人々の心からオカルトを消し去った成果と言える。


勿論、代償として一神教の天使たちもその力を制限されはしたが、他勢力と比べれば膨大な信者を抱えている分、振るえる力は大きい。


自分たちを含めたオカルトの実在を人々の心から否定することで、相対的に自分たちの優位を確保する──それがこの大陸における一神教の戦略である。



一方で、一神教がどれだけ苛烈に悪魔や魔獣を狩ろうとも、人の心から完全にその実在を否定することは叶わない。


ごく稀ではあるが人々を襲ってそれを糧とする妖や魔獣も存在すれば、ゴブリンやオークのように多神教の神々との繋がりが深い少数亜人種もいる。


悪魔と戦う術を伝えるヒューマンの一族も細々とではあるが命脈を繋いでいた。


そして所謂”名家”と呼ばれる彼らは、怪異の専門家として時に命をかけて人々を脅威から守っていた。




──ゴォォォッ!!!


猿のような人面に獅子の体躯と蛇の尻尾を持つ異形の複合獣キメラが口から炎を吐き出し、それを数名の術師たちが障壁を張って防ぐ。


現代の刻印魔法とは異なる古式魔術で編まれたその五重の障壁は、炎にその障壁の四枚までを破られギリギリのところで術師たちを守り抜いた。


「くっ! 怯むな! 二番隊、右から回り込め!!」


リーダー格と思しき銀髪の若い女が、破魔弓で複合獣を牽制しながら部下たちに指示を下す。


前後から挟み込まれた複合獣は、その両方に同時に対処することは不可能──


──ヒュルン!!


「ぐああぁっ!?」

「伯父上!?」


──しかし背後からの攻撃に対し、複合獣は死角などありはしないと蛇の尻尾で迎撃。別動隊を率いていた壮年の男は巨大な蛇のアギトに肩を噛みつかれ、そのままぐるぐる振り回されて砲丸のように仲間たちに向けて投げつけられた。


「────かっ!?」

「げふぅっ!」

「先輩っ!!」


その圧倒的な複合獣のパワーに術師たちの間で動揺が広がるが、それを銀髪の女が寸でのところで食い留めた。


「はぁぁぁぁっ!!」


複合獣が人間たちの動揺をニヤリと嗤い、追い打ちに移ろうとしたほんの僅かな隙を突いて、女は複合獣の首の付け根に槍の穂先を捻じり込む。


──GYAAAA!!?


強靭な筋肉に阻まれ致命傷には程遠い──が、初めて明確なダメージを受けて、複合獣は悲鳴を上げて動きを止めた。


「今だ!! 一斉攻撃!!」

『おおっ!!!』


リーダーの号令に呼応して、動ける者たちが一斉に特攻を仕掛ける。


彼らは皆理解していた。敵は強大であり、この機を逃せば自分たちに勝ち目はないと。


彼ら名家は代々妖や魔獣と戦ってきたが、現代ではその頻度は年に一度あるかないか。敵の強さも一〇人がかりで挑めば二、三人の犠牲で済む弱いものばかりだった。


だが昨今、妖や魔獣の出現が多発し対応に追われた一門は疲弊。そこに追い打ちをかけるように強大な複合獣が出現し、彼らは完全に追い詰められていた。


もはや犠牲を抑える余力などなく、死力を尽くして相討ちに持ち込むほかない──そう覚悟せざるを得ないほどに。


──何故急にこのような強力な怪異が……妙な噂が流れているとは思っていたが、そのことと何か関係しているのか?


一旦後方に引き、再突入のタイミングを計っていた銀髪の女は、呼吸を整えながら昨今、大陸各地で報告される怪異の目撃情報に想いを馳せる。


「ぐはぁっ!?」


しかし目の前で複合獣の前脚に部下の一人が弾き飛ばされ、女の意識はすぐに現実へと引き戻された。


鋭く息を吐き、再突入の為腰を低く落とす──


──KUKEEEEEE!!


