表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
へっぽこ転生者軍団の逆襲!~バッドエンド確定のクソゲー世界へ転生って誰得ですか!?~  作者: 廃くじら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/44

★電子マネーAP情報交換スレ その5

霊薬ポーションニセット、それとアイスストーン三つ下さい」

「かしこまりました。併せて毒消しはいかがですか? こちら霊薬とセットですと十五%引きと大変お得になっております」


霊峰サザンピークの麓に建てられた輪廻保護機構アークスの本部。


その建屋の一角に設けられた売店で、戦闘班の男が消耗品の補充を行っていた。


男は売り子の女性のセールストークに一瞬だけ考えるそぶりを見せ、すぐかぶりを横に振る。


「……あ~、いえ大丈夫です。今のとこ天使との戦いがメインなので、対異常系の備えは間に合ってるんですよ」


ゲームのシナリオ通りなら、いずれこの大陸でも天使や悪魔が入り混じった戦いが繰り広げられるのだろうが、現時点ではオカルトの存在は一般には秘されており、その戦場は限定的だ。


一部の悪魔や多神教の神が暗躍を始めているものの、今のところ本格的に動きを見せているのは教国の天使の軍勢のみ。対異常系の攻撃をしてくる敵は稀で、傷薬として霊薬の需要は高いが、毒消しなどの状態異常回復アイテムは在庫がダブつく傾向があった。


当然、売る側もあの手この手で何とか在庫を捌こうと考えている訳で──


「なるほど。ですが毒消しは一般的な自然毒に一通り対応しており、傷口の化膿などを予防する効果もあります。戦闘が長期化すれば糧食が腐敗しお腹を壊すようなことも考えらえますし、本部からは余裕を持った備えを推奨させていただいております。何事もいざ必要な状況になってから準備したのでは遅いですからね」

「ふぅむ……」


男は顎に手を当て再び考えるそぶりをみせた。今度のそれは先ほどより少しだけ長い。


互いに転生者同士、売り子のそれが在庫を捌くためのセールストークであることは理解している。だがいずれ必要になることは確かだし、毒消しの一つや二つさほどかさ張るものでもない。割引が利くならまぁ……


「……うん。じゃあ、二つお願いします」

「ありがとうございます!」


売り子は弾けるような無料の笑みを浮かべた。


毒消しを含め薬品、アイテム全般の性能は随時バージョンアップが繰り返されており、古い在庫はできるだけ早く捌かないと捨て値で売るか廃棄するしかなくなってしまう。後日、自分が購入した毒消しが五割引きで販売されているのを見て男が地団駄を踏むことになるのだが、それはまた別の話だ。


「お支払方法はいかがいたしますか?」

「APで」


そう言って男は左手の候に刻まれた【掲示板】の刻印を突き出す。


売店の壁には『電子マネーAP試行開始! 今なら二〇%キャッシュバックキャンペーン中!!』との張り紙が貼られていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


★電子マネーAP情報交換スレ その5


34:名無しの商売人

だからもっと売店とかだけじゃなくて他のサービスにもAPを導入していこうぜ。

通貨なんて皆に使ってもらわなきゃ話になんないんだからさ。


35:名無しの商売人

無茶言うなや。

そもそもまだ試行段階で、技術的に安全が確立されとるわけでもないんやぞ?


36:名無しの商売人

そーそー。

だいたい導入ったって、どういう形で発行してくんだよ?

ペタや帝国アルクと交換するにしてもレートの管理とかやってらんねーだろ。


37:名無しの商売人

そうは言っても、俺たち独自の決済システムが必要になるのは間違いないんだし、覚悟決めて推し進めていくしかねぇだろうが!


38:名無しの商売人

だ~か~ら~!

進めるにしても順序ってもんがあるだろ、って話!

通貨だけ流通させて碌に買える物が無いなんて話になったら、通貨としての信用を失って計画がとん挫することになるだろうが!


39:名無しの商売人

だったらとっとと商品増やしていけよ!


40:名無しの商売人

架空の金融商品じゃねぇんだぞ!?

そう簡単に物が作れたら苦労しねぇよ!!


41:名無しの商売人

ひよったことぬかしてんじゃねぇぞ!?


42:名無しの商売人

んだとごらぁっ!?


