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ブラック上司対応メソッド(解説編)

★ノゥム領防衛戦報告スレ その1


58:氷弓兵

とまあ、ざっくり結果を報告するとこんな感じだね。

教国側の思惑や今後の動きはこっちの予想が多分に混じってるけど、向こうの内情に詳しい聖女ちゃんの見解も踏まえてのものだから、大きくかけ離れてはいないと思うよ。


59:名無しの転生者

う~ん……?


60:名無しの転生者

勝った、でいいのか……?


61:名無しの転生者

いやでも……


62:氷弓兵

疑問があったら遠慮せずどんどん聞いてね?

今回の一件じゃ、皆に十分な説明もできないまま教国と戦線を開くことになったから。

今後どうなるのか不安に思うのは当然だし、疑問は抱え込まずに解消しておいた方がお互いにとっていいと思う。


63:名無しの転生者

えと、それじゃあ……敵の損害が五割ほど、こっちは軽傷者はあれ死者重傷者はゼロって話だよね?

そこまで圧倒的な戦闘だったならいっそ殲滅しといた方がこっちの情報も漏れなかっただろうし、後腐れが無かったんじゃない?

何でそうしなかったのか……出来ない理由でもあったの?


64:名無しの転生者

教国側の動向予測の根拠が分からんわ。

普通に今度は全力でノゥム領を攻撃してくる可能性もあるんちゃう?


65:名無しの転生者

ゴブリンたちとは今後どういう関係を構築していくつもりなの?


66:名無しの転生者

つか、そもそも作戦の流れが分かりづらいって。

誰がどう動いたのか分かりやすく最初から説明してよ。


67:名無しの転生者

お婆ちゃんはどうなった?


68:名無しの転生者

獅子の紋章とか結局どういう意図があった訳?


69:名無しの転生者

ノード神族とか他の勢力がちょっかいかけてくるリスクはないんか?


70:氷弓兵

おおう……怒涛の聖徳太子……!

え~と、どれからいこう……じゃあ>>63の質問の答えに絡めて、今回の作戦の意図から説明しようか。


71:名無しの転生者

作戦の意図? そんなの天使を撃退してゴブリンを守ること以外にある?


72:名無しの転生者

やから意図的に敵を殲滅せず見逃した理由があるっちゅうことやろ──違うか?


73:氷弓兵

>>72 そうだね。まあ実際、殲滅しようとしたとしても空飛ぶ相手にそれが出来たかは怪しいんだけど、殲滅じゃなくて撃退を目的としたことには意図がある。


74:名無しの転生者

殲滅と撃退? よう分からんな……


75:氷弓兵

順を追って説明するね。

まず、ノゥム領の防衛に乗り出すと決めた時点で、俺らには二つの選択肢があった──それが殲滅と撃退だ。


76:名無しの転生者

それは目標の高さの話じゃなくて?