「────は?」


しかし、いななきと共に上空に現れたもう一つの影に、彼女は攻撃を忘れて間抜けな声を上げた。


複合獣がもう一匹、こちら目掛けて降下してくる様子が目に映る。


一匹相手でもギリギリなのにもう一匹──ああ、ひょっとしたらつがいなのかもしれないなと、女の脳は絶望から目を背けるように現実逃避した。


部下たちは地上にいる一匹の相手で手一杯。上空にいるもう一匹は勢いよく急降下してきており、あとほんの数秒でその牙が爪が無防備な自分たちの身体を引き裂くことになるだろう。


──あ。終わった──


しかしそんなありふれた言葉を思い浮かべるより早く──


──ドゴォォォンンッ!!!


──GYAAAAAA!!?


視界の外から現れた黒い影が、上空から襲い掛かる複合獣の身体を吹き飛ばした。


「────は?」


女は再度目を丸くし、絶句する。


現れたのは巨大な戦斧を担いだ若い男。とても複合獣の巨体を吹き飛ばしたとは思えない中肉中背の体躯、平凡な顔立ちの。


そしてそれに続く様に彼女の背後に現れ、左右から前に進み出る二人の男。


唐突過ぎる乱入者に、女だけでなく前線で戦っていた部下も──複合獣でさえ動きを止めて見入ってしまう。


「──下がって」


男の一人が告げる。それが自分たちに向けられた言葉だと気づくのに、女は数秒の時間を要した。


彼らは不敵な笑みを浮かべて続ける。


「こいつらのことは任せてほしい。我々はこの日のためにずっと備えてきた」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


★俺たちの活躍を語り合うスレ その19


45:名無しの転生者

やったぁぁぁぁぁっ!!!

ついにやった! ワイはやったんや!!

苦節云十年! ついにあの決めゼリフを言うことが出来たんや!!


46:名無しの転生者

おめでと~!


47:名無しの転生者

>>45 いや、苦節云十年って……まだアークスが出来て一年ぐらいしか経ってねぇだろ。


48:>>45

前世からの通算に決まっとるやろがい!


49:名無しの転生者

分かる。

異世界転生した時からチートがあるに違いないと妄想膨らませるのは転生者あるあるだよね。


50:名無しの転生者

その後、『チートねぇのかよ!』って絶望するとこまでセットでな。


51:名無しの転生者

それがこうして夢のシチュエーションを再現できるとこまで来たんだから、管理人や童帝には頭が上がらねぇよ。


52:名無しの転生者

そうそう。今になればあのクソ厳しい修行も良い思い……おも…………いや、それはねぇな。


53:名無しの転生者

それとこれとは話が別よ。


54:名無しの転生者

やめやめ!

この板でそういう暗い話は無しにしようぜ!


55:名無しの転生者

>>45は今回、現地民の名家を保護したんでしょ? かわいい子いた?


56:名無しの転生者

助けた勢いでしっぽり行ったんじゃねぇだろうな、おい?


57:>>45

>>56 行けるかぁい!

いや、かわいい子はおったけど、鵺擬きを倒した後も怪我人の治療やら後始末やらでそれどころやなかったわ。

……そもそも、現地民からしたらワイらはヒーローっちゅうより得体の知れん力を持った謎の集団やしな。

助けていきなり『キャー素敵―! 抱いてー!』とはならんわ。


58:名無しの転生者

……ならないんだ?(愕然)


59:名無しの転生者

そこはむしろ警戒心無しに近づいてくる連中のが怖くね?


60:名無しの転生者

確かにな。

まぁ、ゆっくりお近づきになれば──と、そういや>>45は、現地民対応どっちにしたの?

取り込み? 記憶消去?