43:闇商人

おら、馬鹿ども落ち着かんかい。


44:名無しの商売人

あ、闇商人。オッスオッス~。


45:錬金術師

私もいますよ。


46:名無しの商売人

あらま。最近現場が忙しそうなのに、富豪系の二人が揃って顔出すなんて珍しいね?


47:闇商人

APが実際に動き出したんや。

お前らに任せきりにもできんやろ。


48:名無しの商売人

むぅ……不甲斐なくて申し訳なかとです。


49:錬金術師

いやいや。責めてるわけじゃありません。

何せ初めての試みですからね。私や闇商人が議論に入っても似たようなものでしょう。


50:名無しの商売人

というと?


51:闇商人

金回りだけ話しても議論は進まんやろ。

つーことで、今日は外部専門家を二人呼んできたで。


52:★管理人

呼ばれた~。


53:毒エルフ

飛び出た~?


54:名無しの商売人

おお! AP開発者と生産部門のトップやんか。


55:名無しの商売人

確かに。俺らだけだと話が進まなかったからこの二人が参加してくれるのはマジで助かる。


56:毒エルフ

う~ん……そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、管理人はともかく私はあまりAPには関与してないし、どこまで話ができるか……(苦笑)


57:名無しの商売人

いやいや、ちょうど生産部門と調整しないといけないとは思ってたし、話を聞いてくれるだけで助かるよ。


58:闇商人

ほんじゃ毒エルフもおるし、APの開発経緯と現状についてざっと振り返ろか?


59:錬金術師

ではそこは私の方から。

そもそも「AP」とは「ARC POINT」の略称で、この度新たに発行された我々アークスの組織内通貨です。

管理人が開発した【掲示板】のIDに紐づけ、電子マネーのように【掲示板】のネットワークを介して決済を行う仮想通貨。

今はまだ試行段階で、本部が出した依頼をこなした方の報酬に色を付ける形でこのAPを支払い、本部内の売店など一部サービスの購入に利用いただいています。


60:毒エルフ

そこまでは以前親方と一緒に説明を受けたわ。

APを使用してくれたら割引があるとか、一部の上級装備はAPでしか購入できないようにしてほしいってことだったわよね?


61:闇商人

せやな。インセンティブを与えて積極的にAPを使って欲しいっちゅうのもあるし、組織に貢献してくれる人間に優先してええ装備を供給したいっちゅう両方の狙いがある。


62:名無しの商売人

今のとこ利用者からの評判は悪くないし、トラブルなんかも特に聞かない。


63:名無しの商売人

なので規模や範囲を広げて行きたいなぁ、って話をしてたんだけど、そのやり方というか流れ? 優先順位?

ともかくその辺の動き方で意見がまとまらなくて揉めてたとこだね。


64:毒エルフ

ふんふん。

APを導入して広めようとする理由は?

別にペタでも帝国アルクでも不便はないと思うけど。


65:闇商人

今のとこはな。

せやけどこの大陸は近い将来、神魔の戦いに巻き込まれてぐちゃぐちゃになる。

当然、国もどこまで形を保っとれるか分からんし、教国だけやなくて帝国や連邦と敵対する可能性も否定できん。

そうなった時、決済機能をペタや帝国アルクに依存するのはリスクが高いからな。

組織独自の通貨を作る必要がある。


66:毒エルフ

仮想通貨にした理由は?

実体通貨でもいい気がするけど。


67:錬金術師

貴金属の入手や鋳造は我々の経済規模だと中々ハードルが高いですし、紙幣はこちらの技術レベルだと偽造のリスクが高いので。

悪魔の中には贋金造りの伝承を持つ者もいますから、実は仮想通貨が一番安全性が高いのかな、と。


68:★管理人

別に仮想通貨が絶対安心って訳じゃないけどね~。

神や悪魔相手に俺の作ったセキュリティがどこまで通用するか……


69:名無しの商売人

神婆ちゃんにしてやられたからって、そんないじけるなよ管理人。


70:名無しの商売人

APはお婆ちゃんにも『いい仕組みだよぅ』って太鼓判押してもらったんだろ?


71:★管理人

……まぁね。

前世のブロックチェーン技術を流用してるから、少なくとも力技でどうこうされることはないと思うけど……


72:名無しの商売人

けど?