77:氷弓兵

じゃなくてメリットとデメリットの問題だよ。

殲滅を選べば敵戦力は削れるだろうけど、過度に相手に警戒されて一斉攻撃を招くリスクがある。

逆に撃退を選べばこちらの手の内や戦力を隠せる一方、戦い方が半端になってこちらの被害が拡大するリスクがあった。


78:名無しの転生者

ふんふん。要はどこまで戦力や手の内を見せるかの話か。


79:名無しの転生者

私たちは天使と全面戦争に突入できるほど準備が整ってるわけじゃないし、時間稼ぎのために撃退を選んだってことね。

で、被害については作戦でどうにか抑えることにした、と。


80:氷弓兵

そういうこと。それじゃ続けて具体的な作戦と皆の動きについて。

今回、こちらの戦力はゴブリンとオークの戦士がそれぞれ二〇人ぐらい。

戦闘班から①実戦経験を積んだ精鋭が一〇、②訓練を終えて実戦参加を許可した連中が三〇ぐらいで、計八〇人ぐらいかな。

ここに俺と合理爺が指揮官として参加した。


対する天使の軍勢は総数二〇〇前後で、ほぼ下級の雑兵だけど、指揮官に少しだけ手強いのがいた。多分能天使とか権天使とかだろうね。

天使の実力は大体俺らの②と互角で、①の精鋭なら一人で二、三体相手にできるぐらい。

逆にゴブリンは個体差があるけど平均して「0.2」天使、オークは「1」天使ぐらいかな。

ただ実際にはゴブリンやオークは飛行する天使への攻撃手段が乏しかったから、まともに戦ったら手も足も出なかっただろうね。


81:名無しの転生者

ふんふん。ということはこっちの戦力は氷弓兵と合理爺を除いて大体八〇天使分。ほぼ人数通り、倍以上の戦力差があったわけか。


82:名無しの転生者

そう考えると、よくこっちの死者をゼロに抑えた上で、五割も損害を与えれたな。


83:氷弓兵

天使がこっちを舐めてたからね。

天使の軍は当初、本隊一五〇、斥候役五〇に分かれて、斥候役がバラバラに広がってゴブリンの棲家を捜索してたんだ。


84:名無しの転生者

……舐め切った動きやが、飛べることのアドバンテージはデカいし、広い森林地帯を捜索するなら別に間違った動きではないな。敵に魔法が使えるもんがおらんかったら、の話やが。


85:氷弓兵

対して俺らは合理爺と一般戦闘班、オークの戦士でこれを迎え撃った。

ちなみにこの時、合理爺は教授の術式でオークに、戦闘班はゴブリンに変装してたよ。


86:名無しの転生者

ゴブリンは参加せんかったんか?


87:氷弓兵

最初は参加してもらうつもりだったんだけど、長期間天使相手にかくれんぼ続けて疲弊してたから。


88:名無しの転生者

あ~、それも含めての「0.2」天使なわけか。


89:氷弓兵

続けるね?

合理爺たちには四つの班に分かれて斥候役を各個撃破してもらった。

オークを囮に引き付けて、隠れてる戦闘班で狙撃するってパターンだね。大体これで一〇体前後倒せたって聞いてる。


90:名無しの転生者

中継映像は俺らも見てたから、その辺りの流れは大体把握してるよ。

単独行動が危険だと理解した天使が集合して、それから近接戦に切り替えて地上にいたオークを急襲。

だけど地上じゃ羽が邪魔になって機動力が死んで、数の有利を活かすこともできなかった。

そこに合理爺が変装したオークが暴れ回って天使は大混乱。更に半分ぐらい討ち取ったところで撤退に移ったんだよね。


91:名無しの転生者

死者ゼロは流石に運もあったやろうけど、あれは合理爺の立ち回りがヤバかったわ。あの爺さん、ただの人斬りやなかったんやな。


92:氷弓兵

どうだろうねぇ……

本人曰く『オークも転生者あほうどもも、ここで死なすには惜しいもののふよ。どうせならば熟したところを儂の手で……』


93:名無しの転生者

>>92 待って!!?


94:氷弓兵

(無視)続けるね~?

その後、斥候役が撤退して本隊と合流したところを、俺と精鋭メンバーで奇襲をかけた。本隊はボロボロになって帰ってきた斥候役を見て混乱してて、これが上手くハマった。

敵が持ち直して反撃してきた後は、俺らは無理せず引きつけながら森の中に後退。天使は損害が広がる一方で、しばらくしたら諦めて撤退してったよ。


95:名無しの転生者

そこ! そこんところが映像見ててもよく分かんなかったんだよ。

いくら天使が混乱気味だったり、氷弓兵たちが上手く立ち回ってたんだとしても、あの時の天使って動きがおかしくなかった?

全然戦いに集中できてないように見えたんだけど……


96:氷弓兵

あ~、映像だとあの援護は分かりにくかったかもね。

その辺りの事情は、折角だしご本人に説明してもらおうかな。


97:名無しの転生者

ご本人?


98:神婆ちゃん

パムフレドだ~よぅ!!


99:名無しの転生者

ふぁっ!? まさかのおババ様降臨!?


100:名無しの転生者

えっ? えぇっ!?

転生者用の掲示板だけど──いや、ハッキングされたって話は聞いてたけど、いいの!?


101:★管理人

……掲示板のセキュリティ向上に手を貸してもらうなら、実際に使ってもらった方が効率がいいだろ。

どうせ禁止したって防げるもんじゃないんだし、今更だよ。


102:童帝

彼女に関しては聖女ちゃんと契約して行動はしっかり縛ってるから安心してもらっていいよ。


103:TS聖女ちゃん

婆ちゃん、ウェ~イ!!


104:神婆ちゃん

うぇ~い、だ~よぅ!!


105:名無しの転生者

……まあ、上の人たちが納得してるならそれでいいけど(管理人が不貞腐れてることには触れない)


106:★管理人

>>105 うっさい!!