61:>>45

取り込みやな。

現地民にしてはまぁまぁ腕が立つ方やったし、ワイらに変に取り入ろうとすることもなければ上から目線でもの言うてくることもなかった。

今は幹部連中に身柄預けて思想チェックと背後におかしな勢力がおらんかだけ確認してもらっとるとこや。


62:名無しの転生者

ふ~ん。まぁ、童帝や氷弓兵がチェックするなら安心か。


63:名無しの転生者

実際、自称名家って大した力もないくせに、偉そうに協力しろだの使ってやるだのクソみたいな連中が多いもんね~。

そういう連中に限ってヤベー悪魔が裏にいることが多いし、チェックはどれだけしてもやり過ぎってことはないよ。


64:>>45

ホンマそれ、

自分でチェックすんのは限界があるから、大丈夫やと思っても通達通り本部に任せるのをおススメするわ。

万が一のことがあったら責任問題やしな。


65:名無しの転生者

それはそう。

でもそう考えると、現地民の取り込みってあんまメリットないよね~。

戦力としては微妙だし、情報漏洩や裏切りにも気を遣わないといけない。ぶっちゃけ足手纏い。


66:名無しの転生者

実際今回の現地民はどうだったの?

『まぁまぁ腕が立つ』ってことだけど……


67:>>45

う~ん……ぶっちゃけ一人一人の実力は精霊契約した直後の素人同然のワイらにも劣るわ。

戦力的には、レベル一ワイらの半分か三分の一ぐらいちゃうか?


68:名無しの転生者

よっわ……


69:名無しの転生者

まぁ現地民術師なんてチュートリアルに出てくるモブみたいなもんだし、俺らと比較になるだけでも上澄みでしょ。

現地民名家なんてインチキ異能者のが多いぐらいなんだしさ。


70:>>45

弱いっちゅうのはその通りや。

ただ連中は基礎体力や戦う覚悟みたいなもんは十分備わっとったから、魔道具でも与えてやればそこそこ戦えるようになるんやないか期待しとるんや。


71:名無しの転生者

レベリングは?


72:名無しの転生者

現地民は才能面で俺らより劣ってるから、レベリングしようにも才能限界は低いし成長効率もクッソ悪いんだってさ。


73:>>45

個人差もあるらしいから一応レベリングも試してはみるけど、あまり無理させる気はないわ。

それで死んだら後味悪いし、それぐらいなら経験値全部自分で食った方が効率ええしな。


74:名無しの転生者

初期能力値の低いジェイガンを使う理由はない、か。


75:名無しの転生者

……いや、話を聞けば聞くほど現地民使えんなぁ。

ぶっちゃけ取り込む必要あるか?


76:名無しの転生者

プライド高くて扱いにくいし、ゴブリンやコボルトのが有益。


77:名無しの転生者

何を言うとるんや!?

現地民にはワイらをチヤホヤしてモチベーションを上げるという重要な役割があるやろ!


78:名無しの転生者

逆に話するだけで萎える連中も多いけどね~

私はコボルトモフる方が上がる~


79:名無しの転生者

いやその……ワンチャン、あるかもと…


80:名無しの転生者

アホ。こっちの力目当てで近づいてくる連中なんぞただのハニトラ要員やんか。


81:名無しの転生者

うう……それでも、それでも守りたい夢があるんだ……!


82:名無しの転生者

……下心云々はさておくとしても、だ。

実際、現地民名家もそう馬鹿にしたもんじゃないぜ。


83:名無しの転生者

そうか?


84:名無しの転生者

戦力面ではともかく、地元での影響力とかは中々いいもの持ってる連中が多い。

その分、こっちが利用されないように注意は必要だけどな。


85:名無しの転生者

あ~、確かに。そういう政治力みたいなのは俺らに一番不足してる部分だもんな。


86:名無しの転生者

そうそう。

名家のコネを利用して土地や人手を確保して、懸案だった食料自給率の問題とかも光明が見えてきたって話だ。


87:名無しの転生者

ほ~ん……なるほどなぁ。


88:名無しの転生者

ただその分、他の勢力に目を付けられやすくはなるから……


89:名無しの転生者

ま、そこはしゃあないやろ。

何時までもコソコソ隠れ続けるわけにもいかんのやから、な。

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