73:★管理人

電子と魔力じゃまた微妙に性質が違うから、どっかに落とし穴がある可能性は否定できない。

一応、二重三重にバックアップは取ってあるけど、拡大はネットワークへの負荷とか見ながら慎重に進めて欲しいかな。


74:名無しの商売人

ふむん……まぁ、ワイらとしても拡大のためにキャンペーンうちまくって現場に負担をかけるようなやり方がええとは思わんのやが……


75:名無しの商売人

そもそも実態が追いついてないんだから、APの流通量だけ増やしても意味ないだろ?

せめてAPだけで一通り生活ができるようにしないと。


76:名無しの商売人

今のとこアークスの商品って言えば戦闘用の装備や消耗品がメインだもんね~


77:名無しの商売人

一応、食料品や衣料品の取り扱いも数は少ないけど始めとるんやで?


78:名無しの商売人

それほぼ輸入じゃん。

国が破綻した時に備えてAP導入しようってのに、外部に商品供給を頼ってるんじゃ片手落ちでしょ。

APで他所から買い物ができるわけじゃないんだからさぁ。


79:闇商人

まぁこんな感じで、APを広めるにしても組織として売れるもののラインナップが少なくて困っとるわけや。

元々アークスは防衛組織やから生産が戦闘面に偏るのはしゃあないんやけどな。

ただ今後を考えれば組織が周囲から孤立しても自給自足できる体制を整えんとあかん。


80:毒エルフ

私がここに連れてこられたのは、生産部門でその辺りを考えて欲しいってことね?


81:錬金術師

そういうことです。

APで外部と取引するスキームなんかも検討はしてるんですけど、いつになるか分かりませんし、やはり通貨の信用力は発行する組織の生産能力に比例しますからね。


82:毒エルフ

ん~……言いたいことは分かる。

分かるんだけどさぁ。


83:名無しの商売人

分かるけど?


84:毒エルフ

私はあくまで薬剤師で、調薬関係の責任者なのよ。

最近じゃ医薬品以外に教授の研究部門と共同でストーン系の消耗品も取り扱ってるけど、あくまで調薬の範疇でしかないわ。

もう一人の責任者の親方も鍛冶師だしね。


85:名無しの商売人

ああ、あのハーフエルフの幼妻を手籠めにした犯罪者。


86:名無しの商売人

外道を誅しに行った勇士たちの前に、ハーフエルフの嫁さんが『旦那様に刃を向けるなら先に私を殺しなさい!!』って涙まじりに立ち塞がって、勇士たちは血涙を流しながら逃げ去ったっていう。


87:名無しの商売人

やめろやめろ、それは板が違う。

その話は『中年ド腐れドワーフを殺すスレ』か『合法ハーフエルフ嫁を救うスレ』でやれ。


88:名無しの商売人

了解。今からあっちで吐き出してくるわ。


89:名無しの商売人

ワイも。


90:毒エルフ

……コホン。

話を元に戻すけど、今のところ生産班にそういう農業とか生活必需品の生産を主導できる人間がいるかというと……


91:闇商人

やっぱ厳しいか?


92:毒エルフ

探せば経験者ぐらいはいるだろうけど、どこまで対応できるかというと……ねぇ?

そもそも圧倒的に人手が足りないし、農業に手を出すならその土地をどうやって確保するのかって問題もあるわよ。


93:名無しの商売人

あんま目立つ場所は良くないか……ノゥム領は?

ゴブリンの土地が空いてるでしょ。


94:名無しの商売人

あの辺は山間部で農耕には向かないんだって。だからヒューマンが放置してるわけだし。

つーかすぐ近くで天使がドンパチやってるとこで農作業やりたがる奴とかいるか?


95:名無しの商売人

流石に厳しいな。


96:錬金術師

……どうにかなりませんか?


97:毒エルフ

無理。

そりゃ、今ゴブリンやコボルトに割り振ってる作業の一部をそっちに割り振って、トウモロコシとか山間部でも育てやすい作物に絞れば多少自給率が改善するかもしれないけど、絶対量で見れば焼け石に水よ。

人手……は教授と相談して作業効率を上げれば多少どうにかなるかもしれないけど、土地だけはどうしようもないわ。


98:闇商人

う~む。やっぱ、広くて人目につかん土地の確保は必須っちゅうことか。


99:錬金術師

とは言っても、そういう土地に力のある先住者がいないはずがありませんからねぇ。


100:名無しの商売人

う~む……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