107:名無しの転生者

それで、話を戻すけど神婆ちゃんの援護って?


108:神婆ちゃん

ああ。あの時あたしは、こいつに頼まれて子供たちと一緒に森の奥から気配を出して天使共を威圧してたんだ~よぅ。


109:名無しの転生者

気配や威圧って、魔力を漏らしたり足音を立てたりとか、そういうこと?

それだけで天使があんな風になったの?


110:名無しの転生者

……いや。

天使共からすれば楽にゴブリンを虐殺できると考えとったところに思わぬ反撃を受けて、予想外の連続やったはずや。

しかもあの時、目の前で帝国風の鎧を着た妙に腕の立つ連中(精鋭メンバー)が、森の中に誘い込むように後退しとった訳やろ? そいつらの数は少ないし、間違いなく罠やと思って目の前の戦いに集中できんかったんやないか?


111:氷弓兵

そういうことだね。

思ってたより撤退判断が遅かったから敵の損害が五割まで拡大したけど、ゴブリン相手に三割も被害だしたらもう負けと一緒だよ。俺が奇襲を仕掛けた時点で、敵の撤退は確定事項だった。


112:名無しの転生者

ほんほん。なるほどな~。

逆に殲滅しようと追い詰めとったら、戦力的にこっちに笑えん被害が出とった可能性が高いっちゅうことか。


113:名無しの転生者

……戦いの流れはよく分かった。

こっちの正体や戦力を隠した上で、狙い通り天使を撃退したってこともね。


──だけど、今の説明を聞いた上でも分かんないのは今後の教国との展開予測だよ。

精鋭メンバーが帝国風の鎧を着てたってだけで、教国の連中が帝国を警戒してノゥム領に温い攻撃を繰り返すって、ちょっと希望的観測が過ぎない?

俺らの手がかりを見失うかもとか、帝国が何か企んでるかもとか、仮にリスクが具体化しても大した問題じゃないでしょ。

教国からしたら無視してノゥム領を一気に攻め落とす方が合理的だと思うけど。


114:氷弓兵

そうだね~、それが合理的な考え方だ。

これに関しては聖女ちゃんから教国の意思決定プロセスについて説明してもらった方がいいかな。


115:名無しの転生者

意思決定プロセス?

教国って教皇に扮した大天使の独裁やろ?


116:TS聖女ちゃん

それで間違っとらんで。

ただ当然、その教皇──大天使も一人で何でもかんでも考えとるわけやなくてな。参謀的なポジションの部下がおるわけや。


117:名無しの転生者

ほ~ん。

でもその参謀って、教皇の意見を左右できるほどの影響力があるの?

精々が助言とか補助とかそのレベルじゃない?


118:TS聖女ちゃん

それなんやけどな。

あーしたい、こーしたいっちゅう大戦略については>>117の言う通り、教皇が決めて、参謀役はそれを具体的な作戦に落とし込むだけや。

でも具体的なやり方に関しては、教皇は参謀役の“人間”の意見をかなり重視する傾向がある。


119:名無しの転生者

んん? 天使の認識じゃ人間なんてただの“家畜”でしょ?

そんな連中の意見を天使のトップが重視するっておかしくない?


120:TS聖女ちゃん

逆や。家畜の考え何ぞ天使には理解できんからこそ、家畜の意見を積極的に取り入れるんや。


121:名無しの転生者

あ~、そういう……


122:名無しの転生者

……教国の意思決定に“人間”の意見が大きく影響するっていうことは理解した。

でも、そのこととあの希望的観測がどう影響するわけ?

その参謀役の人間が慎重論を唱えるとは限ら…………あ。あ~!


123:名無しの転生者

……なるほどね(分かってない)。


124:名無しの転生者

うん。そういうことか(どういうこと??)。


125:名無しの転生者

>>123、124(無視)

>>120、122 どういうことや?


126:TS聖女ちゃん

要するに、天使にとって人間はただの家畜や道具で、何か失敗したり気に喰わんことがあったら参謀役なんて言うても簡単に処分されてまうねん。


127:>>125

うんうん。それで──って、あ~!! そういう!!


128:名無しの転生者

(どういう?)


129:名無しの転生者

(俺らが特別理解力がないわけじゃないよね? 分からないのが普通だよね?)


130:名無しの転生者

>>128、129 提言にミスや漏れがあったら処分されるかもしれないから、参謀役の人間は例え可能性が低くてもあらゆる可能性を考慮した上で、徹底した慎重論を唱えるってことだろ。


131:名無しの転生者

おお! 問題が起きた時、後から“聞いてない”って上司に言われんように、無駄に資料を分厚く作るあの感じやな!?


132:名無しの転生者

実際には慎重論を唱えて“失敗しない”選択肢を選ぶこと自体が既にリスクだったりするわけだけどね~。


133:TS聖女ちゃん

まあそんな感じや。

教皇はあんまり俗世に興味がないというか、対外的な判断はまず参謀役にやらせてみようっちゅう考え方やから。

その内、痺れを切らして方針を変えるかもしれんけど、差し当たっては参謀役の慎重論が採用されると思うで。


134:氷弓兵

一応、教皇が痺れを切らす前に適当な成果をでっち上げて掴ませて、出来る限り時間を稼ぐ予定だよ。


135:童帝

今後は皆にもこのノゥム領で実戦経験を積んで、本番に向けたレベルアップを図ってもらうからそのつもりでいてね。


136:名無しの転生者

あ~、そうなるのか~……


137:名無しの転生者

まあ、ワイらもどっかで実戦を経験せんとな。

適当な相手をあてがって貰えるだけありがたいと思うことにするわ。


138:名無しの転生者

でもノゥム領が天使との戦場になるなら、ゴブリンはどうするの?

そのままそこに住み続けるのは危なくない?


139:神婆ちゃん

>>138 あたしの子供たちを心配してくれるなんていい子だねぇ!

後でご褒美をあげるんだ~よぅ!


140:名無しの転生者

おお!? >>138神婆ちゃんのご褒美とかずるいぞ!!


141:神婆ちゃん

喧嘩するんじゃないよ~。ご褒美は皆に上げるからね~。


あたしの子供たちはノームの坊やが骨を折ってくれて、オークやリザードマンの土地に移住させてもらうことになったんだ~よぅ!


142:名無しの転生者

ノームの坊や……ああ、地面師のことか。


143:地面師

ええ。ノゥム領が落ちたら次は彼らの土地ですから。

ダヌザ神族を始めとして各部族の守護神も協力的です。


144:★管理人

パムフレド──もう神婆ちゃんでいいや。

連邦内の悪魔、神族の横やりは彼女に防波堤になってもらう予定だよ。

完全にちょっかいを防ぐことは難しいだろうけど、天使の侵攻は彼らにとっても脅威だからね。

警戒は必要だろうけど、当面表立った干渉はしてこないんじゃないかな。


145:名無しの転生者

なるほどな~。

総括すると、天使との小競り合いは継続するし、他の勢力から目を付けられることも完全には防げないけど、差し当たっての時間は稼いだ。今のうちに対抗できるよう準備を整えましょう、ってとこ?


146:★管理人

そういうこと。

ここから先はいつ状況が変化して、他の勢力と本格的な戦いに突入しないとも限らない。

全員、今まで以上に気を引き締めて日々を過ごして欲しい。


147:名無しの転生者

は~い。


148:名無しの転生者

うしうし。

今回のことで幹部連中以外も戦力になることが証明されたし、ワイもやったるで~!


149:童帝

うんうん。気合が入っていてよろしい!

俺らもこれまでみたいな軽めの指導は切り上げて、密度と強度を高めていかないとね~。


150:名無しの転生者

…………は?


151:氷弓兵

だね~。

今回の実戦を受けて合理爺も『あいつらはまだまだ伸びるぞ。適当に斬ってプレッシャーをかけてやった方がいい』って言ってたし。

お試しって言うか、お客様コースの温い訓練は終わりにしよっか。


152:名無しの転生者

あれが……温い……?(絶句)


153:名無しの転生者

あ……自分、生産班志望なんで。


154:名無しの転生者

>>153 ウソを吐け! ついさっき『やったるで~!』って叫んでた奴だろお前!!


155:名無しの転生者

逃がさん! 死なば諸共だ!!!


156:名無しの転生者

いや、それよりみんなで一緒に逃げ──


157:童帝

え? 俺らから逃げれると思ってる?


158:氷弓兵

いいんじゃない?

こういう命懸けの鬼ごっこっていうのも、たまにはいい訓練になるでしょ。


159:名無しの転生者

(あ。死んだ)


160:名無しの転生者

み、みぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!?

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